ゲームでダイエット


タイトルは釣りではない。私は本気でゲームをダイエット、あるいは健康維持のパーツとして活用できないか、これまで考えぬいてきた。まだ結論は出ていないが、現段階で最善と思われる手法を紹介したい。

 


特定のタイトルを遊ぶパターン

 

『Ingress』はたしかに痩せるだろう。
『Ingress』はたしかに痩せるだろう。

一番単純なのは、プレイするだけで痩せるゲームを探すことだ。痩せるための減食はもってのほかであり、体を物理的に動かすしかない。となると、体を動かすゲームこそがもっともシンプルなソリューションである。アーケードの大型筐体なら『マジカルトロッコアドベンチャー』、『プロップサイクル』、一般的なアミューズメントセンターに現存するところだと『Dance Dance Revolution』シリーズあたりだろう。

また、最近ではAndroid/iOS『Ingress』も痩身効果があると評判だ。本当に突き詰めると複数名がかりでのクルマ移動になるような気もするが、普通にプレイするぶんには徒歩または自転車がよい。やはり体が動く。運動強度は低くとも、上述したようなアーケードゲームとちがって事実上"ゲームクリア"がないのはポイントだろう。逆に不毛さを感じてしまうのならば、ちかしい人と一緒にプレイすると確実にそうした感情は薄れる。

しかし、このメソッドには絶対に解決できない問題がある。さだめられたゲームしかできないのだ。……いちいち指摘している自分の正気を疑うほどに当然である。ともあれ、特定のタイトルに対する飽きが到来した時点でダイエットが終了してしまう。そしてわれわれゲーマーの代謝は残酷である。健康に飽きは許されない。ならばどうするか。

 


結論にして最強、固定ローラー台

 

運動とゲームを両立するとなると、制約は多岐にわたる。その大半を突破できると現時点で安田が認識しているのは、自転車の固定型ローラー台である。スポーツバイク(おもにロードバイク)の後輪を固定し、擬似的に走行時の負荷を再現するものだ。代替案としてはエアロバイクがありうる。ちなみに、ローラー台としては3本ローラーも存在するが、こちらは本稿の趣旨に合致しない。

ロードバイクなんて高価なものなど買っていられない、とする向きもあるだろう。しかし最近はエントリーモデルも多数販売されており、質実剛健なメーカーのラインナップのなかには4万円程度のものもある。固定ローラー台は2万円からある。つまり、せいぜいあたらしく据置型ゲーム機を買う程度の負荷で環境を構築できるのだ。しかも自転車を持ち出せば舗装路の走行も可能だ!(ただしヘルメットなどほかの装備にカネはかかる)

誰が言い出したか「男は30こえたら自転車」。元来は、まっとうに労働に従事している男性ならば自転車趣味にはしる程度の余裕が財布のなかにできるからこそ生まれたフレーズなのだろう。だがしかし、そして私はこれを「ゲーマーも30こえたら自転車」としたい。ものぐさで出不精なゲーマーと自転車&固定ローラー台のコンビネーションはじつに相性が良い。心拍計を導入するとなお良い。

注意点もある。本当に気をつけていただきたいのだが、固定ローラー台とはいえゲームに気を取られすぎる、または油断すると転倒する。しかもローラー台ごとだ。ビンディングシューズ(ペダルに足を固定するもの)を履いていればそのリスクと被害は大きくなる。私はバランス感覚にとぼしいうえにまぬけなのですでに2回ほどやらかしているのだが、われながら衝撃的な絵面だったし打撲傷も負った。

もう一つ、ようやくゲームに関係することだが、遊べる内容にある程度限界がある点だ。極端な例でいくと、ハンドル周りを魔改造でもしないかぎりアーケードスティックは操作できない。また、シビアな入力を要求される作品もきびしい。タイトなアクションゲームをローラー台のうえでプレイすると、足がほぼ間違いなく止まる。これではイスに座っているのとかわらない。本末転倒だ。

逆算すると、プレイできるゲームはおのずと決められる。ゲームスピードがゆったりしたもの、またはルーチンワークだ。前者はサウンドノベルやアドベンチャーなど、人によっては慣れたジャンルのゲームならば相対的にゲームスピードを低く感じるだろうから選択範囲は広がる。後者を代表するのはみんな大好きレベル上げ&トレハンである。RPGを「ああ、ここはローラーこぎながらでもいけるな」「レベル上げが必要だからチャリをこごう」などと考えながらプレイするのも乙なものだ。実際に安田はそうしたスタンスで『シャリーのアトリエ』に挑んでいた。

非現実的で突飛な案に思われるかもしれない。しかし、このダイエット計画はゲーマーにとって存外"現実的"だ。「やってみたらわかる」という無責任な言葉が浮かんでくるが、とにかくきちんと計画立案さえすれば日々の運動としては最高である。このゲームならローラーこぎながらでもプレイできるな、と考えはじめたらスタートラインに立っている。あとは走りだすのみ。実践さえすればまずまちがいなく痩せる。

 

このようなスタイルになる。写真ではVitaで遊んでいるが、一般的なコンソールのコントローラーならたいていいける。 吸汗用タオルと水分補給を忘れないように。
このようなスタイルになる。写真ではVitaで遊んでいるが、一般的なコンソールのコントローラーならたいていいける。吸汗用タオルと水分補給を忘れないように。

