Steamのインディーゲーム市場は“ポストアポカリプス状態”なのか?悪化し続けるマーケットを関係者らが観測

Steamのインディーゲーム市場は、Steam Greenlightの導入と廃止、そしてSteam Directへの移行を経て、タイトル数が激増しつつある。Steam Greenlightというユーザー投票による配信の認可システムにより間口が広がり、登録費100ドルの振込と書類の提出だけで誰でもゲームを配信できるようになるSteam Directによってその門は完全に開かれた。こうして、インディーゲームの競争が激化し市場がレッド・オーシャン化しつつある現象を、関係者たちはIndiepocalypse(インディーポカリプス)と定義していた。

Golden Krone Hotel』

そして2018年8月、『Golden Krone Hotel』を手がけた開発者であるJeremiah氏は、現在のインディー市場はもはやアポカリプス(終末)ではなく、ポストアポカリプス(終末後)の世界であると表現している。つまり、2018年のインディー市場はアポカリプス発生後の、荒れ果てた大地同然であるというわけだ。

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終末はすでに終わったよ派

Image Credit : WIkipedia

あらためて振り返ってみると、Steamのゲーム市場は変化し続けている。2013年に約550本リリースされていたゲームの数は、2015年に約3000本へと増加。そして2017年には7600本に膨れ上がっている。4年前と比較すると、約14倍だ。前述したようにSteam Directの解禁がひとつのきっかけであったが、その前からSteam Greenlight導入や市場成熟にともなって肥大化の一途をたどっていた。ソフト数に比例するほど市場が拡大しているわけでもないので、競争は熾烈になる一方だ。

こうした状況に、Jeremiah氏は悲観した姿勢を見せている。たとえば氏は、もはや良いゲームだからといって売れる時代ではないと断言。さらにプレスリリースや公式サイトを作るといった基本的なマーケティングをしても、ゲームがあふれメディアの人間やゲーム配信者が全ての新作を追う余裕がなくなっている今の時代においては、意味をなさないと述べている。そして、人気タイトルを手がけた開発者の次回作は、知名度の点で基本的に有利に働くが、『Gone Home』を70万本売ったFullbrightが、次回作である『TACOMA』を1万本しか販売できていないをあげ、ヒット作を生み出した開発者を取り巻く環境ですら悪化しているとコメントしている。売上の激減だけでなく、SteamレビューやSteamニュースのコメントがゼロであるゲームが珍しくなくなってきていることも踏まえ、あらゆる意味で、インディー市場はゼロに近付きつつあると悲観的な姿勢を強めた。

また氏の持論としては、レビュー数に50をかけた数が売り上げ本数であると考えているようだ。『Golden Krone Hotel』のレビュー件数は67、ここに50をかけると……

希望はまだ残されているよ派

Jeremiah氏の意見はもっともらしいが、また異なる観点でインディーゲーム市場を捉えている人物もいる。新進気鋭のパブリッシャーNo More RobotsのMike Rose氏だ。ゲームジャーナリストとして、あるいはtinyBuild Gamesのスタッフとしてマーケットを眺めてきた事情通である。氏が2018年のGDCで行なった、インディーゲーム市場に関するプレゼンテーションの動画が公開されているので、そちらを見てみよう。Rose氏は、インディースタジオの7%のみが次回作を作れるほどの収入を得られると切り出し、インディー市場で生き残るのは非常に難しいと主張。また氏は、2017年と2018年のSteam売上データを比較。2017年2月頃には、ゲーム売上本数の中央値は500本、収益の中央値は2000ドルであった。しかし2018年になると同数値は50本・250ドルにまで落ち込んでいることを報告している。

その理由はもちろん、Steam Directの登場だ。Steam Directの導入によりSteamでのゲーム販売が容易になったことで、粗製乱造された低品質ゲームが増え、中央値が下がってしまった。しかし、低品質ゲームを出しているゲーム開発者は一握り。マーケティングをおこなう上では、そうした作品を含まないデータもまた必要になる。そこでRose氏は、2018年の数値から粗製乱造とおもわしきゲームを除いた新たなデータを提示した。すると2018年2月の中央値は、売上本数が2000本、収益は1万2500ドルにまで上昇。粗製乱造のゲームを除けば、2017年のデータよりもはるかに良い結果が出たのだ。もちろん、このデータをもってしてもなお、2015年のSteam市場に比べると現在の市場の状態は良いとは言えない。また氏が独自に定義した「低品質ゲーム」を除くというやや特殊な前提条件は存在するが、それでもまだまだSteamには十分に大きなマーケットが存在することを証明している。

またRose氏はゲームの価格についても、高い方がいいことを強調。2018年2月のデータでは、15ドル以上のゲームの売り上げの中央値が5000本であることに対し、8ドルから14ドルのゲームの中央値は1000本であるとコメント。収益については、前者が後者の10倍であるという。Steamでは以前より価格が安いと売れづらいと言われていたが(関連記事)、低価格にすると本数・収益ともに伸びづらいことがあらためてわかる。Rose氏は、自身の会社No More Robotsが出した『Descenders』を25ドルという価格でリリースして成功していることにも言及。セールになってもまだ普通のインディーゲームの定価程度の価格であることが、パブリッシャーと開発スタジオを助けているとも話した。

Rose氏は、パブリッシャーをつけると、利益の何割かをとられるが、売り上げが伸びやすく、リスクの軽減につながるとも語った

 

終末はまだまだ続くよ派

現在のインディーシーンを「インディーポストアポカリプス」と表現し悲観的な姿勢を見せるJeremiah氏と、状況は悪化しているものの工夫次第ではまだまだSteamでやっていけると考えるRose氏。両者の意見は方向性こそ似ているものの、結論はやや異なる。そしてインディー市場の現状について持論を持っているのは、この二人だけではない。Steam市場を見守り続けるSteam SpyのSergey Galyonkin氏は、「まだポストアポカリプスには至っていない。ここからさらにゲームは増え続ける」とまだ状態が悪化することを示唆。『The Witness』などを手がけたJonathan Blow氏は、Galyonkin氏のコメントに対し「いつか現状が変化すると信じるだけの根拠は何もないよ。閉じたプラットフォームが新たに誕生することで小さなバブルが起きる可能性はあるかもしれないけどね」とコメント。レッドオーシャン化がさらに進むと考えている関係者も多いようだ。

現在インディーゲームはマルチプラットフォーム化が進んでおり、特に活気があるといわれているNintendo Switch向けの移植が活発だ。一昔前は、コンソール移植は限られたインディータイトルを対象におこなわれていたが、現在はコンソールを前提としたインディーゲームの開発は多くなってきている。対応プラットフォームがPCのみでも元気なタイトルは数多く存在するが、コンソール展開を視野にいれた、リスクヘッジが必須になる時代がきているのかもしれない。

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