ラクダと共に砂漠を進む、聖地巡礼アドベンチャーゲーム『Sandstorm』のミニマル禅な旅


One Coin Gamer」は、1コインつまりは定価500円以下で購入できるゲーム(ただしモバイル向けを除く)を紹介する連載企画。サクッとプレイできる良いゲームを求めている人、馬鹿馬鹿しいゲームを求めている人、とにかくお金を節約したい人たちに向け、魑魅魍魎の低価格帯ゲームをピックアップしてゆく。第4回目は、『Sandstorm』を紹介する。現在はitchi.ioを経由して販売されており、価格は3ドル。

遠方の山地を目指す聖地巡礼の旅
遠方の山地を目指す聖地巡礼の旅

『Sandstorm』は、砂嵐が吹き荒れる砂漠での過酷な旅をテーマとしたアドベンチャーゲームだ。プレイヤーは聖地を目指す巡礼者となり、ラクダと荷車と共に砂漠を進んでゆく。

ゲームのルールは非常にシンプルである。『Sandstorm』では一定時間が経過すると日没となり、次の日になるとラクダが餌を求めて荷車から離れてしまう。プレイヤーは日没が来る前にラクダを探しだして荷車に繋ぎ、聖地へ向かって歩みを進めなければならない。ラクダが見つからずに1日が終わると、プレイヤーは砂漠に取り残され、次の日にゲームオーバーを迎えてしまう。ラクダの繋いだ荷車で何日か移動し、一定距離を越えて聖地へと無事辿り着けば、ゲームはクリアである。

『Sandstorm』は、Game Jam関連でいくつかの作品を発表してきたDaniel Linssen氏によって開発されたタイトルだ。Linssen氏は過去に『Roguelight』や『The Sun and Moon』など、美麗なピクセルグラフィックの作品を発表しており、本作でもシンプルながら美しい砂漠のビジュアルが満喫できる。気だるい砂漠を表現した楽曲は、Linssen氏の相棒であるクリエイターJ.Tree氏が作曲を担当している。

 

 

日没時には画面が真っ暗になり、なにも見えなくなる
日没時には画面が真っ暗になり、なにも見えなくなる

『Sandstorm』においてプレイヤーは、毎日ラクダを探しだして荷車に繋ぎ、聖地へ向かって砂漠を横断する。ほぼ変わらないゲームプレイ、グラフィック、サウンドが十数分にわたり続くが、その"上質な継続"が、プレイヤーを退屈なはずの砂漠の世界に没入させてしまう。そして時々、砂漠の上に壊れた車輪や枯れた植物などが登場したり、持っているコンパスが壊れて動かなくなったり、物語のヒントとなる手紙が出現する。砂漠の世界に没入しているプレイヤーは、こういった些細な変化にも強く感じ入って、奇妙な心地よさを感じてしまう。

一方で『Sandstorm』をゲームとして見ると、本作は単純な"ラクダ探しゲーム"だ。どこかにラクダが居るので探しまわらなければならないが、地図やミニマップの類はない上に、砂嵐で視界は最悪である。画面は常に揺れているため、上下左右に真っ直ぐ進むことも出来ず、直ぐに方向感覚を失ってしまう。これに対してプレイヤーは、回収可能な6本の旗を地面に挿して、荷車へ戻るための道標とすることができる。ゲームクリア後はさらなる高難易度モードが登場するため、チャレンジングなプレイを追求したいプレイヤーは遊んでみるといいだろう。このほかマップ上にはシークレットや手紙が存在しており、収集することでラクダの代わりとなる「透明な狼」や「恐竜」をアンロックできる。

 

スクリーンショットとトレイラーを見てもわかるようにゲームプレイはほぼ代わり映えしないが、奇妙な魅力がある。ラクダもかわいい
スクリーンショットとトレイラーを見てもわかるようにゲームプレイはほぼ代わり映えしないが、奇妙な魅力がある。ラクダもかわいい

本作は恐ろしほど小さくミニマルだが、同時に美しいゲームプレイ体験を持つタイトルだ。小難しいことを抜いて端的に言えば、『Sandstorm』は世界観や空気感を楽しむタイプの作品であり、派手な演出はないというわけである。旅行費用がわずか3ドル、ミニマルで禅な雰囲気が漂う聖地巡礼の旅に浸かってみるといいだろう。