ゲームの「背中からの抜刀モーション」が現実では難しいとの報告に、3Dアニメーターが“ごまかしてごめん”とタネを明かす。『スマブラ』桜井Dも工夫を紹介

ゲームなどにおける剣の抜刀/納刀時のアニメーションについて、背中の鞘に納められた剣では表現が“ごまかされる”こともあるという。

ゲームにおいて、「剣」が武器となることは珍しくない。とはいえ、特に戦闘だけでなく探索要素もあるゲームでは常に剣を抜いた状態でいるわけではなく、非戦闘時には剣を鞘にしまうアニメーションが用意されることもある。逆に戦闘になった瞬間には抜刀したりもするだろう。この抜刀/納刀時のアニメーションについて、「鞘」に納められた剣では“ごまかされる”こともあるという。

そんな鞘から剣を抜くアニメーションをごまかしてきたと“懺悔”をしたのはアニメーターのDillon Gu氏だ。同氏はRooster Teethに在籍し、Webアニメ「RWBY」シリーズの「RWBY Volume3」のアニメーション制作に携わったことで知られている。その後2020年に独立しDillonGoo Studiosを設立。数々の3Dアニメーションを手がけている。


Dillon氏が今回告白をすることになった発端は、国内のコスプレイヤー、サキガケ氏による投稿だ。サキガケ氏は11月11日に『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下、ブレス オブ ザ ワイルド)のリンクのコスプレ写真を投稿。加えてメイキング映像のような投稿もおこなわれている。投稿内の動画では、サキガケ氏は背中の鞘からマスターソードを抜こうとしたものの、剣の先が引っかかってしまって抜けない。腕を限界まで伸ばして引き抜こうとしても、そもそもの剣の長さによって抜刀ができないようだ。

この投稿に対し、Dillon氏が引用するかたちで反応。アニメーターとして、何年も(3Dアニメーションにおける抜刀を)ごまかしてきた(we’ve been cheating)とし、誤解を招いてしまったことをお詫びする(I apologize for misleading)と伝えている。

それでは実際にどう“ごまかして”いたのか。Dillon氏は続く投稿にて種明かしをしている。GIFアニメでは剣を鞘から抜く際に、剣先が鞘を貫通してすり抜けている様子がうかがえる。先述したサキガケ氏の動画のように、背負ったままの鞘から剣を抜けない場合に、こうした“ごまかし”が用いられるのだろう。


なお3Dにおけるモーションの工夫についてはゲームクリエイターの桜井政博氏も反応。『スマブラSP』においては、リンクがマスターソードを納刀する時に鞘を下に引っ張るようにしたという。しかしそれでもまだ鯉口には剣先が届かなかった模様。とはいえ原作『ブレス オブ ザ ワイルド』のアクションや装具との兼ね合いもあったようで、『スマブラSP』ではあまり大きな工夫は施さず、鞘を下に引っ張るという工夫だけにとどめたようだ。

実際に『スマブラSP』で納刀の動作を見てみると、納刀時にはリンクが左手で鞘を持ち、下に引っ張る様子が確認できる。さらに抜刀時には、Dillon氏がX上で説明したように鞘を“破って”マスターソードが抜かれるのだが、剣先どころか鞘の半分ほどで剣が抜かれている。

上アピール、納刀時

上アピール後、抜刀時


このほか鞘をすり抜けて剣が抜ける仕様は『ウィッチャー3 ワイルドハント』や『モンスターハンター』シリーズなどさまざまな作品でみられる。鞘を背負うキャラが抜刀する際には、一般的な工夫なのだろう。

とはいえ、ゲーム内の抜刀/納刀における動きは、意識してみないと違和感は生じにくいかもしれない。実際の物理法則に忠実でなくても、さりげなく見栄えの良いモーションとなっているのだろう。特にアクションゲームなどでは目にも止まらぬ速さで動作がおこなわれることもあり、より違和感は軽減されるものと思われる。今回はそんなゲーム内のキャラが何気ない動きの工夫が開発者により“白状”されて、注目されている格好だ。

Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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