『ファイナルファンタジー IX』の世界を最新技術で再構築する非公式な取り組み「Memoria Project」進行中。プロ開発者たちが『FF9』の世界を再構築


『ファイナルファンタジーIX』(以下、FF9)の世界を最新技術で再構築するプロジェクト「Final Fantasy IX: Memoria Project」が進行中のようだ。今年4月に本格始動しており、すでにいくつかの作品が生み出され、ホームページなどで公開されている。『FF9』を、現代の美しいグラフィックで新たに描く試みだ。

「Final Fantasy IX: Memoria Project」は、厳密にいえばゲームではない。PoC(Proof of Concept)と呼ばれる、プロトタイプのようなものである。プレイアブルなコンテンツではなく、あくまで『FF9』のビジュアルを現代向けに再構築し、そうしたスクリーンショットをWebで公開することを目的としているようだ。


『FF9』は、『ファイナルファンタジー』シリーズナンバリングタイトル9作目にあたる作品。主人公は、タンタラス団の団員ジタンだ。アレクサンドリア王国の王女ガーネットを誘拐しようとしたところ、偶然にもガーネットもまた国を出ることを望んでいた。奇妙な利害の一致により始まった旅は、クリスタルをめぐるこの星の壮大な運命に巻き込まれていく。

『FF9』は、SFやスチームパンクな世界観が取り入れられた『FF7』『FF8』とは異なり、ファンタジー色の強い世界観に回帰している。クリスタルを世界観の中心に据え、自然や魔法がゲームの世界を構成。懐かしく牧歌的な同作のファンタジー世界は、グローバルに根強い人気がある。「Final Fantasy IX: Memoria Project」の始動には、そうした『FF9』の支持が背景にあるだろう。

同プロジェクトのサイトでは、再構築された『FF9』の街やキャラクターの姿が確認できる。代表となるポートフォリオは、アレクサンドリアの城下町だ。黄昏に染まる城下町が鮮やかに描かれている。石畳や木造建築はそのままに、丸みを帯びたキュートな様式を見事に再現。原作ではアレクサンドリアの城下町は上から見下ろすかたちで表現されるが、再構築されたビジュアルでは、やや下から見上げるような視点となっており、立体感を印象づける。夜バージョンもすでに用意されているほか、同作の重要キャラビビの後ろ姿も描かれている。ビビとガーネットについてはキャラモデルも作成されているようだ。ガーネットも肢体を含め美しくデザインされている。


こうしたポートフォリオを見ても、再構築されたグラフィックのクオリティがやたらと高いことがわかるだろう。それもそのはず、本プロジェクトにはその道のプロたちが携わっている。発起人であるDan Eder氏は3Dキャラクターアーティストとして、さまざまなタイトルに携わってきた人物。同氏のArtStationの作品を見れば、その実力が垣間見える。そのほか3D環境アーティストとして参加しているColin Valek氏は、Sucker Punch Productionsに所属し『ゴースト・オブ・ツシマ』の環境制作に従事した人物。同じく3D環境アーティストとして同プロジェクトに携わるKemal Yaraliogluは、Rareに所属し『Sea of Thieves』に携わったクリエイターだ。ライトニングアーティストのPeter Binh-Vinh Tran氏はUbisoftにて『Hyper Scape』や『レインボーシックス エクストラクション』に関わるなど、列挙しだすと暇がない。そのほか大手会社に所属していなくとも、実績十分の実力派アーティストがチームに名を連ねている。

どの人物がどの程度「Final Fantasy IX: Memoria Project」に関わっているかは不明。ともあれ、同プロジェクトの質の高さを裏打ちする顔ぶれとなっている。それほどのクリエイターたちが、いまだに『FF9』の世界観に陶酔している証明でもある。「Final Fantasy IX: Memoria Project」プロジェクトは、現在始まった段階のフェイズ1。同プロジェクトの完成形がどこにあり、何を目指しているかは不明であるが、Dan Eder氏のTwitterアカウントをフォローして、生まれゆくポートフォリオを眺めてみるとよさそうだ。


「Final Fantasy IX: Memoria Project」の画像は公式サイトにて公開中。Eder氏のTwitterアカウントでも、進捗は公開されている。なお『FF9』関連としては、同作がフランスにて子供向けアニメとして製作されていることも明かされている(関連記事)。