ファーストインプレッション『巫剣神威控』 – コンパクトなレベルデザインに密なゲーム


[PLAYISM よりゲームソフトの提供を受けています]

PLAYISM で配信中のインディーゲームのインプレッションをお届けします。毎週火曜更新予定。

第1弾は3Dアクションゲーム『巫剣神威控』。読みは”みつるぎかむいひかえ”。公式には「ジャンル: ハイスピード剣豪アクション」です。開発元 ZENITH BLUE  に所属するのは3名。本作は同チームの処女作にあたります。Steam Greenlight にも登録済み。内容は日本語版と同一で、言語に English/Japanese とありますがプレイヤーが自由に切り替えられるかどうかは調整中とのことです。

  • プレイ時間: 約4時間
  • プレイ状況: 難度NORMALクリア、難度HARD 1面クリア

 

 

 

公式いわく”「女子高生と日本刀」という組み合わせでコアなバトルアクションを 遊びたいという、その一点の願望から生まれた作品です“とのこと。なんと申しあげればよいのか、直球です。ただし、このフレーズはじつに的確です。

開発勢の願望がかいま見えるストーリーについては、「魔剣」なる妖刀を持ち出した同門を追うという比較的オーソドックスなもの。主人公もライバルも セーラー服を着ているのが特徴です(ただし女子高生かどうかはゲーム中言及なし)。ラスボス撃破までとくに抑揚のない展開ではありますが、ときおりはさま れるムービーシーンでのやりとりはゲーム内容とあわせて充分に熱さを感じさせてくれます。少数精鋭での開発タイトルとしては比較的めずらしいハイレベルな 3Dモデリングのキャラクターたちも良いスパイスです。

 

金髪チンピラ人相でセーラー服に日本刀。
金髪チンピラ人相でセーラー服に日本刀。

 

操作はゲームパッドの使用を前提としており、公式のガイドでも Xbox 360 コントローラで説明がなされています。ボタンをほぼすべて使わせる、操作の忙しい系統の味付けです。攻撃は、”格闘攻撃”と”斬撃”を中心に、溜め技の” 奥義”、”奥義”の溜めをゲージと引き換えにカットするほか強力な技を出すのに使用する”解放”ダメージ状態の敵を一網打尽にできる”斬心”(いわゆる納 刀モーション)があります。これにガードとレバー入力による回避行動、そしてキャラ・カメラ移動といったところ。

本作のレベルデザインは大胆に削ぎ落とされており、まずマップの概念がありません。主人公”壬佐”と、彼女に襲い来る敵たちは終始円状のリングの上 で闘うことになります。壁際のコンボやリングアウトは無し。Horde 形式が採用されており複数のウェーブをしのげばボス登場、イベントののちボス戦です。

『巫剣神威控』は、徹底的にアクションゲームとしてのコアに注力しています。この手のゲームとしては『デビルメイクライ』シリーズや、最近では『メ タルギアライジングリベンジェンス』などが思い浮かぶところですが、本作のアクションパートはそれら AAA タイトルと比較するに値する内容です。

 

ゲーマーにとっては見慣れた光景。
ゲーマーにとっては見慣れた光景。

 

攻撃やコンボに心地よい大雑把さがあります。入力はそれほどシビアではありません。強力な技にも複雑なコマンドは求められません。おそらくは、フレーム単位での入力を要求することよりも、シンプルな操作体系で実現できる爽快感と難しさを追求したものと思われます。

アクションゲームとしての起点となっているのは、攻撃の連続性です。より具体的に言うと、”格闘攻撃”は”斬撃”でキャンセルでき、その逆も同じ。 たとえば、敵に突っ込んでいく斬撃(レバー入れ攻撃、『DMC』でいうところのスティンガー)は、そのまま斬撃ボタンを連打していては少しの静止状態が生 まれてしまいます。しかし、この硬直時間に”格闘”を入力することで流れるように攻撃を続けることができるのです。また、要所で使う”斬心”も、棒立ち状 態からではなくあえて攻撃中の、いわば抜刀状態であればよりスムースに発生させられるという徹底ぶり。

本作は『無双』シリーズほどではありませんが、ザコ戦ではプレイヤーは(一部の強力な個体に相対したときを除き)常時攻撃サイドに立つことになる、 ガン攻めシステムなのです。その攻めを定義しているのが交互に押される攻撃ボタンであり、”斬心”は単調さを打ち消しつつ納刀動作の魅力を前面に打ち出す 存在というポジションを与えられています。また、範囲攻撃である”奥義”は、数の暴力的シチュエーションにも対処可能で、やはりプレイヤーのオフェンスを 維持させてくれるのです。

 

細かいことはいいから攻撃だ!
細かいことはいいから攻撃だ!

