『ヴァンパイア:ザ・マスカレード スワンソング』紹介。ヴァンパイアとなって事件を捜査し、たくみに交渉や説得をしながら陰謀を暴け

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オープンシナリオ・アドベンチャーゲーム『ヴァンパイア:ザ・マスカレード スワンソング』の日本語版が、DMM GAMESより8月18日にリリースされる。対応プラットフォームはPlayStation 4/PlayStation 5/Xbox One/Xbox Series X|Sだ。価格は7920円(税込)。

『ヴァンパイア:ザ・マスカレード スワンソング』は、100年以上を生きる3人のヴァンパイアを操作し、ヴァンパイア組織“ボストン カマリリャ”のメンバーとして現実世界で暗躍する作品だ。本作は『ヴァンパイア:ザ・マスカレード』という人気テーブルトークRPGを基にした作品だ。といっても、原作をまったく知らなくても楽しめるようにできているため、そこは安心していただきたい。本稿では、レビュー用に提供された『ヴァンパイア:ザ・マスカレード スワンソング』をプレイし、PlayStation 5版のゲームプレイで分かったことをお届けする。


本作のストーリーは、ヴァンパイアたちが集うパーティーが何者かによって襲撃されたという、衝撃のニュースによって幕を開ける。プレイヤーは3人のキャラクターを交代で操作しながら、襲撃事件が誰によって、そしてなぜ起こされたのかを探っていくことになる。3Dで表現された空間を探索。謎を解くためには、パーティー会場やヴァンパイアたちのアジトを捜査し、証拠となりそうなものを集めたり、関係者に話を聞いたりすることが重要だ。疑わしい人物は、主人公たちと同じ組織の中にもいる。怪しまれないよう上手く会話の選択肢をとりながら、この事件に隠された陰謀を暴いていこう。

主人公となる3人のキャラクターはそれぞれ、気が強く行動力もあるエメム、幼い娘をもつ母であるレイシャ、ヴァンパイアの中でも年長者で達観したところのあるガレブと、個性は申し分ない。同じ出来事でも、三者それぞれの視点から眺めることで受ける印象は変わってくる。多角的に見ることで、物語をより濃密に楽しむことができるのだ。

選択がストーリーを左右する

『ヴァンパイア:ザ・マスカレード スワンソング』は、プレイヤーの行動や選択によってストーリーが大きく変化する、オープンシナリオタイプのアドベンチャーゲームだ。


具体的にはどのような行動や選択を迫られるのか。探索や調査を進めていくと会話シーンが発生。多くの場合、選択肢はほかのキャラクターとの会話中に現れる。相手に対して、どのような受け答えをするかを問うかたちでプレイヤーの選択を迫ってくるのである。自分に有利なように交渉を進める、あるいは損得なしで味方を説得するなど、場面によって出せる答えはさまざまだ。プレイヤーそれぞれの考えによっても、結論は変わってくるだろう。

冒頭で紹介したとおり、プレイヤーはヴァンパイアとして“ボストン カマリリャ”という組織の一員となるのだが、この組織はけっして一枚岩ではない。陰謀や野心が渦巻き、主人公たちもその中に巻き込まれていく。同じグループの同じヴァンパイアといえども、心から信頼できるものはいないか、いたとしてもごくわずかだ。だからこそ、相手への受け答えの重要性も上がってくるのである。組織内でどのように振る舞うかが、自身の運命を決定するといっても過言ではないのだから。

時には、自分の望む選択肢をとるために、“巧言”や“説得”といった会話を有利に運ぶためのスキルが必要とされることもある。これはストーリーを進行することで得られる経験値を使い、取得できる。しかし、そのスキルを取得していたからといって、必ずしもその選択肢を選べるかというと、そうではない。ここがこのゲームの個性的で面白いポイントのため、詳しく説明したい。

たとえば、相手に対してある返答をするために、要求されたスキルレベルが2だったとする。おりしも自分のスキルレベルも2で、「これはちょうどよかった」と安心したかもしれない。しかし、一筋縄ではいかないのがこのゲーム。実はこの“要求されたスキルレベル”とは、相手キャラクターと渡りあえる最低限のスキルレベルのことなのである。つまり、自分がレベル2に対して相手も2。ここでやっと引き分けの状態なのだ。このままその返答をしようとするとどうなるか。引き分けの場合はサイコロが振られ、確率によって成功か失敗かが決められる。失敗の場合、会話は進むが、思った効果は得られない。


