元Rockstar Games開発者の Obbe Vermeij氏は、自身のXアカウント上で『グランド・セフト・オート・バイスシティ』(以下、GTA:VC)で登場した吹き飛ばされるゴミや破片が『グランド・セフト・オート・サンアンドレアス』(以下、GTA:SA)に登場しなかった理由を明らかにした。海外メディアKotakuが報じている。
2001 年に発売された『グランド・セフト・オートIII』 (以下、GTA III)と、その続編である『GTA:VC』 の街並みには、さまざまな道路や歩道を飛び回るチラシや新聞紙などのゴミがあった。このゴミや残骸は、周囲の物の動きや風の強さなどを検出して飛び散る。また、風に吹かれて通り過ぎる車に引きずられることもあり、生活感あふれる小汚い現代都市の雰囲気を演出していた。しかし、この飛び散るゴミたちは2004 年発売の『GTA:SA』では姿を消してしまう。
その理由をGTAシリーズの開発に実際に関わったObbe Vermeij氏が明かしている。同氏は、Rockstar Games傘下のスタジオRockstar Northに1995年から2009年6月まで在籍していた人物。そこでは『GTA III』『GTA:VC』『GTA:SA』『グランド・セフト・オートIV』といった、『GTA』シリーズ作品においてテクニカルディレクターを務めてきた。
上記のObbe Vermeij氏のポストによると、そもそも街中を飛び散るゴミを追加した理由としては、開発当時の『GTA III』の街並みがきれいすぎたためであるという。また同氏はその実装の仕組みも紹介している。ゴミは一枚の長方形のメッシュで、新聞紙や葉っぱのテクスチャにより構成された4種類が用意されていたそうだ。ゴミは地面に沿って移動し、風の強さなどを踏まえてその動きの強さを変える仕組みになっているとのこと。
また『GTA:VC』でも引き続き同様の仕組みが採用。さらに同作では水上飛行機で街中に宣伝チラシを撒き散らすミッション「Dildo Dodo」をクリアすると、4種類のうち1種類のテクスチャが宣伝チラシに置き換わる仕組みになっていたそうだ。
一方でVermeij氏によれば、この宙を舞うゴミには“欠陥”もあったことを明かしている。同氏によると、ゴミは当時の技術的な制約から、動き回る際に最終的に着地する地点の地面の高さしか検出しない仕様になっているという。そのためキャラクターやオブジェクト、マップそのものを突き抜けて移動してしまうことが度々あったようだ。
そして『GTA:SA』の開発初期には、この街中に飛び散るゴミたちを引き続き実装するかどうかが開発チームの中で議論にのぼったという。その中にはゴミごとにポリゴンが用意されているため、単純にレンダリング処理に時間がかかるという指摘もあったとのこと。また、単純にゴミの挙動の見た目が気に入らないという意見もあったそうだ。同氏は最終的に開発チーム内での議論に負けたそうで、このゴミを『GTA:SA』では削除したと明かした。同氏としては宙を舞うゴミを『GTA:SA』にも実装したかったのかもしれない。
なお、Rockstar Northにより2003年に発売されたステルスアクション『Manhunt』にはこの街中を飛び回るゴミと同じコードが実装されているという。Vermeij氏いわく、開発の最後の数か月間で何人かの『GTA』開発スタッフが手伝ってくれたことで、『Manhunt』にも同じゴミのコードが追加することができたそうだ。つまり『Manhunt』は、『GTA III』で生み出された宙を舞うゴミが実装された最後のゲームとなったようである。
Obbe Vermeij氏はこの“街中に飛び散るゴミ”コードの実装における裏話の他にも、さまざまなポストに対して返答をしている。『GTA III』のディテールへのこだわりや、街を行きかう車両たちの交通システム、およびその実装方法を質問するXユーザーたちの疑問に答えている。『GTA III』の開発当時の裏話に興味のある方は、同氏のXアカウントをチェックしてみるとよいかもしれない。