インディゲームの最新情報をピックアップしお届けする週間インディーニュース[Indie of the Week]。第34回目の連載となる2014年6月第1週(6月2日から6月8日)。E3 2014の開催が近づきインディーゲームでも多数の発表や続報が続いている裏で、Steam早期アクセスのFAQ更新やKickstarterの規約変更など一見地味ながらも気になるニュースが続きました。
未完成のゲームを販売しユーザーからフィードバックを得つつ開発を進めていくビジネスモデルSteam早期アクセス。とくに開発体制の整わないインディーデベロッパーにとっては、ゲームを完成させる前から資金やユーザーからの意見を獲得できる便利なモデルですが、未完成ゆえにロードマップ通り開発が進まないというリスクがつきまといます。そんななかValveはSteam早期アクセスの公式FAQへ「ゲームを完成させられないチームもあるということをご承知おきください」との新たな1文を掲載ました。6月第1週、主要な海外メディアのほとんどがこのたった1文が追記されたニュースをとりあげたため、あらためて早期アクセスが内包する危うさがゲーマーへ伝えられたかたちとなりました。
またSteam早期アクセスとならんで大きな流行を見せているクラウドファンディングの主要サイトKickstarterでは、現地時間の6月4日に新機能や利用規約の変更が発表されました。新機能「Launch Now」では、従来のローンチでおこなわれてきたKickstarter側のコミュニティマネージャーとの連携を取りはらい、デベロッパー側がより簡単にプロジェクトを始動できるようになりました。「Launch Now」を利用したプロジェクトの承認は数千のデータポイントを入力されたアルゴリズムにより判断され、プロジェクトの描写やリワードおよび目標ゴール、過去のプロジェクトの実績などが参考となります。
くわえてKickstarterは今回立ちあげ可能なプロジェクトの基本ルールを簡素化したうえで対象品目を解禁しており、同プラットフォームがプロジェクトの規制を緩和する方針へ舵を取っているのは間違いありません。デベロッパーによるクラウドファンディングのローンチが容易となり、今後は今以上にプロジェクトが増加する可能性が高いなか、Pledgeするサポーターたちにはさらに思慮と審美眼が要求されます。
殺人パンダから逃げ回る、『ライトサイクル』なマルチ対戦
タイトル: 『BEARZERKERS』
ジャンル: マルチプレイヤーアリーナ
開発: Wildgrass
発売: 2014年11月
2013年「敵の敵は味方」をテーマとした地元のゲームジャムにて生まれたという『BEARZERKERS』は、ローカルプレイタイプの対戦型マルチプレイヤーアリーナゲーム。基本ルールはプレイヤーが家畜を操作し追いかけてくる殺人パンダから逃げ回るというもので、最後まで生き残ったプレイヤーが勝者となります。同作最大の特徴はSF映画『Tron』に出てきた対戦バイクアーケード『ライトサイクル』のようなメカニックで、プレイヤーは自身が移動した軌跡上に一時的な岩の壁を作りだし、一緒に逃げまわる相手プレイヤーの逃げ道をふさぐことができます能。開発のWildgrassはシンプルながらも奥が深い戦略性を有する、クラシカルでスピーディーな対戦型アーケードを目指しているようです。現在Steam Greenlightにも登録されているほか、Kickstarterでは8000ドルの獲得を目標としています。またプロトタイプ版の配信も実施されていますが、こちらも2人から4人はいないとまともに遊べない仕様で、家で一緒にあぐらをかきながら遊んでくれる友人たちが必須です。
ニューヨークの治安を救う危機管理局SLG
タイトル: 『EmergeNYC』
ジャンル: RTS&シミュレーション
開発: Rafael Fernandez
発売: 未定
Deep Silverが販売しているレスキューシミュレーションゲーム『Emergency』シリーズや『Grand Theft Auto 4』の警察官Mod「LCPD: First Response」などで登場し一部で知られる危機管理局( Emergency Services)をテーマとしたシミュレーションゲーム『EmergeNYC』がSteam GreenlightやKickstarterに登場しました。開発者Rafael Fernandez氏が手がけるUnity製の作品で、現在1万ドルの獲得を目指すクラウドファンディングが進行中。ニューヨーク市内の消防および救急機関や警察を操作して街の安全を守るシミュレーションである同作は、RTS操作から1人称視点および3人称視点へ移行することができ、見下ろし視点から緊急車両を直接操作するモードへ移行して狭い路地をすり抜けたり、放水やはしごの制御したりできます。ゲームは最大8人から10人のマルチプレイヤーモードにも対応する予定。広大なニューヨークのマップ上で火災の消火や患者の緊急医療および容疑者の追跡プレイが楽しめるという、やや壮大すぎるゲームデザインが開発者らの手中に収まるのかは気になるものの、そのポテンシャルには心ひかれるものがあります。
『Gunpoint』開発者がおくるグラップリングアクション
タイトル: 『Floating Point』
ジャンル: グラップリングアクション
開発: Suspicious Developments
発売: Steam(無料)
スナック菓子のようなボリュームながらも3つ星レストランのデザートのような高い評価を獲得したノワールスパイアクション『Gunpoint』の開発Suspicious Developmentsが、Steamにてグラップリングアクション『Floating Point』をリリースしました。シンプルなボックス型のオブジェクトと美しい曲線だけで構成されたビジュアルがクールな本作は、『バイオニックコマンドー』的なグラップリングアクションで赤いモニュメントを集めて規定スコアへの到達を目指すという内容。赤いモニュメントはプレイヤーがオブジェクトにぶつからず高速で移動すると上方向へ伸びる性質があり、それを引きおこすことで獲得スコアが増加します。また画面下半分を占める赤い水面下では重力方向が逆になるといった仕掛けも用意されています。無料ゲームながらミニマルなビジュアルとBGM、そしてシンプルな爽快感、すべてがあいまりついついプレイしつづけてしまうタイトルです。
今週のオススメは禅なプレイ体験を味わえる『Floating Point』
開発者Tom Francis氏は無料配信の理由について、「前作『Gunpoint』を購入してくれたファンに向け感謝の印としてなにかあたらしいものを作ると約束していただろう」と、おそらく誰もが社交辞令と考え忘れていたであろう約1年前の約束をふりかえっています。2か月前に実施されたゲームジャム「Ludum Dare」にて誕生した同作は有料タイトルとして発売することもできたものの、Francis氏は「きみたちは私を完全なインディペンデントにしてくれたんだ」と感謝の意をあらためて伝えています。
ゲームのメカニックはシンプルながらも、オブジェクトにぶつからず一気に加速する快感が気持ちいい『Floating Point』。自動生成のステージを延々とスイングしながら進んでいくゲームで、ミニマルなビジュアルもあいまって禅な気分でリラックスして延々とプレイできます。小粒ながらも良質な本作は、From & ShapeによるトラックAscendもマッチしています。