ポーラと気持ち悪いライバルと当時の流行 – MOTHER2 at 30 その5

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おそらく彼の辞書には「F」から始まる言葉しか載っていないのだろう。さまざまなことに怒りながら、『MOTHER2』を遊ぶグラハム・アーサー。子供の無邪気な妨害にも負けず、今日もまた「MOTHER2 at 30」の企画を進行する。

 

MOTHER2 at 30 その5

さて、ゲームがやっと面白くなってきたところ(パーティーにメンバーを加えるとより楽しくなるよ!ウソだけどね!)で、各メンバーの役割をしっかり考えないといけない。『MOTHER2』を知らないという読者がいればここで多少混乱してしまうかもしれないけど、まあ、とにかくゆっくりしていってね。

まずは、メインキャラクターの4人(ゲームを進めていくと一人ずつ出会っていく)主人公のネス、ポーラ、ジェフ、そしてプー。名前は何でも好きなものに変更することはできるが、私はだいたいオリジナルで行く派。(個人的にはいつもキャラクター名をそのままで、能力、食べ物、そして犬の名前を変えることにしている。3つとも「Taco」にして最後まで遊んだこともあるが、この話は別にどうでもいい。)

ネスは典型的な「スタンダード・ヒーロー」的な存在である。一番いい武器、一番いい魔法、そして一番いい装備品を持っていて、もしほかのキャラクターがストーリー上で必要という設定でなければ、きっとネス単体で最後までいける。プーも似たような感じなのだが、「武器」、「ボディ」、「腕」、「その他」の各スロットに入るものはひとつずつしかない(「ボディ」だけは3つもあるが、ほぼ無意味)し、各アイテムを探すのに物凄く時間と手間がかかってしまう(アイテムによっては何時間も同じ敵を何度も何度も倒さなければいけない)。ジェフとはSci-Fi的なキャラクターでまあまあいいやつだ。魔法は使えないが、そのかわり結構いい爆弾や銃などを作ってくれるし、回復アイテムを多く持っていてくれるから許せる。はっきり言うと、戦闘になるとジェフはほぼ使えないやつなのだが、ストーリーを進めてくれるのが大きい。

左からネス、ポーラ、ジェフ、プー
左からネス、ポーラ、ジェフ、プー

ポーラはね……ポーラはガラスの大砲みたいなやつ。まあ、今のはちょっと言い過ぎたかも知れない。ストーリー的にはものすごく重要なキャラクターだし、後からすごく強くなってくるのだが、それまではちょっとね。みずから回復することもできないし、レベル20に到達するまではほとんど死んですごしている。属性ダメージに関しては最初からかなりいい感じなのだが、初めてパーティーに入る段階ではレベル1だし他にネスしかいない。他のふたりはポーラと違って、初めてパーティーに参加する時に敵から喰らわされるダメージをちゃんと吸収する(つまり、「弱い新人をすぐに死なせない」)余裕があるが、ポーラは別物だ。しかし、ポーラと合流してすぐに踏み入る「リリパットステップ」の洞窟では、ムツゴロウさんでも嫉妬するぐらい熊やモグラ、コウモリなどがポーラに無性に寄ってきてしまう。

死んでしまってエンジェル姿になったポーラがついてくる時間が多過ぎて、「なんらかの悪霊にでも取り憑かれてんじゃねーの?!」と、本気でちょっと心配になってきた。4回も「きょだいモグラ」との戦いに挑み、4回ともポーラをなんとか最後まで死なせないように頑張ってみたのだが、4回とも「ポーラ死す」だった。ポーラは最初の頃は全く使えないやつで、まったくもってお荷物なんだけど、後から強くなるのを待つしかないという現実を受け止めて、「とりあえずパパに任せろ」としか言えなくなった。フーターズに入店する時と一緒。

