「鬱」を描いたADV『Indygo』開発元を襲う“憂鬱な”災難。ゲームがSteamから弾かれ別ストアでの販売を強いられる

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ポーランドのインディースタジオPigmentum Game Studioは1月21日、『Indygo』をItch.ioで再びリリースし直すと発表した。同作は2017年10月よりSteamで販売していたが、後述する“不幸の連鎖”により、再リリースを強いられたのだという。

『Indygo』は、以前弊誌でも紹介した「鬱病に苦しむ画家」を描くアドベンチャーゲームだ。プレイヤーは、鬱病を患い3か月近く部屋の中に閉じこもっている画家トーマスとして、部屋にあるさまざまなものにふれながら、外の世界を踏み出すことを目指す。鉛筆画のようなビジュアルで描かれる部屋にて、パズルを解きながらトーマスの心の苦しみを紐解いていく物語だ。

同作はヒットこそしなかったが、「鬱」という繊細なテーマを扱ったナラティブなストーリーテリング上々の評価を獲得していた。Pigmentum Game Studioは、自分たちの描きたかったことをユーザーに伝えられて満足だったようだが、パブリッシャーはそうではなかったようだ。Pigmentum Game Studioによると、パブリッシャーであるFat Dog Gamesは、同作の趣旨を理解しておらず、開発プロセスをも難しいものにしたという。

そしてデベロッパーとパブリッシャーが離別しようとしたのち、Valveは昨年9月Steamストアでの『Indygo』の購入不可状態にしたようだ。同作の販売を再開させるために、ゲームの権利を取得し弁護士に相談したものの、Valveはスタジオの相談に応じなかったとのこと。販売を無効にすることで、パブリッシャーとデベロッパーのトラブルに対処したのではないかとPigmentum Game Studio側は推測している。

しかし『Indygo』について諦められない開発元は、Itch.ioにて同作を再リリースすることにしたようだ。Steamストアページには「パブリッシャーが掲載されない」という奇妙な状態にあるが、一方でFat Dog Gamesは公式ページにて依然として『Indygo』の宣伝をしており、1週間前にも同作についてのポストをしたばかり。開発元の糾弾により今回の事態が発覚したが、未だ権利をめぐってトラブル状態にあることがうかがえる。あくまで今回の件について言及しているのはPigmentum Game Studioで、一方的な説明であることは拭えないが、もし一連の騒動が事実ならば「憂鬱」な問題に巻き込まれていることに間違いないだろう。

Steamでは、昨今では毎日大量の作品が発売され“埋もれやすい”状態になっている関係もあり、パブリッシャーをつけることの優位性も提言されている(関連記事)。パブリッシャーをつけてプロモーション/マーケティングをすることで、開発に専念できたり差別化できるという理屈だ。しかし一方で、パブリッシャーをつけるということは、契約関係で守るべき部分を守らなければ、今回のようにIPをめぐるトラブルが起きかねない。インディーゲームを売るということの難しさが、あらためて認識できるかもしれない。

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