「13日の金曜日」対戦ホラーゲームの非公式“復活”プロジェクト、権利元の要請で中止。本編に要素追加して丸ごと勝手に無料配布計画、さすがに止められる

 

対戦ホラーゲーム『Friday the 13th: The Game』の非公式“復活”プロジェクト「Friday The 13th: Resurrected」が、「13日の金曜日」の権利元の要請を受けて中止となったことが発表された。同プロジェクトでは、独自の装飾アイテムなどを追加したゲーム本編を無断で無料配布する計画であることが明かされており、ユーザーから権利上の懸念も寄せられていた。

『Friday the 13th: The Game』は、映画「13日の金曜日」をゲーム化した1対7の非対称型マルチプレイホラーゲーム。映画IP使用ライセンスの失効により、現地時間2023年12月31日にディスク版およびデジタル版の販売は停止となった。なお公式Xアカウントからは、ゲームを所有している場合は、少なくとも現地時間2024年12月31日までプレイ可能な状態が維持されることが伝えられている。

『Friday the 13th: The Game』

本作でプレイヤーは伝説の殺人鬼ジェイソンと、キャンプ場を訪れた若きカウンセラーたちに分かれて対戦。ジェイソンの目的はカウンセラーたちを追い詰めて命を奪っていくことだ。対するカウンセラーたちはキャンプ場から脱出するか、時間切れまでジェイソンの追跡を逃れる、あるいはジェイソンを返り討ちにすることを目指す。

本作では非対称対戦ゲームであることや、原作のロケーションやサウンド、処刑アニメーションの再現といった要素が注目を集め、配信直後はアクセス過多が発生するなど、盛り上がりを見せていた。一方、映画「13日の金曜日」1作目の脚本家Victor Miller氏と権利保有会社Horror Inc.との間で版権争いが勃発。それに巻き込まれる形で開発停止を余儀なくされた(関連記事)。その後もサポートは継続されてきたものの、先述のとおり昨年末にライセンスが失効し販売も停止。今年末のサービス終了を待つ状態にある。


こうしたなかで本作の非公式復活プロジェクト「Friday The 13th: Resurrected」が発表。現地時間4月15日に配信予定となっていた。「Friday The 13th: Resurrected」は、『Friday the 13th: The Game』に独自の新スキンを加えつつ、専用サーバーで遊べるようにする“Mod”であると謳われていた。

一方で「Friday The 13th: Resurrected」公式サイト上のFAQ(本稿執筆時点では閉鎖済み)ではプレイにあたってゲーム本編(Base Game)が必要ないとも説明。サイト上では「modded build」とも表現されており、追加要素を加えた本編を無断で無料配信する計画であったとみられる。またプロジェクトが公認(official)ではないとも明言されており、プロジェクトのDiscordサーバー上ではユーザーから権利面の懸念も寄せられていた。

そして今回、同プロジェクトの開発チームにより、今回Horror Inc.の要請によりプロジェクトが中止となったことが明かされた。開発チームにより、Horror Inc.側からの通知と見られる文書も公開されている。


文書においてHorror Inc.側は、『Friday the 13th: The Game』を無許可で模造して(dubbed)、「Friday The 13th: Resurrected」が開発されている点を指摘。同プロジェクトやその宣伝において「13日の金曜日」IPのキャラクターやその名前、設定などを使用することはすべて同社の知的財産権を侵害していると伝えている。

またHorror Inc.側は、同社に損害賠償を求める権利があることを警告しつつ、「Friday The 13th: Resurrected」のプロジェクト中止やSNS上の宣伝などの差し止めを要請。すでに知的財産権侵害に基づき投稿されたコンテンツの削除要請をプラットフォーム側におこなっていることも伝えられており、YouTube上に投稿されていた「Friday The 13th: Resurrected」の映像などは本稿執筆時点で削除されている。

こうした要請を受けて、「Friday The 13th: Resurrected」のプロジェクトは中止となったようだ。開発チームはHorror Inc.が権利を有するコンテンツをすべて削除する作業を進めていると伝えている。一方でチームは声明にて「(「13日の金曜日」の)ブランドを傷つけるつもりはなかった」と主張。ファンによる非営利プロジェクトであった点に言及しつつ、Horror Inc.側の要請への不満を示している。

ライセンスの失効もあり、販売停止となった『Friday the 13th: The Game』。今年末のサービス終了を待つなかで発表されたファンによる“復活”プロジェクト「Friday The 13th: Resurrected」は注目を集めたものの、知的財産の扱いが問題視されて中止に至ったかたちだ。独自コンテンツを含むものの、ゲーム本編を無断で無料配信するといった計画自体に権利上の問題はあっただろう。

『Friday the 13th: The Game』は人気を博しただけに、新たな展開が望まれる状況もある。今後公式による新展開、あるいは権利問題をクリアしたファンメイド作品などが登場するかどうかも注目される。