『プラグマタ』レビュー。カプコンの新規IPとしての一定のミッションは果たすも歯がゆさあり、楽しさと惜しさが押し寄せるゲーム

『プラグマタ』は面白いと感じるほどにギクシャクした感覚もまた伝わってくる、楽しさと惜しさが同居するゲームである。

近年、カプコンは新規IPの開発とプロモーションに力を入れている。『深世海 Into the Depths』と、その開発チームが手掛けた『祇(くにつがみ):Path of the Goddess』。この流れに続くのが、『プラグマタ』だ。作品の発表から約6年。紆余曲折を経てようやく登場したその姿は、目的が先行した結果、手段をツギハギした歪なものだ。新規IPとしてユーザーを誘致する機能は確かに持っているが、面白いと感じるほどにギクシャクした感覚もまた伝わってくる、楽しさと惜しさが同居するゲームである。

『プラグマタ』はカプコンが開発するアクションアドベンチャーゲーム。価格は7990円。発売予定日は4月17日となっている。対応プラットフォームはPS5/Xbox Series X|S/PC(Steam)。本作はNintendo Switch 2にも対応しているが、こちらは4月24日に発売予定だ。

プレイヤーは月面施設に調査へ向かった調査員ヒュー・ウィリアムズとして、アンドロイドの少女ディアナと共に、ロボットが暴走した原因の探求と、施設からの脱出を目指す。

※本稿はカプコンから提供を受けたPS5レビューコードをもとに執筆


「忙しさ」のカスタマイズを楽しむゲーム

では、作品の中核となっている戦闘アクションから触れていこう。本作はハッキングをイメージした一筆書きのパズルと、敵の弱点部位を狙うガンシューティングを交互に行い、敵を倒していくゲームになっている。パズルに回答することで敵の弱点があらわになり、そこを攻撃して敵を倒すという流れをたどる。逆に、敵の特定部位を攻撃することでパズルの回答が可能になる、という流れもある。

筆者は以前、本作を東京ゲームショウ2025で試遊し、内容を確認した際に「このゲームは本当に面白くなるのか」と心配したものだ。というのも、ゲームプレイの発展方向に関してイマイチ想像することができなかったからである。

まず、本作は敵を倒すまでに段階を踏む必要がある。敵の攻撃を避けて、次の自分の攻撃に移る前にパズルをこなし、クリアしたら射撃をしていく。昨今ではパリィアクションの普及を通じ、ターン制という戦闘システムが採用されなくなりつつある(それこそ、カプコンが開発した『モンスターハンターワイルズ』や『バイオハザードレクイエム』がトレンドの体現として分かりやすい)。テンポの遅い擬似的なターン制の戦闘を今、世に送り出す意図は何なのだろうかと考えていた。一筆書きパズルの発展内容については回答が難しくなるか、ルールそのものが変わるほかなく、シューティングについては弱点を狙いづらくするほかないだろう。果たしてその方向性は面白いのか。そもそも、発展方向のバリエーションが乏しいのではないか、とも考えていた。

実際のところ、本作ではアクションの発展を、ゲーム側がルールを改変しプレイヤーに適応を促すのではなく、プレイヤーが構築する戦術とその実現可能性を通じて表現している。端的に言えば、本作は自発的にゲームプレイの難易度を上げるほどプレイヤーが強くなるシステムを採用しており、難易度も上げやすいのだ。作中手に入るアイテムを消費して、パズルの内容を難しくする(ゴールまでに通るマスを増やす)ほどハッキングは強力になり、探索を通じて入手する装備品の説明に従って、立ち回りを制限するほどシューティングの威力は上がっていく。敵を倒すことで手に入るトークンを消費して、武器や主人公2人の能力を強化することも可能だ。

なかにはハッキングをしながら同時にシューティングを行うことで、攻撃を強化する要素もある。そして、本作はパズルとシューティングという2段階のプレイを採用している都合上、敵の攻撃モーションが非常に遅い。ゆえに、シューティングゲーム初心者やマルチタスクが苦手な人でもプレイしやすく、試行錯誤がしやすい。テンポの遅い擬似的なターン制のゲームを新規IPとして発売する意義がここにある。

また、本作における銃やハッキングの強化要素は消費型であり、リソース管理が必要になってくる=いかに強力なカスタマイズでも、無敵ではない。敵に倒されにくいことを前提に、ゲームの難しさをプレイヤーが調整する仕組みを設け、活用してもらうこと、そしてリソース管理という制限を課すことで、中核となるゲームプレイが抱えている発展段階の乏しさをカバーしているというわけだ。ゲームがフルコースを用意するのではなく、自由に味付けして食べてくださいという形式である。