では、確実にその選択肢をとりたいときには、どうするか。このレベルは、実は一時的に上乗せすることができるのだ。これが集中というシステム。集中を使用すると、レベルを上乗せするかわりに消費コストが大きく増えてしまう。これを使ってスキルレベルを上乗せし、自分が3で相手が2の状態に持ち込めば「よし、これで勝ったぞ」と思ったかもしれない。ところがどっこい、この集中システムは自分だけでなく相手も使えるのである。場合によっては再び横並びの状態となり、結局サイコロで負けてしまった……ということもありうる。唯一の救いは、相手が上乗せできるのは現在のレベルの+1レベルまで、ということだ。

つまりこのゲームでは、返答を選ぶ前からすでに相手との駆け引きがはじまっているのである。集中システムで使えるコストにも限りがあり、常に自分のほうが有利にことを運べるとは限らない。場合によっては、引き分けの状態で勝負に出なければならないときもあるだろう。スキルが足りず、悔しい思いをすることもあるかもしれない。

まさに相手との緊迫したやり取り、ヒリヒリするような心理的な駆け引きを上手くシステムに落とし込んだ、面白い作りだと筆者は感じた。ただ機械的に選択肢をとるのではなく、“選ぶこと”それ自体にバトルのような楽しさを生み出している。また、「次こそは相手より有利に会話を進めてやろう」という気持ちをかき立てられて、周回プレイへの意欲もグンと上がった。

現代に生きるヴァンパイアも楽じゃない?


本作の物語は、ヴァンパイアたちの組織“ボストン カマリリャ”に“コード・レッド”が発令されたところからはじまる。コード・レッドとは、組織の者たちに危険をしらせる警戒信号のことである。発令されると、リスク回避のためインターネットへのアクセスが禁止され、スマートフォンを取り上げられる。さらに危険が大きいと判断されれば、構成員たちはヴァンパイアに関する情報を含むアーカイブや書類をすべて処分し、遠くへ身を隠さなければならない……。これらはゲームの冒頭で説明されることなのだが、現代に生きるヴァンパイアならではの、情報管理能力の高さを表現しておりユニークな設定となっている。

どうしても筆者の中では、ヴァンパイアといえば古風なイメージを拭い去れないところがあったのだ。なんとなく耽美で、退廃的で……といったおとぎ話の中のヴァンパイアのイメージから、本作のキャラクターたちは良い意味で逸脱している。現代の世界に順応し、したたかに生きるヴァンパイアたちの姿を見ていると、だんだんと親近感が湧いてくる。これは、先述した「インターネットを禁止され、スマフォを取り上げられた!」と憤る主人公の姿を見て、非常に共感したせいもあるかもしれない。遠い世界の住人から、もっと身近な存在として彼らを感じられるようになったのである。

もちろん、太陽が苦手だったり、定期的に吸血をしなければ渇きをいやせなかったり、心臓に杭を刺されると動けなくなってしまったりと、古風なヴァンパイアのイメージどおりの部分もある。しかしその一方で、吸血をしすぎて人間を死なせてしまうと仲間からの評判が下がるなど、節度をもって暮らしていることも分かる。とにかく「人間に自分たちの存在を気づかれること」を厳しく禁じている“マスカレード”という掟を守りながら、彼らは隠れて生きているのだ。

そうした現実に即した描写が「もしかしたら気が付かないだけで、彼らは現実にいるかもしれない」とプレイヤーに思わせてくれる。そして「もしヴァンパイアが実在したら、こうなるだろう」という可能性をさまざまに見せてくれるのが、このゲームの魅力なのである。たとえば「真夜中にしょっちゅう来客があるせいで、隣人に不審がられているヴァンパイア」とか。これはもちろん、そこの住人も客人も太陽が苦手なせいなのだが、隣人である普通の人間は知らないということである。ちょっとクスっとくるような、筆者も気に入っているエピソードだ。

さまざまな陰謀や権力争いを繰り広げながらも、一方でどこか親しみやおかしさを感じるヴァンパイアたち。彼らの物語の行く末がどうなるかは、プレイヤーの選択次第だ。

『ヴァンパイア:ザ・マスカレード スワンソング』日本語版はPlayStation 4/PlayStation 5/Xbox One/Xbox Series X|S向けに、8月18日発売予定だ。

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