 

他方、ボス戦は「いかにもなアクションゲーム」の面白さにフォーカスしています。軽く削っては攻撃を回避/ガードして、大技を叩きこむ。はなはだオーソドックスではありますが、重要なのは精妙な難度調整にあります。それを支えるのが回避とガードです。

同系統のアクションゲームでは、回避行動へのペナルティがそれほど大きくない作りが主流でしょう。一方の『巫剣神威控』は少々異なります。まず第一 に回避モーションの硬直が長めに設定されていること。連打していると狙い済ましたかのような攻撃が飛んでくるのです。第二に、回避の無敵時間が絶妙に短い こと。ほとんどのボスの攻撃には誘導性能があるため、連打ではなくあくまでも「確実に引きつけてから避ける」という、文字にしてしまえば当たり前ですが存 外採用されていない性質へと仕上げられているのです。

また、ガードや回避にも向きの概念が重視されており、「適当な方向への回避」を許さないボスが数体用意されています。けっしてボス敵の攻撃パターンは豊富とはいえませんが、それでも適度な緊張感を保ちつつ、理不尽さへはけっして足を突っ込まない、ほどよいバランス感です。

つまり、本作のボス戦はほぼ常時ジャストガード・ジャスト回避を狙いつつ、ガードできる攻撃はガードするという、やや異質な味わいなのです。それを ベースに、初見ではまずクリアできない程度のメリハリをもたせ、コンティニューはスムースに、チェックポイントは(ぬるくなりすぎない程度に)適切に。ア クションゲームとしての骨格がきちんとしています。

 

称号システム。ようするにコンボ。 一撃でも被弾したら容赦なくリセット。 背筋が凍ります。
称号システム。ようするにコンボ。

一撃でも被弾したら容赦なくリセット。

背筋が凍ります。

 

アクションゲームとして切り出せば非常に秀逸な『巫剣神威控』ですが、あえてそこに注文をつけるとすれば2点。まず、ザコ戦のウェーブがやや単調で あること。敵のバリエーションはそれなりに用意されていますが、それでも”攻め”が基幹に据え置かれている以上、結局のところ「マトの硬さとデカさ」くら いの区別にしかなっていません。敵によって多少の移動と回避は求められるものの、基本的にずっと高ダメージな攻撃を振り続けることが求められるため、尺に やや難があるのではないかと感じました。あるいは、本作の方向性とは若干矛盾しますが、ザコ戦自体をもう少しシビアにするという方針もありえたかもしれま せん。

また、アクションについての説明がやや不親切です。筆者のようにある程度ゲームに慣れている者ならばいざしらず、アクションゲームのお約束に馴染み のない層は「ボタンを交互に押して流れるように攻撃!納刀!」のカタルシスへ到達できないのではないでしょうか。説明過多なチュートリアルが無いのはすば らしいことですが、より多くのゲーマーへ楽しさを伝えられるよう、わずかでも導線があればより馴染みやすかったでしょう。

 


プレゼントのおしらせ(終了)

思わず最後に注文をつけてしまうくらいに/久々にアクションゲームで右手が痛くなるくらいにプレイしてしまった『巫剣神威控』。最後に、読者の皆さまへプレゼントです。

本記事に言及する Tweet をしてくださった方のなかから1名様へ本作の PLAYISM 用コードをさしあげます。@GamersGeoJP (注: 本アカウントは@AUTOMATONJapanへ変更されています)をフォローしていただいた上で、ご応募の旨と弊誌 URL を明記しつぶやいてください。「もう持っているけど布教用にもう1つ欲しい」「よくわからんけどアクションが好きだ」「とにかく女子高生がポン刀振り回してればそれで満足だ」等、一番いいツイートをしてくださった方にお渡しします。締め切りは11月24日です。当選者の発表はコードの配信をもって代えさせていただきます。