牧場ゲーム『Stardew Valley』のクリエイター、新たなスタッフを募る求人を出すも、業界関係者から苦言を呈される


インディースタジオConcernedApeのEric Barone氏は4月20日、スタジオのスタッフを募る求人ページを公開した。しかしながら、その求人内容がやや“欲張り”であることから、業界関係者から苦言を呈されている。

Eric Barone氏は、『Stardew Valley』を手がけたクリエイター。古き良き『牧場物語』への回帰を掲げ、丁寧な牧場ゲームを作り上げた。結果的に『Stardew Valley』は、発売前は知名度の低いゲームであったが、350万本以上の売上を叩き出すヒット作品へと成長。同作はChucklefish Gamesがパブリッシングを担当しており、マーケティングやローカライズ、そしてマルチプラットフォームのマネジメントやマルチプレイの導入など、クリエティブ以外の多岐にわたる面でゲームをサポートした。しかしながら、Barone氏はそうした面を含めて、すべてを自分たちで管理したいという願いから、昨年12月にChucklefish Gamesとの関係を解消し、人々を雇い組織として活動していくと公言(関連記事)。そうした経緯を踏まえて、求人を募集したのである。募集する役職名は「管理者(Administrator)」。業務上のタスクは以下のとおり:

■一般
・機密情報の徹底管理
・オフィスやプロジェクト、チームメンバーのスケジュールの管理
・情報の記録や活用により、ビジネスや組織に関するレポートや文書を作成
・『Stardew Valley』公式サイトの更新

■コミュニティマネジメント
・さまざまなSNSの管理
・バグや機能追加など、コミュニティからのフィードバックの記録および収集
・ユーザー問い合わせのトラブルシューティングを含む、メールの対応

■人事
・円滑な運営をするために、第三者の会計事務所との協力のもと、ペイロールソフトを管理
・採用活動およびオン・ボーディングの促進
・従業員の給与情報の管理および更新
・従業員の各種書類管理
・州および連邦の雇用法の遵守

■オフィス管理
・事務用品の発注および補完
・オフィスの共用エリアの整備と管理
・必要に応じて、雑務の遂行
・必要に応じて、郵送の手続き

■財務上の記録管理
・さまざまな外部パートナーからのインボイスと財務レポートの収集と整理
・第三者の会計事務所と協力し、会計帳簿を記録
・税金に関連する記録とレポートの管理

またこれらの業務を遂行するにあたり、『Stardew Valley』に関するゲームとコミュニティの深く幅広い知識、コミュニティマネジメントのスキル、最適化および優先順位付けのスキル、MicrosoftおよびGoogle Office Suites各種ツールの使用スキル、そのほかライティングスキルやコミュニケーションスキルなど、幅広い能力が求められる。アメリカのシアトルでの、フルタイムでの業務となる。給与は経験に応じて支給される。

要約すると、コミュニティマネジメントと人事と経理の人材を求めているようだ。しかしながら、これらの仕事をひとりに任せようとしていることから、さまざまな業界人から苦言を呈されている。たとえば『Falcon Age』を手がけたOuterloop Games氏は、ひとりでこれほどできる人を求めるのは非現実的であり、これまではBarone氏がひとりで何もかもしてきたかもしれないが、それをスタッフに求めるのはまた異なるとコメント。そして助けが必要ならば(同じシアトル在住の人間として)ヘルプするともコメント。そのほか、SIEサンタモニカスタジオに勤めるアソシエイトプロデューサーであるShayna Moon氏は、これらのタスクはスキルと責任の面で考えても、2、3人で分けるべきであると指摘。そのほか、別業界の人々からも少なくとも3名は必要である、これをひとりでやらせるものではないといった旨の言及がなされている。

一般的には、企業や組織の規模が小さくなると、人が少ないという関係もあり、より幅広い仕事をこなすことが求められがち。Barone氏は、『Stardew Valley』開発においてはプログラミングから音作りまでほとんどひとりでこなしてきたが、もちろんそのほかにも、ビジネス面でも多くのタスクをこなさなければいけなかっただろう。自身がこなしてきたからこそ、スタッフにも多くのタスクを求めている可能性はある。とはいえ、散々指摘されているように、ユーザー対応やコミュニティの監視をしつつ、さらに人事や財務といったセンシティブな分野の管理をできるのかという点に疑問が集まるのも無理はない。

Barone氏はこうした声に反応し、本日4月23日に求人について誤解があるかもしれないとし、情報を補足。募集で記載しているタスクは、氏が7年間おこなってきたものであり、少ない時間でこなしてきたとコメント。また新しい管理者には、無理のない範囲で段階的に仕事を渡していく予定で、それらの責任を負うのではなく、あくまでシステムなどの管理をヘルプする立場であるとしている。

Barone氏といえば、純朴な人柄と情熱的かつ継続的なゲーム開発により、ユーザーや業界人に愛されてきた存在。ただし、プロのクリエイターとはいえ、昨年まではChucklefish Gamesと契約を結んでおり、クリエティブな面にフォーカスし活動してきた。人員を増やし、複数のスタッフが所属する組織として活動を始めたのはごく最近。人や組織を管理する経営者としては、熟練というわけではないだろう。今回の求人への疑問は、批判というよりも、そうした新米経営者としてのBarone氏に対する懸念や心配に近いニュアンスが含まれているかもしれない。

なお『Stardew Valley』については、1.4アップデートの実施が近いと示唆されている。同アップデートでは新コンテンツの実装に加えて、ゲームを楽しくかつ円滑に遊ぶクオリティ・オブ・ライフの面での強化がなされているとのことだ。