マルチ協力型サバイバルFPS『Sker Ritual』は“『CoD』のゾンビモード好きに向けて宣伝を絞った”からヒットした。一極集中PRという工夫

 

Wales Interactiveは4月18日、『Sker Ritual』について、パッチ1.0.0としてアップデートをおこない、本作を正式リリースした。正式リリース後本作は同時接続プレイヤー数がそれまでの数十人規模から一転、ピーク時で約6000人を記録するほどの盛況となった。その理由について、Wales Interactiveのマーケティング兼リリースマネージャーを務めているBen Tester氏がThe GameDiscoverCoに語っている。

『Sker Ritual』は協力プレイ型のサバイバルFPSだ。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア)/Xbox Series X|S/海外PS5。ゲームは日本語表示に対応する。舞台となるのは1914年のスカー島。スカー島を征服したエリザベス・ウィリアムズは、「セイレーンの歌」を流して世界を征服しようとしていた。プレイヤーはエリザベスの娘に協力し、エリザベスの企みを阻止することとなる。


本作は2022年10月にSteamで早期アクセス配信を開始。そこから数々のアップデートを実施し、コンテンツの拡充や不具合の修正などがおこなわれてきた。そして4月18日、満を持してパッチ1.0.0を配信、正式リリースとなった。

SteamDBによれば、早期アクセス配信開始直後では同時接続プレイヤー数が約200人となっていた。その後は2022年12月や2023年5月の大型アップデートのタイミングで約150人を記録するものの、基本的には同時接続プレイヤー数は20人前後で推移していた。それが正式リリース後は一転し、すぐさまプレイヤー規模は1000人単位に。ピーク時では同時接続プレイヤー数が5992人を記録し、現在でも最大2000人程となっているなど、人気を誇っている。

Steamユーザーレビューでも、本稿執筆時点で約2900件中85%が好評とする「非常に好評」ステータスを獲得している。Wales Interactiveのマーケティング兼リリースマネージャーであるBen Tester氏の話によると、本作は全プラットフォーム合計で数十万本が売れているようだ。


そんな『Sker Ritual』の大ヒットをThe GameDiscoverCoが報じ、その理由やからくりについてTester氏に尋ねている。Tester氏は本作の正式リリースに際し、YouTuberのCodeNamePizza 氏とMrDalekJD 氏にPR動画を依頼したそうだ。両名はそれぞれ約92万・約270万人の登録者を誇るコンテンツクリエイターで、いわゆる「ゾンビゲー」を中心に活動している。特に『Call of Duty』(以下、CoD)シリーズのゾンビモードに関する動画を多く投稿しているようだ。


本作はそうした層に訴求したこともあると思われる。実際に動画では「NEW Round Based CoD Zombies Game(ラウンドベースの新しい『CoD』ゾンビゲー)」や「The NEW 2024 “Call of Duty: Zombies Killer” ROUND BASED(2024年の新たな“Call of Duty: Zombies Killer”)」というタイトルで取り上げられている。プレイヤーの中には“インディーゲーム版の『CoD』ゾンビモード”と認識して本作を手に取った人もいるかもしれない。実際Steamユーザーレビューでも、『CoD』のゾンビモードを比較対象にあげ、同モードが好きなプレイヤーにおすすめだとの声が多く見られる。

なおThe GameDiscoverCoの推定では、PS5での売上の半分近くがアメリカでのものだとのこと。Wales Interactive がThe GameDiscoverCoに向けて公開したSteamでのユーザーシェアを確認しても、約9割が北米とヨーロッパのユーザーで占められている。北米/ヨーロッパ圏で『CoD』シリーズが特に人気を博していることからも、『CoD』のゾンビモードファン向けへのマーケティングとなり、それが成功を収めたかたちともいえるだろう。

Image Credit: The GameDiscoverCo on Web


またTester氏が語るところでは、早期アクセス配信時はゲームを磨き上げることが最優先だったため、あまり無理に本作を押し出すようなことはしなかったという。主要開発チームが10年近くゲームを制作してきた経験者ということもあり、制作への“一極集中”によってコンテンツの拡充をうまく果たせたのかもしれない。

宣伝では、多額の費用を費やしても売上が向上するとは限らない。一方で、PRする際の内容や手段、回数などを絞って効果をあげようとする戦略も存在している。『Sker Ritual』は比較的小規模なタイトルであったため、プロモーションの数にリソースを割くのではなく、ラウンドベースのゾンビサバイバルFPSの潜在的なユーザー層に向け、正式リリース後のタイミングに集中して大きなプロモーションをおこなったようだ。その結果、同様のジャンルにおける大規模タイトルのプレイヤーすらも取り込めたようだ。宣伝における選択と集中の方針がうまく噛み合い、大きな成果をあげた例だといえるだろう。

『Sker Ritual』はPC(Steam)/Xbox Series X|S/海外PS5向けに販売中。またEpic Gamesストア向けには後日の配信となるようだ。

【UPDATE 2024/5/7 18:38】
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