『SUPERHOT VR』最新アップデート配信を受けて、ユーザーから批判噴出。「自傷行為を示唆するシーン」をすべて削除


デベロッパーのSUPERHOT Teamは7月22日、VR FPS『SUPERHOT VR』向けに最新アップデートを配信した。“重要なアップデート”であると案内されているが、プレイヤーからは不評の声が寄せられているようだ。

本作は、「プレイヤーが動いた時だけ時間が動く」という特徴的なゲームシステムを採用するFPS『SUPERHOT』のVR版だ。赤いガラスのような身体の敵が襲い来るなか、プレイヤーは敵の弾を避けながら、周囲にある銃などの武器を手に取り敵を葬っていく。敵の出現パターンやステージレイアウトなどから、パズルを解くように攻略法を見出すゲームプレイが人気である。


『SUPERHOT VR』は、Steam/Oculus/Microsoft Store/PS VR向けに配信中。今回のアップデートは、少なくともSteam版にはすでに配信されており、ほかのプラットフォームにも順次配信されるとのこと。アップデートの内容はというと、「自傷行為を示唆するシーン」をすべて削除するというものとなっている。

本作の特定のステージでは、敵をすべて倒したあと、プレイヤーが自らの頭に向けて銃の引き金を引いたり、ビルの高層階から飛び降りたりすることで、次のステージへと進行する演出が用意されている。2019年には、該当シーンをスキップできるオプションが追加されていたものの、開発元SUPERHOT Teamは、センシティブな現在の状況を考慮すると、これらのシーンの居場所は本作にはないとコメント。完全な削除を決断するまでに時間がかかったことを、遺憾に思っていると述べている。


SUPERHOT Teamのコミュニティ担当者Paweł Wodziński氏は、該当シーンの削除は外部からの圧力を受けて決めたわけではなく、現在の世界の状況を受けてチーム自ら判断したと述べる。世界中のあらゆる人がほとんどの時間をひとりで過ごすことが多いなかにおいて、憂鬱な気分にさせる該当シーンでの表現を受け入れるには、人々は孤独になりすぎていると感じたそうだ。そして、本来少しばかり現実から離れて楽しめるはずのゲームによって、人々がわずかでも追い詰められるようなことになるのは、あまりにも悲しいとコメントしている。

プレイヤーがゲームの中に入り込み一人称視点でプレイするVRゲームにおいては、自らに銃口を向けたりビルから飛び降りたりといったシーンの、臨場感や没入感は通常のゲームとは比べものにならないだろう。その衝撃的なシーンによって、プレイヤーに良くない影響を及ぼす可能性があるのであれば、メーカーとして責任ある対応をとることは理解できる話ではある。


ただ今回のアップデート配信を受けて、Steamでは不評レビューが多く投じられている。レビューの内容を見てみると、問題のシーンは本作のストーリー展開上重要な場面だったとするものや、オプションでシーンスキップできたのに理解できないとする意見、あるいは本作はそもそもバイオレンスな内容であり整合性がないというものなどがある。また、次は銃を削除するのか、といった皮肉も聞かれる。

開発元の判断に理解を示す意見もあるものの、Steam版への不評レビューは、現在好評レビュー数を大きく上回っている。これまで「非常に好評」だったユーザーレビューステータスは、最近のレビューにおいては「やや不評」にまで下落。いわゆるレビュー爆撃の兆しをみせている状況である。批判的な意見は、Steamの掲示板やRedditなどにも多く寄せられており、アップデートを適用しないよう呼びかける人や、アップデート前のバージョンに戻す方法を共有する人もいる。本作を愛する人ほど、もともとの表現が変更されたことに憤りを感じるのかもしれない。

*12秒あたりで、ビルからの飛び降りシーンが垣間見える。

『SUPERHOT VR』は、Steam/Oculus/Microsoft Store/PS VR向けに配信中。自傷行為を示唆するシーンを削除するアップデートは、これらすべてのプラットフォームに適用される予定だ。ただ、本稿で触れたように批判的な意見が多く寄せられている状況であり、開発元は今後どのような対応をみせるのか注目される。