 

ただ、本メソッドには最大の弱点がある。自転車乗りにとっては常識だが、ローラー台を使うと自転車のタイヤが削れてしまうのだ。そのまま外で走行するのは不安である。結局室内のみでハムスターになるはめになり、時速30kmで風を切る快感から縁遠くなってしまう。だから、実質的にはローラー台用のタイヤが――事実上ホイールごともう1セット――必要になるのだ。さらに、前述のとおり自転車にまじめに乗るとランニングコストがそれなりにかかってくる。See also: ゲームは安い

「結局カネがかかるじゃないか」? ごもっとも。まあ、たしかにそうかもしれない。結論はロードバイクとローラー台、これは不動だ。しかしご安心いただきたい、プランBがある。

 


バランスディスク&ストレッチポール

 

もはやブームがすぎさった感のあるバランスボール、この運動強度は意外なくらい高い。きちんとした姿勢をたもつのは至難であり、しかし構造的にはイスと同じであるから、ゲームと運動を両立させるにはもってこいだ。しかも価格は下限だと1000円を切っている。デスクの構造によってはPCゲームのプレイすら可能だ。

しかしながら、バランスボール・ゲーミングには致命的な問題がある。危険なのだ。転倒したときの勢いや受け身のとりづらさは状況次第では自転車ローラー台すら上回る。本来バランスボールは(いうまでもなく)ゲームをプレイするためのものではなく、それなりに座ることに集中する必要がある。しかしゲームはゲームに集中する必要がある。矛盾が生じている。それに、ゲームはどうしても熱中しがちだ。「転倒しないよう気をつけてゲームをするように」と指示するのは無茶である。

そこで注目したいのが"バランスディスク"だ。Amazonでは「ディスクボール」「エクササイズクッション」などでも出てくる。ひらたくいえば、バランスボールのような座布団である。こちらの価格も1000円から2000円程度だ。

さすがにバランスボールと比較すると運動らしさは一気に低くなるが、そのぶん怪我の危険もほぼない。主体的に「姿勢を良くしよう」としたときだけ負荷がかかる形だ。ポイントは、形状が敷物であるため、ほとんどのゲームをプレイできるところ。たとえば先に却下されたアーケードスティックを使ったゲームにも、いちおうは対応できる。意識しないと本当にただの座布団になってしまうが。

 

『ウル4』もプレイできる。ただ、さすがに「運動」と呼ぶのははばかられるが……
ウル4』もプレイできる。ただ、さすがに「運動」と呼ぶのははばかられるが……

 

べつのプランがある。"ストレッチポール"だ。高いものでは1万円近くするものの、類似商品では2000円を切っている。あまりなじみのない方が多いと思われるので説明するが、とどのつまりが「ちょっとだけやわらかい円柱」だ。それ以上でもそれ以下でもない。なにをするかというと、またがって横になるだけ。しかし、これまた予想以上に体にくる。

どうしても仰向きになるためバランスディスクよりはプレイできるゲームは限定されるが、それでも携帯機やモバイル端末ならばたいてい操作可能だ。しかも、腕を常時上げることになるため腕部への負荷がかかり運動強度が上がるというシナジーつきだ。考え方によっては、ここまであげたすべての手法のなかでもっとも「ゲームでダイエット」らしい。

気をつけてほしい点が2つある。まず、バランスボールほどではないが転倒するとそこそこ派手になるということ。そして、おそらくストレッチポールの大半が数時間も同じ姿勢で人体をとどめることを想定していないことだ。ゲームで時間を忘れることなど日常茶飯事だが、ストレッチポール上でそれをやるとおそらく不健康な負荷がかかる。数十分ごとに姿勢をかえたり前屈したりする必要があるだろう。

 

視覚的なダメ人間感が閾値を突破しているが、じつは結構疲労する。 ちなみにプレイしているのは『ボクマン』。
視覚的なダメ人間感が閾値を突破しているが、じつは結構疲労する。ちなみにプレイしているのは『ボクマン』。

 


「ゲームでダイエット」の極意

 

今回あげた3つは、しょせん器材や小手先のテクニックにすぎない。一番重要なのは(当たり前だが)運動しようと心がける精神性である。ローラー台もバランスディスクもストレッチポールも「今日はしんどいから普通にゲームしよう」の言い訳のまえには粗大ごみと化す。

正直にいって、私もそうした怠慢から脱却できていない。なにかと言い訳をつけて快適なOAチェアでPCゲームにふけっていたりする。ローラー台から20分で降りてしまったりする。これでは痩せない。

結局のところ、ゲームと運動を紐づける習慣こそが一番ダイエットに近いのだ。コントローラーを握るときは立木のポーズでも英雄のポーズでも開脚でもなんでもいいから、とにかく体を動かすよう自分に命令する。ストレッチはバランスWiiボードの上でだけやるものではない。

参考にならない締めで申し訳ないが、これがすべてだ。

 

リストウェイトとアンクルウェイトを使う案もある。 しかし関節への負荷が高いため、あまり推奨はしない。
リストウェイトとアンクルウェイトを使う案もある。
しかし関節への負荷が高いため、あまり推奨はしない。