『FF14』サウンドディレクター祖堅正慶氏がガンの罹患と寛解を報告。ハッシュタグやボス退治、さまざまな手段で世界のファンがメッセージを届ける


スクウェア・エニックスが5月15・16日の2日間にわたって開催していた『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FF14』)のデジタルイベント「デジタルファンフェスティバル 2021」。2日間にわたる熱狂は最後のプログラムであるオフィシャルバンド「THE PRIMALS」の生演奏で最高潮に達し、エンディングでは開発スタッフが一同に介してひとりひとりコメントを残した。そのステージ上でサウンドディレクターの祖堅正慶氏は自身がガンを患っていたことを公表し、昨年3月から10月ごろまで闘病生活を送っていたことを明らかにした。

https://youtu.be/W-ZBHbnAcTs?t=38202


祖堅氏のガンは、幸いにもほぼ寛解しているそうだ。祖堅氏は闘病期間中ずっと病室にいたが、スクウェア・エニックス社長の松田洋祐氏や『FF14』プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏が便宜を図り、病室から制作作業ができるような体制が作られたという。闘病中は抗がん剤の影響で、精神的に追い込まれていた時期もあったようだ。しかし2020年8月にパッチ5.3が公開され、ライブの演目にもあった「To the Edge」を始めとした多くの楽曲が新たに公開されると、プレイヤーからの「面白かった!」という声が非常に励みになったという。プレイヤーからの熱い感想に鼓舞されて闘病を続けた結果、祖堅氏はガンを克服することができた。治療の予後が良かったことから医師の許可も下り、この2日間はデジタルファンフェスティバルのステージに立ち、最後にバンドライブをおこなった。

祖堅氏は闘病中も変わらぬ業務量をこなし続けており、ガンを患ったことも開発スタッフの一部にしか明かしていなかったそうだ。シナリオライターの石川夏子氏は祖堅氏の闘病中、病室へ楽曲の発注に行くという辛い役割をこなしており、「発注曲数を変えるなと言われた私の気持ちにもなってくださいよ」と涙ながらにコメントした。祖堅氏は「みんなが気を遣わずに発注してくれたから、いつもどおりの日常に帰って来られた」と語り、病室にいながらもコミュニケーションを密に取って作り上げたパッチ5.3の楽曲「To the Edge」の制作風景を振り返っていた。

吉田氏は祖堅氏が闘病期間中も仕事をすることについて、「すごく迷ったんです。でも『俺、目標がないとやっていけないから、頼むから(発注曲数を)変えないでくれ』と言われて……」と、マイクを握る腕で何度も涙を拭きながらコメントした。また、コロナ禍でリアルイベントが中止となっていったことにもやりきれない気持ちが大きかったようだ。しかし、祖堅氏はガンを克服して現場に戻ってきた。吉田氏は「放送を見ているみなさんもショックを受けているだろうけれど、祖堅は戦って帰ってきたから、またみんなで一緒に次の冒険に出られると思う」と前向きな気持ちを語った。


吉田氏の挨拶をもって終了した『FF14』の「ファンフェスティバル 2021」だが、閉幕後のSNSではハッシュタグ「#FFXIVFanFest」に多くの感想コメントが寄せられた。また、祖堅氏の復帰を祝うハッシュタグとして「#WelcomeBackSoken」が生まれ、健康祈願をはじめとした多くの投稿が寄せられているようだ。

海外サーバーでは、東ラノシアのF.A.T.E.「死顔の簒奪者『キャンサー』」を討伐することで祖堅氏を応援する活動がおこなわれた。カニ型のボス「Cancer」は英語でガンを意味する単語でもあり、これを討伐することでガンも克服するという願掛けのようだ。ガンは寛解後に再発することもある病であり、二度と祖堅氏がガンに苦しまないように、という祈りが込められていると見られる。また、このF.A.T.E.を討伐すると獲得できる英語のアチーブメント名は「Full Remission」で、日本語では「完全寛解」を意味する。このアチーブメントを獲得することにも、祖堅氏の健康を願う思いが込められていると言えよう。

https://twitter.com/mrmraymundo/status/1393901494169083908


「#WelcomeBackSoken」はTwitterのトレンドにもなり、祖堅氏も自身のTwitter上でこのハッシュタグに触れた。「見てるよ!ヒカセンのみんなのお陰だよ。ほんとにありがとう。感謝はゲームで返していきます!これからもよろしくね!」とコミュニティへメッセージを送り、プレイヤーからの応援が励みになっていることを改めて表明した。


普段は明るくひょうきんな振る舞いの祖堅氏の口から語られた真剣な告白は、ガンの罹患という深刻なものであった。パッチ5.3の名曲「To The Edge」が病室で作り上げられたものであるという事実に衝撃を受けたプレイヤーも多かったことだろう。しかし、祖堅氏のガンは幸いにも寛解し、予後も良いという報告も聞くことができた。祖堅氏がこれからも健やかに、素晴らしい楽曲の数々を届けてくれることを願っている。

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