たとえば、ゲームが進むにつれてハッキングを行うためのミニゲームが難しくなってきたり、武器の弾薬を無駄遣いしがち、と感じたならば、1回のハッキングで敵を倒せるよう、武器を強化し、威力を高める装備品をつけると良いだろう。敵の弱点が狙いづらくなった、ハッキングに自信アリと感じたならば、ハッキングに特化したカスタマイズを行うと良い。筆者の場合は作中終盤になると、「体力を半分にする代わりにすべての攻撃の威力が上がる」装備品を使って主人公をカスタマイズしていた。敵の動きがノロいため、戦闘に慣れてしまえばこういった極端なビルドも意外と簡単に成立する。

スローなゲームプレイを通じて損なわれている銃撃の爽快感も、創意工夫によって生まれる高火力を通じた気持ちよさや、忙しないマルチタスクをこなして感じる達成感で補っている。また、特定の条件下で課題を達成するトレーニングモードの存在や、クリア後コンテンツも存在しており、体験のボリューム自体もしっかりある。

しかし、セールスポイントとなっているパズルとシューティングの相性については、特別なシナジーを感じることはなかった。本作の面白さの中核となる要素を表現するにあたって、パズルとシューティングという手段を用いる必然性を強調できていないからだ。あくまで、本作における面白さの核とはパズルでも銃撃戦でも、その両立でもない。忙しいのが面白い、忙しさを自分好みに調整できることが面白いのである。忙しさを形づくるためにパズルとシューティングを用意しているという印象を受ける。

本作のプレイは目的に対し手段の必然性が伴わないゆえに、どこか芯を食っていない。その点をキャラクターカスタマイズを通じた自己満足や、遊びの「発展段階」が尽きてしまう前にゲームが終わる尺調整で綺麗にカバーしている。それが『プラグマタ』の実態である(本作は約10時間ほどでクリアできる。筆者は約8時間半でクリアしている)。

たとえば、敵を足止めする銃を使ってハッキングをしやすくする、弾を当てることでパズルが簡略化される銃を使う、といった連携は可能ではあるものの、互いが何か影響を与え、独特な体験を生んでいるわけではない。プレイヤーのカスタマイズを通じてどちらかに特化できるということは、ゲームの攻略上、両者ともに使う必要性があまりないということでもある。敵の中には特定部位を攻撃することではじめて、パズルの回答が可能になる者もいる。敵を無視して先に進んでも良いロケーションも登場する。開発側としてはこの存在を通して、プレイヤーにリソース管理や戦略を練ってほしいという意図があると思われるが、面倒な敵を見かけたら他のシューティングゲーム同様、逃げ回ってハッキングを行い、射程外から少しずつ攻撃すれば良い。敵の動きが緩慢である都合上、再現性のある攻略法として機能する。高難易度エリアに突入しないかぎり、初期装備である無限リソースの銃を使えば敵をしっかり倒せるため、敵を無視する必要もない。つまり、本作でなければ通用しない戦略を組み立てる必要性は薄い。

また、「ハッキングを表現する上で用いられている手段がなぜパズルなのか」、「なぜシューティングと合わせる必要があるのか」という疑問に対し、他作品と差別化したいから、以上の明確な回答を作中で用意できていない。パズルのルールやインターフェース、武器のデザインに物語における設定を結びつけ、強調するといった理由付けが不十分である。ゆえに、遊びとしても物語としても強い相関がない行動を「そういうゲームだから」続けなくてはならず、表現したい目的に対して手段の必然性が伴っていない。パズルにしろ、シューティングにしろ、前者は回答を入力する速度、後者はエイミングの速度を通じて「忙しなさ」を演出するための装置である……以上の印象を受けなかった。そのため、主人公とSFな物語が用意されているアクションゲームとしてはやや没入感に欠け、チープに感じてしまう部分がある。

とはいえ、「忙しさを楽しむゲーム」としては確かな面白さをもった作品に仕上がっている。ゲームスピードが遅いことを通じた遊びやすさ、確かなゲームボリュームと、遊びの部分だけを観察すれば、新規IPとしての役割を十分に遂行できる作品になっているように思う。


