Valveは11月10日、ハンドヘルドPCゲーミングデバイス「Steam Deck」の有機EL搭載新モデルを発表し、日本時間11月17日に販売開始すると告知した。海外メディアの報道によると、同デバイスでは主要部品のコードネームが「エアリス」から「セフィロス」に変化しているという。
新しいSteam Deckは基本的なパフォーマンス性能は旧モデルと変わらないものの、ディスプレイ仕様が大きく変更。携帯型デバイスとしては初のHDR対応の有機ELディスプレイを搭載する点が特徴となる。日本向けには、512GBモデルが8万4800円、1TBモデルが9万9800円となる(いずれも税込・送料別)。
ディスプレイ周辺のベゼルが小さくなったことでディスプレイ自体も7インチから7.4インチへと大型化。リフレッシュレートも60Hzから90Hzになっている。また従来のSteam Deckの不満点としてよく挙げられていたバッテリー持ちの悪さも改善しているという。黒色の発色に電力をほぼ使わない有機ELディスプレイの特性のほか、ディスプレイそのものの薄型化などにより、バッテリー容量も大きく向上。約30~50%の向上が実現しているとされる。重量は従来モデルから約5%軽量化しているとのこと。
今回、海外メディアWccftechやPC GamerはSteam Deck新モデルにおけるAPUの変更点などを報道。また記事のなかでは新モデルにおけるAPUあるいはSoC(System on Chip)のコードネーム、つまりValveやAMDでの関係者内の呼称が「エアリス」から「セフィロス」に変わったことも示されている。
APU(Accelerated Processing Unit)とは半導体メーカーAMDが手がける製品。CPUとGPUの機能を一つのチップに統合したプロセッサだ。CPUとGPUの統合によりメモリ空間が統一され、CPU-GPU間のメモリ転送をなくし、システム性能が向上しているとされる。またチップ数の削減にもなり、独立したCPUとGPUを搭載する場合と比べて、サイズ縮小や消費電力の低減も期待できる。そうした特徴から、主にノートパソコンや家庭用ゲーム機、携帯型ゲーミングデバイスのプロセッサとして採用されている。
そして、新旧のSteam Deck向けには同製品に向けたカスタムAPUがSoCに採用されている。カスタムAPUのベースとなるのはCPUにZen 2、GPUにRDNA 2を採用したコードネーム「Van Gogh」と呼ばれるAPUだ。AMDでは2019年以降、開発中のCPU・APUにコードネームとして画家の名前が付けられており、その流れが汲まれている。そしてSoCのコードネームは「Aerith」と呼称されていた。『ファイナルファンタジーVII』(以下、FF7)のキャラクターであるエアリス・ゲインズブールにちなんでいたのだろう。
そして今回の一連の報道により、発表された新モデルのAPUにおけるSoCのコードネームが「Sephiroth」と改められたことが示されたわけだ。こちらも『FF7』のキャラクターであるセフィロスにちなんでいると見られる。なお、新モデルAPUの性能としては、小型化のうえでヒートシンクやファンが改善。静音化したほか、熱くなりにくくなっているそうで、プレイの快適さも向上しているという。また従来モデルは7nmプロセスのAPUが採用されていたのに対し、新モデルでは6nmプロセスのAPUが採用されているとのこと。プロセスが微細化した半導体が採用されたことも小型化に寄与しているのだろう。
つまりValveおよびAMDは、Steam Deckの新モデルにおけるSoCのコードネームにまたも『FF7』のキャラクター名を採用したようである。いずれも公式サイトなどには記載されておらず、あくまで内部呼称としてのコードネームと見られるものの興味深い。ゲーム内でも因縁深い二人であり、なんとなく含みを感じるネーミングといえる。関係者間でゲームにちなんだ遊び心のある愛称がつけられているのも、ゲーミングデバイスならではかもしれない。新モデルでは「セフィロス」に名を改めたSoCやAPUがもたらす、バッテリー持ちの向上や軽量化といった面にも注目したい。
ちなみに『FF7』のリメイクシリーズ第1作の完全版『FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE』はSteam向けにも配信中。Steam Deckとの互換性もValveにより「確認済み」とされ、快適に動作することが公式に伝えられている。
Steam Deckの有機EL搭載新モデルは日本時間11月17日より出荷開始。日本からもKOMODO経由ですぐに購入可能となる見込みだ。