ゲームセンターへ回帰していく格闘ゲーム。アーケード版『KOF14』『ストV』、闘神祭2016でのメーカー各社発表まとめ

株式会社タイトーが主催する大規模格闘ゲームイベント「闘神祭2016」全国大会決勝が10月15、16日の二日間にわたって実施された。アーケードで稼働中の格闘ゲームの大会が同一イベント内で開催され、熱戦が繰り広げられられた。

株式会社タイトーが主催する大規模格闘ゲームイベント「闘神祭2016」全国大会決勝が10月15、16日の二日間にわたって実施された。アーケードで稼働中の格闘ゲームの大会が同一イベント内で開催され、熱戦が繰り広げられられた。対象となったタイトルは『ウルトラストリートファイターⅣ』『BRAZBLUE CENTRALFICTION』『ニトロブラスターズ-ヒロインズインフィニットデュエル-』など。

大会の主役はゲームで日々腕を磨いてきた各ゲームプレイヤーではあるが、一日目、二日目における表彰式での各メーカー代表の発表が話題を呼んだ。

アトラス和田和久プロデューサー

アトラス和田和久プロデューサーは、『ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ(P4U)』の続編としての『P5U』について、現状では『ペルソナ5』の発売直後で余裕は無いとしながらも、製作には意欲をみせ「是非要望を送って欲しい」とした。

カオスコードシリーズのデベロッパー「FK Digital Pty.,Ltd」

カオスコードシリーズのデベロッパー「FK Digital Pty.,Ltd」からは、プロデューサーであるマイケル・リン氏とミッキー・リン氏がビデオレターを通じて会場にメッセージを送った。『カオスコード -ニューサインオブカタストロフィ-』のPS4版が11月に発売予定であるアナウンスをするとともに、続編も製作中であることを明らかにした。

エクサム林D

エクサムの林Dこと林 和麿氏は、来年春の「エクサムカップ」の開催と、『ニトロブラスターズ-ヒロインズインフィニットデュエル-』のバランス調整を10月27日に行うことを発表。

カプコン綾野氏
カプコン綾野氏

カプコン綾野智章氏は、まず『ウルトラストリートファイターⅣ』とスクエア・エニックスのアーケードゲーム『ガンスリンガー・ストラトス3』とのコラボを発表。次いで「タイトーとの協力の上、PC版『ストリートファイターV』(以下、ストV)をアーケードで合法的に遊べるしくみを準備中」と発表した。要点のつかみにくい発言ではあったが、今のところアーケードで(PC版という留保は外せないものの)『ストV』が遊べるようになるという意味だと捉えてもよいだろう。

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NESiCAxLive2(仮)

各社の発表が続く中、もっとも反響を呼んだのは、主催者タイトーの現行「NESiCAxLive」の後継となる「NESiCAxLive2(仮)」の正式発表だ。ローンチタイトルとしては、『THE KING OF FIGHTERS XIV』(以下、KOF14)のアーケード版が開発中であるという。日曜日の16日夜ゴールデンタイムには、Twitterにて『KOF14』がトレンドになるなど、この発表は多くの格闘ゲームファンにとってインパクトのあるものとなったようだ。

タイトーが提供している「NESiCA(ネシカ)」は、今や一般化しているゲームセンター向けハードウェアシステムのことだ。従来の「新作ゲームが出たら店舗が筐体を購入する」という概念ではなく、「新作ゲームが出たらNESiCA側がダウンロードする」という仕組みであり、新作ゲームが逐次ダウンロードされていく上に店舗側の購入リスクをヘッジできる。その代わりに1プレイ毎に店舗側にロイヤリティが生じるため、1プレイの値段設定を店舗が自由に設定はできないというもの。今回の後継システム「NESiCAxLive2」では、新たにオンラインを通じた店舗間の対戦機能が実装されることになり、その第一弾タイトルが『KOF14』になるとされている。

 

今なぜアーケード版なのか

『ストV』や『KOF14』において、開発陣はアーケードへ参入する姿勢を積極的に見せてこなかった。むしろ格闘ゲームは家庭用中心にシフトしていく旨の発言も過去に散見されるなど、アーケードへの参入には消極的だったといってよいだろう。ではなぜ今になってアーケード版(あるいはそれに近しいもの)を作るのか。単純にアーケードを通じて各タイトルのシーンを盛り上げ、プレイヤー数の増加を狙っているという面も考えられる。ただ私としては、かつて「ゲームセンター」という小さくも確固たる「城」に根付いていたコミュニティが、家庭用が中心になっていったことで「身内」というコミュニティに細分化されてしまったことを受け、開発陣がある種の弊害を感じているようにも思えなくない。

確かに各家庭にオンライン環境が整備されているのが普通になった現在、家庭用格闘ゲームの存在はプレイヤー参入の敷居を下げたことは間違いない。かつてゲームセンターでしか「他人」との対戦機会を持てなかったほとんどのゲームプレイヤーにとって、利便性という意味で隔世の感がある。プレイヤーを「個々人」に割った場合、確かに環境は良くなったのだ。ただだからといって、それがコミュニティの存続にも一役買ったかといえば、そうともいえない。個人ベースの参入のしやすさは、同時に離れやすさでもある。

今回の「闘神祭」は、小さくマイナーであってもゲームセンターでそのゲームを愛し続けた人の集いのような側面がある。そして大会を離れれば、参加者たちには各人のホームグラウンドであるゲームセンターがあり、たとえ少数であっても「それなりの規模」の「それなりに流動性の担保された」コミュニティがあるのだろう。。そしてそこにあるコミュニティはほかのコミュニティとの関係性も築いて、そこからさらに広がっていくのである。

それは「身内」という個々人に帰属するコミュニティにはなく、「場所」に帰属するコミュニティが持つ柔軟性と強さであり、それこそが「格闘ゲーム」を生きながらえさせてきた根幹にあるエッセンスなのである。お世辞にもそこまで注目されていたとはいえない「KOF14」のアーケードゲーム化が、たとえ一瞬でもトレンド入りするほど口の端に上ったという事実は、「かつてホームグラウンド」としてのゲームセンターを持っていた人達の心の琴線にふれる「何か」があったことの証明と言えないだろうか。今回の発表が「格闘ゲーム」がゲームセンターに回帰していく潮目なのか否かは、時間が証明してくれるだろう。

「NESiCAxLive2」の稼動は2017年を予定しており、2月に開催されるJAEPO2017にて続報が出され、2017年内に『KOF14』のほかに2タイトルの配信を予定しているとのこと。

Nobuhiko Nakanishi
Nobuhiko Nakanishi

大学時代4年間で累計ゲーセン滞在時間がトリプルスコア程度学校滞在時間を上回っていた重度のゲーセンゲーマーでした。
喜ばしいことに今はCS中心にほぼどんなゲームでも美味しく味わえる大人に成長、特にプレイヤーの資質を試すような難易度の高いゲームが好物です。

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