ゲームの賞味期限に縛られたストーリー

だが、『プラグマタ』には擬似的な親子関係を主題にした物語もまた、作品のチャームポイントとして用意されている。そして主題を十分に表現できてはいない。この原因はそもそものゲームデザインにある。本作は物語に合わせてゲームが作られているわけではなく、パズルとシューティングの賞味期限に合わせてゲームが終わるように作られているため、題材を描くにあたって必要な映像描写が足りていない。尺不足である。

主人公たちは出会った瞬間から息がピッタリであり、終始仲良く旅をする。ロードムービー的な演出に合わせた二人の関係性の変化、といったお決まりの展開すらほぼない。また、本作では「パズルとシューティング」しかゲームプレイが用意されていないため、二人の関係性を没入感のある形で描くことができない。よくある「低身長のキャラが狭い場所を探索する」「関係性が変化したことで連携攻撃が可能になる」というような、キャラクターの関係性の変化を象徴するゲームプレイが足りていない。ゆえに、描写の積み重ねが爆発するはずである終盤の内容が非常に性急なものとして感じられる。

また、SF作品としても本作を評価することは難しい。というのも、本作はアートスタイルを含めた物語体験のなかで科学技術をメインとした要素が強調されず、作劇上において強い意味を持たない。キャッチーなホームドラマの表現が優先されており、上述した物語自体の尺不足も相まって「忙しないゲームプレイと、ドラマチックさを両立するための手段」以上の役割をSFに持たせられていない。

たとえば、本作の主人公の一人であるディアナに関しては、自然美を伴ったアンドロイドとして描かれている。こだわり抜かれた髪質や肌質、目の動きは朗らかな少女然としつつも、ドールのような無機質な冷たさを両立している。一方で、彼女が持つ機能とその原理は説明されない。カートリッジを口に加えて、情報を「吸い上げる」可愛らしい機能がなぜ存在するのか、上述したようになぜハッキングが一筆書きパズルなのか分からない。「ゲーム攻略に適した超能力をもつ、ホームドラマの娘役」以上の役割や魅力が用意されていない。

武器や装甲、3Dプリンターの暴走をイメージしたカオスな建造物といった映像上映えるマテリアルや機構の部分が非常に精巧で美しい一方、モニター上に移るコードの内容がダミーであったり、文字を潰していたりといった、ハードウェアの機能によって美麗に強化されない映像部分に対する熱量の非対称性も気になってしまう。SFとしては細部にまで拘って欲しいと筆者は思ったからだ。こういった「省略」は上述した理由からプレイ内容をテンポよく、短くするために機能している。しかし、物語のクオリティアップに寄与しているわけではないのが実情である。

この制限時間に囚われたドラマを補強するためにあるのが、時間に囚われない収集要素である。フィールド探索やトレーニングの報酬を通じて獲得できる設定資料は尺の都合上、描写できない事件の細かな背景を説明し、地球の遊具をモチーフにしたアイテムは、ヒロインのリアクションを通じて足りないホームドラマ成分を補強している。また、プレイ中に主人公たちがよく喋る。攻略に関するアドバイスや、敵に対する愚痴まで本当によく喋る。しかし、可愛らしいリアクションや数々の資料はドラマのクオリティそのものを上昇させているわけではない。二人の関係性に変化をもたらしてはいないからだ。

本作で取り扱っている「擬似的な親子関係」というテーマは、採用している著名作も数多い、言わば王道である。ゆえに本作がどのように道を歩き、SFとして未知を提示してくれるのか期待していたが、変化や成長を伴うドラマではなく、ゲームをスムーズに終わらせるためにある平坦な内容にまとまってしまったのは残念である。

総じて、「忙しさを自分好みに調整する」「感動的なストーリーを短い時間で提供する」という体験を生み出すために各要素を必然性なく、「面白い」だけでパッチワークした結果、歪な形になったのが『プラグマタ』である。その姿は大々的にプロモーションされているカプコン期待の新規IPとしては、物足りないと言わざるを得ない。作品の柱となる個性の弱さをキャラクターカスタマイズを通じた自己満足や、スローペースであることの遊びやすさ、遊びの尺調整で綺麗にカバーしているものの、そのしわ寄せが分かりやすくストーリーに向かっている。ゆえに遊べば遊ぶほど、面白さを感じるほどに、遊びやすく作られているがゆえに、作品の不完全性、ギクシャクとした作品構成のバランスを味わうことになる。楽しさと惜しさが同居する、歯がゆいゲームである。

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Takayuki Sawahata
Takayuki Sawahata

娯楽としてだけではなく文化としてのゲームを知り、広めていきたい。ジャンル問わず死にゲー、マゾゲー大好き。

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