いったんグレートフルデッドのたにへと戻ってツーソンに再び入り、ポーラのお母さんからバンソウコウをもらい、お父さんには「もう泣かない」という意味不明な約束をしてもらう。そして新しいぬいぐるみももらったが、今回のやつはポーラの独房に一緒にいたやつとは違うよね……?あれは絶対にいろいろなものを見てきて、おかしくなっているはずだから怖い。というのはどうでもよくて、ここで「トンズラブラザーズ」というブルーズ・ブラザースのパクリバンドの演奏が聴けるから、気分がちょっと上がってくる。

トンズラブラザーズがいるだけでこのゲームは素晴らしいと思う。何回か命を救ってもらううえに、頭の中からなかなか離れない楽曲をすごくキャッチーな演奏で楽しませてくれるし、そして何よりも自分のガキの気をひいてくれるから大好き。うちの娘は、先ほどのグレートフルデッドのたにの旅の途中でつまらなくなったようで、機嫌が少し悪くなってしまった。だから家中にいろんな悪さをさせないために「めっちゃ面白いのが出てくるから見てて!」と約束しなければならなかったので、トンズラブラザーズが現れるタイミングはちょうど良かった。

前: ジェイクとエルウッド 後: 鈴木雅之、佐藤善雄、久保木博之、田代ま…あ、じゃなくて桑野信義
前: ジェイクとエルウッド
後: 鈴木雅之、佐藤善雄、久保木博之、田代……じゃなくて桑野信義

ゲームの全体的なユーモア、音楽、そしてRPGとしての素晴らしさを考えると、『MOTHER2』はもっと成功するはずだったと思う。プロモーション時、ニンテンドーはなぜ「気持ち悪さ」をウリにしようと決めたのかが未だに解らない。プレーヤーガイドにこすると香りが出るというカードが付いてたが、どれも悪臭を放つようなひどいものだった。

「ゲップー」などゲームの気持ち悪いところばかり前に出して宣伝しようとしていたが、その「気持ち悪いところ」は確かに大事な一面なのだけど、あくまでもゲームの一部なので、広告しか見たことのない人なら勘違いしたはずだ。まあ、『MOTHER2』と発売日が近かった『Boogerman』は“はなくそマン”だし、『Earthworm Jim』の主人公なんて二足歩行のミミズだし、「気持ち悪い」ライバルが多かったことを考えると納得できるようなできないような。

よく考えてみれば、当時のアメリカで流行していたおもちゃやフィギュアなどは、ほぼどれも「気持ち悪い」系のアクセサリーセットも販売されていた……「Gooey Louie」、「He-Man」、「忍者タートルズ」、「The Toxic Crusaders」など、90年代のアクションフィギュアは結構気持ち悪かった。今となっては2歳児の子と一緒に『MOTHER2』をやっているのだが、この子はとにかくパパのいうことを一番都合の悪い時にリピートするクセがついてしまっている。嫌がる親もいるだろうけど、「おなら」という言葉ぐらい発されても特に困ったことがないし、もう少し気を配っておいた方がいいかもしれないけどまあ……今のところ家は燃えたりしていないし、大丈夫だろう。

『MOTHER2』を開始してもう3週間ほど経つ。その間に、「おとのいし」8個中2個を発見、キャラクター4人中2人を確保、「ポーキー・ミンチ」との出会い……数回中1回は済ましている。進むペースは遅いけど、家族全員はまだ健全だし、子供を施設に預けるよう命じられたことはまだないので、いい調子だといえる。小さな勝利は祝うべきという名言があったようななかったような気がするので、今夜はケーキとラム酒でひとりでわいわいしよう。次は「スリーク」へ。ジェフを使ってゴヂラのバットが手に入るまでどれぐらい時間がかかるか計ってみようと思う。それかバットを諦めてストーリーを進めようとなるまでの時間か。とりあえず面倒くさくないほうで行こう。

 

[翻訳 James R. Mountain]

[校正 AUTOMATON編集部]

MOTHER2 at 30」は、グローバル版AUTOMATONに掲載された「EarthBound at 30」を和訳したものです。雰囲気が伝わるよう、一部の過激な言葉はあえて原文に近いものにしてあります。

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