『あつまれ どうぶつの森』の「フェイスペイント」で、人間をやめたい人たちの奮闘

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『あつまれ どうぶつの森(以下、あつ森)』におけるマイデザインのなかでも、もっとも扱いが難しいのはフェイスペイントだろう。デザインが反映されるのは、額・右頬・左頬の3箇所のみ、目や鼻にかかる大胆なペイントは不可能だ。そして反映される際は、3つのエリアに合わせてデザインが引き裂かれてしまう。限られた適用範囲だけを用いて、狙ったビジュアルにするのはなかなか困難な業だ。

現状多く見られるのは、頬にワンポイントのハートマークを入れたり、あるいは額のペイントだけして「眉毛」風に見せるなどのシンプルなもの。ライブフェスで見られるような、少しはしゃいだオシャレの一環としてのフェイスペイントが主流に見られる。しかし一方で、なんとかフェイスペイントを最大限に活用できないかと試行錯誤する人々もいる。そして彼らの努力は、なぜか往々にして「人間をやめる」方向へと注力されることが多い。

 

無人島は電気人間の夢を見るか

IA/UXデザイナーのh.nobta氏によるペイント。まずはともあれ、キャプションに寄せられたストーリーを読んでいただきたい。顔面のシリコン皮膚はところどころ剥げ落ち、剥き出しの基盤が見え隠れする。お揃いでコーディネイトされたシャツ……というかボディの損傷もひどく、コアらしき部分まで露出してしまっている。この島にたどりつくまでの平坦でない道のりを思わせる姿だ。ポイントは、フェイスペイントを「肌の上に描く」ものではなく「肌の下を露出させる」という逆転の発想で使ってみせたところだろう。これにより「基盤(=ペイント)が見えていない部分」にまで想像を及ばせる余地をつくっている。ペイント可能な範囲が狭い、という弱点を逆手にとったアイデアが光る作例だ。

フェイスペイント勢の一派として存在するのが『あつ森』の世界観を対極をいく方向、すなわち近未来とサイバネの世界である。アーティストのWoundo boi氏はよりカジュアルにテクノ系ペイントを導入している。回路図を思わせるペイントをまとい、テクノウェアのようなハードなファッションを合わせることでサイバーパンク風味の出で立ちを完成させている。

 

伝統と信頼のホラーコスプレ

『どうぶつの森』が始まって以来、マイデザインで「返り血」を作るユーザーの出現はもはや恒例行事となってきた。有象無象のスプラッタ系デザインのなかでも頭ひとつ抜きん出ているのが、愛猫家ユーザー・✿ ᥒᥲ?ᥒᥲ✿氏のデザインだ。そのコンセプトはずばり「チャッキー」。いわずと知れた名作ホラー映画『チャイルド・プレイ』に登場する呪われた殺人人形である。コスプレにあたり、血痕だけでなく特徴的な傷跡と縫い目もしっかり再現。トレードマークのカラフルなオーバーオールまで完コピする徹底再現ぶりだ。深夜の記念撮影から実に楽しげな様子がうかがえる。フェイスペイントは現実でもハロウィンの仮装として用いられることが多い。したがって『あつ森』でもホラーキャラの模倣アイデアが生まれてくるのは道理といえるかもしれない。

フェイスペイントのもっとも不便なポイントといえば「口の両脇」にしか描画できないこと。この仕様のため、口元に特徴のある顔立ちを再現することはなかなか難しい……のだが、おあつらえむきの顔が存在した。Anthony Coloma氏が実現したのは『Mortal Kombat』シリーズより“Mileena”をモデルとしたペイントだ。彼女の特徴といえばふっくらした唇に、その両脇から頬にかけて大きく裂けた凶悪な口元。頬のの牙を再現すればおおむねMileenaらしくなるため、制限の多い『あつ森』フェイスペイントにおいても奇跡的にマッチしたデザインといえるだろう。『Mortal Kombat』では受難の目に遭うMileenaだが、『あつ森』時空で平和に暮らしてもらうのも悪くない。また、同様の手法で和ホラーの「口裂け女」も再現できそうだ。

 

カワイイか、閲覧注意か。じわりと増える多眼の一党

ダークな可愛らしさを求める人々に人気なのが、額や頬にも「眼」を描きこむ「多眼」系ペイントだ。人によっては「モンスターズ・インク」的なキュートさを感じられるが、別の人々にとっては言い得ぬ違和感・集合体恐怖症を引き起こす突き抜けたメイクでもある。それぞれ『あつ森』プリセットのアイをうまくコピーしながら眼を増やしているため、そのバリエーションや手のこみようは注目に値するものがある。ただし人によっては不安を引き起こしかねないショッキングなメイクでもあるので、見るときは少しだけ心の準備をしよう。刺さる人には非常に刺さる仕上がりのものばかりだ。

ケモナーのアイデア

いまだ黎明の混沌にあるフェイスペイント界だが、ここ数日でブレイクスルーが起きた。上記のツイートは、イラストレーター/漫画家であるどうくつねずみ氏の投稿だ。その内容はいたってシンプルなもの。頬を白く塗るペイントを作成し、アクセサリー「イヌのつけばな」を併用する。あとは肌を少し浅黒く設定すれば完成だ。たったこれだけのことで、主人公は完全に「イヌ」っぽい見てくれになっている。頬の白いペイントがちょうどつけばなと接合し、マズルの白い毛並みを表現しているのだ。このアイデアは4月13日時点で12万5000以上のイイネを獲得しており、多くの反響を呼んでいる。ケモノを愛する諸氏からは、すでに「シバイヌ風」や「キツネ風」など多くのバリエーションが登場している。限りない自由度を謳う『どうぶつの森』シリーズにあって唯一できなかったこと、それは「自分がどうぶつになって」生活することだった。このアイデアは水面下に存在する「人間やめたい勢」の期待に大きく応えるものといえそうだ。

本作のフェイスペイントの仕様はやや使い勝手が悪い代物かもしれない。しかし、ときに不自由は新たな創造性を生み出すものだ。今後もペイントを使ったオシャレな、ときに尖ったアイデアが生まれることを期待しよう。

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