スクウェア・エニックスは9月9日、『ファイナルファンタジーIV』(以下、FF4)ピクセルリマスター版をPC(Steam)/モバイル向けに発売した。『ファイナルファンタジー ピクセルリマスター』シリーズは、シリーズ初代6作品を高精細なドット絵で描くリマスターシリーズだ。『ファイナルファンタジー』を象徴するドットキャラクターを生み出してきた渋谷員子氏をメインスタッフに加え、当時の楽曲を植松伸夫氏の完全監修のもと美しくアレンジして収録。さまざまな要素が現代向けにアレンジされた、リマスターの決定版となっている。
そんな『ファイナルファンタジーIV』ピクセルリマスター版だが、実はUIやシステムといった面以外にも“ある部分”にアレンジが施されていることが発見された。それは「開発室(かいはつしつ)」の存在だ。
開発室は、1991年に発売されたオリジナル版『FF4』から存在している隠しスポット。ドワーフの城の隠し通路からアクセスできる空間だ。いくつかの小部屋に分かれた開発室には、実際の『FF4』開発スタッフと同名のキャラクターたちが存在。それぞれメタネタ満載の、ユーモアある台詞を聞かせてくれた。ゴールデンウイークがないとこぼしたり、仮眠室でうなされていたり、過酷な労働環境がうかがえる一面も。一方、コンポーザーの植松伸夫氏や、なぜかチョコボ姿のディレクター坂口博信氏がいるなど、そうそうたる面々と出会える機会もある。敵としてエンカウントするスタッフの奇妙な言動や、仮眠室で手に入るアイテム「エッチなほん」の存在など、当時のプレイヤーをクスリとさせる要素が数々仕込まれていたのだ。
開発室はその後の作品にも登場した。ゲームボーイアドバンス版『FF4』では1991年の姿そのままだったが、2007年のニンテンドーDS版では開発スタッフがガラリと変化。リメイク版を制作したメンバーにチェンジしている。ぶつかった拍子にカツアゲしてきたり、コンビニ弁当のわびしさを嘆いていたり、相変わらず癖が強い。この場所ではデカントアイテム「こうれつぎり」も入手できた。
そんなインパクト大の開発室だけに、『ファイナルファンタジーIV』ピクセルリマスター版ではどのようなアレンジで登場するのか注目するファンもいた。そして発売日を迎えた今日、ようやくその実態が明らかに。期待を胸にドワーフ城の地下へ向かってみると……なんと、開発室は存在せず。「1991年 開発室 跡地」とだけ張り紙が貼られているというのだ。
この大胆なカットに対しては、多くのユーザーから憶測を呼んでいる。エッチなほんが規制に引っかかったのか、会社がスクウェア・エニックスとなり東新宿へ移ったからなのか。ファンが開発室の行方を悲しむ一方、まだ希望を捨てていないユーザーもいるようだ。実は開発室の“移転”は、以前から伝えられている。
2008年にリリースされた外伝作品『ファイナルファンタジーIV ジ・アフターイヤーズ -月の帰還-』にてドワーフ城地下の隠し通路へ向かうと、そこには開発室の移転を告げる張り紙がしてあった。そして開発室は、物語を進めた先で訪ねることができる別の場所に登場していたのだ。『ファイナルファンタジーIV』ピクセルリマスター版についても、まだ発見されていないだけで開発室がどこかに存在している可能性は捨てきれないかもしれない。
ちなみに開発室は、『FF4』以降もさまざまなスクウェア/スクウェア・エニックス作品に登場。『クロノ・トリガー』や、『サガ フロンティア』でもお楽しみエリアとして開発室(開発2部)が存在した。また2015年には、『ファイナルファンタジー XIV』のイベント新生祭にて、期間限定で開発室を訪ねることができるように。吉田直樹氏や室内俊夫氏といった開発チームと対面することができた。
なお『FF14』の開発室では『FF4』のようにブラックな労働環境が見せつけられることはなく、スタッフ一同からプレイヤーに向けて感謝の言葉が伝えられる場となっていた。今後『ファイナルファンタジー』シリーズに開発室がまた現れることがあれば、時代に合わせたかたちで我々を笑わせてくれるのかもしれない。
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