あるゲームデザイナーが“面接時の的外れな無茶振り”を告白して話題に。「ゲームデザイナーは何でも思いつくアイデアマンではない」

Image Credit: UX Indonesia on Unsplash
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あるゲームデザイナーが過去に“的外れな面接”を受けた際の体験談を投稿。多くの共感が寄せられている。面接においては「ゲームデザイナーは何でも思いつくアイデアマンである」との考えが透けて見えるような課題が出されたという。

面接の体験談が注目を集めているのは、Joseph Gribbin氏。同氏は小規模インディースタジオMedallion Gamesにて、代表およびゲームデザイン兼アーティストを担当する人物だ。同氏はかつてあるゲーム会社で面接を受けた際の体験をツイートとして投稿。面接において担当者がおこなった的外れな要求が注目を集めている。

Joseph氏は、ある会社でゲームデザイナーとしての面接を受けたとき、一枚の紙を渡されて「30 分で 3 つのゲームのアイデアを考えて提案する」ように伝えられたという。同氏はこれを受けて提案をおこなったものの、面接官たちはそれらに「あまりよく考えられていない」との評価を下したそうだ。

Joseph氏はこのエピソードに対し、ゲームデザイナーは「物事を思いつくアイデアマンではなく、問題解決をおこなう職業である」との考えを示している。また、たった30分で考えたアイデアが“よく考えられていない”と判断されるのは当然であり、そもそも面接においてそうした提案を求められたことは奇妙で的外れだと述べている。

Joseph氏のツイートは4.1万いいね・1320RTを獲得。大きな注目を集め、共感が寄せられている。さらにJoseph氏へのリプライには、面接で同様の経験があったと述べるユーザーや、その要求の的はずれさに同意する者も散見される。寄せられた反応の中には、上述の面接における要求に対する“提案”を、皮肉としておこなうユーザーも見られる。アイデアとして、SFシューター『Halo』と牧場スローライフゲーム『Stardew Valley』をくっつける、『ピクミン』と『バイオハザード』を融合させるといった荒唐無稽なアイデアが挙げられている。30分という制限時間では、実現の難しさを度外視した、あるいはデタラメなアイデアしか思いつけないという指摘だろう。

またこうした面接をおこなう会社はアイデアを重視しすぎており、ゲームデザインのプロセスそのものを重視しない方針があるのではないかとの見解を述べるユーザーも。ユーザーはそうした方針のもとで働くのは“地獄”だと述べている。ほかにもJoseph氏が採用されなかったことで災難を回避できたとの見方を示す声も多く見られる。そうした方針の会社では、実現不可能なプロジェクトを押し付けられる、あるいはゲームデザイナーとして思うような仕事ができないのではないかとの見方だろう。

なおJoseph氏に寄せられた反応の中には、「アイデアを挙げさせて不採用にしたうえで盗もうとしたのではないか」とのユーザー反応も散見される。一方同氏は少なくとも自分のアイデアについてはこうした懸念を否定。同氏が面接を受けたのは料理/農業シムを制作するモバイルゲーム会社だったそうで、自身の提案は役に立たなかっただろうとしている。ちなみに同氏は「犬がグラップリングフックを持っていたらどうなるか」を面接時にアイデアとして挙げた様子。同氏は現在Medallion Gamesにて、グラップリングフックを用いる犬が主役の2Dアクションゲーム『Grapple Dog』を開発中だ。

ゲームデザイナーに“的外れな面接”がおこなわれた背景には「ゲームデザイナーが開発において何を担当するのか」が企業によってまちまちであり、かつ広範にわたる点があるかもしれない。ゲームデザイン分野における仕事は多岐にわたり、シナリオやキャラ設計を含むゲームのコンセプトや、中心となるゲームメカニクス、レベルデザインのほか、マネタイズモデルの検討なども含まれるという(CEDEC)。

【UPDATE 2023/5/25 16:35】
レベルデザインに関する記述を変更

会社によってはそうした役割がチームや部署で分割されている場合もある。たとえばゲームデザイナーとレベルデザイナー、プロジェクト全体の進捗を管理するマネージャーなどに分けられている場合などが考えられるだろう。またゲームデザイナーは、ゲームプランナーやディレクターと呼称されたり、それらと兼任されたりすることも。ようするに、ゲームデザイナーの在り方は会社によって多種多様なケースが考えられるわけだ。ゲームクリエイターの桜井政博氏は自身の経験から、ディレクター(桜井氏はゲームデザイナーとも呼ばれるとしている)は人によって仕事の仕方さえ「まったく違う」と説明している。

一方で開発前にゲームのコンセプトを決めるという役割は、会社間である程度共通している仕事内容といえるかもしれない。新規タイトルを一から作り出す際に、アイデアをまとめて仕様書を用意し、チームとコミュニケーションを取りながら開発を進めていくプロジェクトの起爆剤のような役割を担っている場合は多いだろう。

結果的に、Joseph氏が応募した企業の面接担当者たちが「ゲームデザイナーがアイデアマンである」とのイメージを抱いていた可能性もある。しかしながら先述のとおりゲームデザイン分野が担う役割は多岐にわたるため、“よく考えられた”アイデアを30分で3つ提案せよとの難題は、ゲームデザイナーが実務上必要となる力量を試す課題としても、的外れといえるかもしれない。

一方でゲームデザイナーの役割は、先に述べたように企業によってまちまち。狙いとするプラットフォームや客層、企業戦略によって変わってくる側面もある。たとえば基本プレイ無料のモバイル向けゲームなどを多数打ち出す方針の会社であれば、短時間でアイデアを数多く提供できる人材を求めている場合もありそうだ。

なおJoseph氏の面接の際には、会社のCEOも同席していたという。その人物は「自分でするのは面倒な仕事をすべてやってくれる人を雇おうとしていた」との考えを同氏に暴露し、忙しいからと面接の途中で退室していったそうだ。またその後同氏は面接官から「難しい性格の人」を相手にしたコミュニケーションスキルについても尋ねられたという。一連の面接担当者の発言は、たとえ入社できたとして、ゲーム開発から逸れた役回りも押し付けられそうな内容だ。これらは同氏がこの会社に入りたくないと考える決め手になったそうだ。

ゲームデザイナーは、ゲーム開発において多岐にわたる仕事を担う重要な役割だ。そのぶん開発現場の外からは“アイデアマン・便利屋”といったイメージをもたれる場合もあるかもしれない。なおJoseph氏のツイートにはゲームデザイナー以外からも、プログラマーやイラストレーターが面接の際に無茶振りを受けたとの経験談が寄せられている。ゲームデザイナーに限らず、専門性の高い職種では面接担当者に実務への理解が特に求められるところだろう。

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なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。