任天堂が「ボツになった『ゼルダの伝説』ゲーム」を伝える動画を削除。しかし投稿者の申し立てにより復活


YouTubeチャンネルDidYouKnowGamingは昨年12月29日、任天堂の要請により削除されていたある動画について、ふたたび公開されたと報告した。動画削除について同チャンネルが不服を申し立て、YouTube側がそれを認めて復旧させたようだ。

DidYouKnowGamingは、ビデオゲームの歴史やトリビア、バグ、規制などをテーマとして扱い、現時点で239万人の登録者をもつ人気YouTubeチャンネルだ。今回削除および復旧されたのは、昨年10月3日に公開された「LOST Zelda Game for Nintendo DS: Heroes of Hyrule」というタイトルの動画である。

動画の内容はというと、『メトロイドプライム』シリーズや『ドンキーコング リターンズ』などの開発元として知られるRetro Studiosが、かつてニンテンドーDS向けとして親会社の任天堂に提案するも、結果的にボツとなった『ゼルダの伝説』シリーズ作品の情報を伝えるもの。Retro Studiosの元スタッフらが、当時の資料をもとにその作品の内容を明かし、映像では登場キャラクターなどのスケッチと共に紹介されていた。

しかし昨年12月8日に、同動画は削除された。任天堂の米国法人から、著作権侵害を理由とした削除要請がおこなわれ、YouTube側が削除したのだ。これを受けてDidYouKnowGamingは、同動画はビデオゲームの歴史を保存するジャーナリズム的な活動の一環であるとして、任天堂の対応を批判。そして今回、動画が復旧されることとなった。

YouTube側からの通知によると、任天堂からは米国のデジタルミレニアム著作権法に基づいた削除要請がおこなわれたようだ。この場合、YouTubeとしてはひとまず削除対応を取ることが通例。その後、DidYouKnowGamingからの不服申し立てを精査して復旧させたのだろう。任天堂は著作権侵害に対しては厳しい対応を取ることで知られ、YouTube上においては、たとえば同社作品の楽曲を公開していた動画について次々に削除要請し注目されたこともある。今回の一件については、報道や研究を目的とした著作物のフェアユースが認められ、動画の復旧に繋がったのかもしれない。

ちなみに、ボツとなったRetro Studiosのプロジェクトは「Heroes of Hyrule/ハイラルの英雄達」と呼ばれ、『ゼルダの伝説』の世界観をもつ、『ファイナルファンタジータクティクス』のような戦略ゲームとして構想されていたという。その物語は、3人の勇者の活躍によってガノンドロフが魔法の書に封じられ、ガノンドロフの復活を阻止するために魔法の書のページは世界各地に隠される。その後、主人公の少年が偶然魔法の書を手にし冒険することになる、というもの。リンクはNPCとして登場する計画だったそうだ。

同作は、現代と過去のふたつの世界で展開。現代では、従来の『ゼルダの伝説』作品のような探索などをおこない、そして魔法の書のページを発見して向かう過去では、描かれたかつての戦いを追体験する。ターン制の戦略バトルシステムが採用され、ほかにパズル要素にもターン制の導入が検討されていたとのこと。Retro Studiosとしては、この作品は任天堂のタイトルとして相応しく、また『ゼルダの伝説』の世界観を拡張することができると考えていたものの、任天堂はそのゲームプレイのコンセプトに興味を示さず、開発にゴーサインが出ることはなかったそうだ。

なお、Retro Studiosは現在『メトロイドプライム4』をNintendo Switch向けに開発中だ。