2DアクションADV『Axiom Verge』のパブリッシャー、障害を抱えて生きる開発者の息子のために収益の75パーセントを寄付


BadLand Gamesは11月21日、Thomas Happ Gamesが手がけた『Axiom Verge』のパッケージ版(ニンテンドースイッチ/PS4/Vita)を海外で発売した。本作は、研究者である主人公が実験中の事故により謎の異世界に転送され、奇妙なモンスターが巣食うダンジョンを探索する2Dアクションアドベンチャーゲームだ。有機的な物質と無機質な機械を組み合わせたような独特の世界観や、メトロイドヴァニアスタイルのゲームプレイが高く評価された。ダウンロード版としては2015年からSteamやコンソールでリリースされており、国内向けにも日本語版が発売中だ。

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本作はThomas Happ Gamesの設立者Thomas Happ氏が個人で開発したゲームで、今回のパッケージ版の発売にあたってはBadLand Gamesの協力がありながらも、レーティングの取得や、ソニーや任天堂からの認証の再取得、製造スケジュールの管理などさまざまな苦労があったそうだ。Happ氏は公式サイトにて、ようやく手元に届いたパッケージ版を手に、発売を迎えることができた喜びを語っている。そして同時に、BadLand Gamesに感謝の言葉を述べている。ただし、それはパブリッシャーとして本作の発売に尽力してくれたからだけではない。

Happ氏ら家族と共に笑顔を見せるAlastair君 Image Credit: Thomas Happ Games

Happ氏にはAlastair君という幼い息子がいる。彼は健康な身体で産まれたのだが、新生児黄疸の症状が出ていた。通常は数週間で治まるものだが、医師が処置を誤り核黄疸へと症状が悪化。結果、神経系に障害を負ってしまったそうだ。Alastair君は感情を表現することはできるが、身体は自由に動かせず耳も聴こえ難いという症状を抱えながら、家族とともに日々を暮らしている。

こうした事情を知ったBadLand Gamesは、今回発売した『Axiom Verge』のパッケージ版の収益のうち同社の取り分の75パーセントを特別基金とし、これからもかかり続けるAlastair君の医療費などのためにHapp氏ら家族に寄付すると申し出たという。BadLand Gamesは、このことが本作のマーケティング目的だと受け止められることを避けるために公にすることは望んでいなかったそうだが(今回公表されたことについても同社は無言を貫いている)、Happ氏はAlastair君の症状についてこれまでにもSNSなどで言及しており、ただただ感謝の気持ちを表したいとして自ら公表することを決断したという。

寄付文化が根付いている欧米では、ゲーム業界においてもさまざまな形で寄付がおこなわれている。たとえば、Ninja Theoryは『Hellblade: Senua’s Sacrifice』の売り上げから精神障害患者を支援する慈善団体に寄付をおこなった、また、Monolith Productionsは『シャドウ・オブ・ウォー』のDLCの売り上げの一部を、急逝したエグゼクティブ・プロデューサーの家族に寄付するとしている。またHumble Bundleでのゲーム販売や、Extra LifeやChild’s Playといったゲームプレイを通じて寄付を呼びかける運動なども盛んである。BadLand Gamesが寄付を申し出たのも、こうした文化にあることから自然に出た行動なのだろう。

*日本で製造され送られてきたニンテンドースイッチ版をパッケージングする様子という、普段なかなか見られない映像も公開された