『原神』のmiHoYo、投資信託で最大400億円損失したとの報道。売上もド派手なら損失もド派手

 

『原神』や『崩壊3rd』などで代表的なゲーム会社miHoYoが、投資信託事業で最大400億円の損失を被った可能性があるとして、中国のテクノロジーメディア36Krが報じている。miHoYoは6月25日、投資信託を請け負った上海を拠点とする不動産投資信託のMinmetals International Trust(Mintrust)に対して訴えを起こしているという。

36Krによると、2017年ごろにmiHoYoは中国A株市場での上場を目指していたが、審査などの段階で遅延が相次いだという。miHoYoは自身の資金繰りに確固たる自信を持っていたものの、創業者の蔡浩宇氏は上場を撤回。撤回後は、未上場の新興事業に出資して利益を得るベンチャーキャピタルを開設した。miHoYoを投資会社として運用する方向にも進めていったのだ。

ベンチャーキャピタルは基本的には将来性のある新興事業に投資する、ハイリターンな投資方法を行う投資会社だ。その一例として、miHoYoは投資会社であるNIO Capitalと共同で、次世代といわれる小型のトカマク型核融合リアクターを開発するSingularityに投資している。このように、miHoYoは自身が上場するよりも、他企業に投資して利益を得る、将来を見据えた投資事業を展開していった。


しかし、手広く展開していたmiHoYoの投資事業はMintrustとの投資信託契約で大きな痛手を受けたのだ。投資信託とは、信託運用会社が投資者から資金を調達し、それを投資者の代わりに投資することで損益が発生する投資方法だ。つまり本件においては、信託運用会社のMintrustは、投資者であるmiHoYoから投資を受け取っていながらも利益を出せなかったのだ。Mintrustが利益を出し損ねた背景には、中国で今年の5月から下落傾向にあった不動産市場の向かい風があるのだろう、とYahoo!Financeなど一部のメディアは分析している。

さらにMintrustは過去に15個の信託プロジェクトにおいてデフォルト(債務不履行)をおこなったという。債務不履行となった信託プロジェクトの損失額は400億円以上とされており、miHoYoが損失した被害額の何パーセントが債務不履行による影響で引き起こされたものなのか、現段階で断定することはできないようだ。

miHoYoの投資傾向に詳しい一部の弁護団体によると、 miHoYoが不動産投資信託に手を染めた行動は“らしくない”行動であったという。というのも、不動産事業を専門とする投資信託は中国においては見返りが少なく、極めて不安定な状態にあるという。そういった不安定な市場に踏み入れるゲーム会社と不動産事業は“火と氷”の関係にある、と弁護士のZhang Shengli氏は語る。お互いを消しあってしまう、不安定な組み合わせであると、説明している。


miHoYoは大きな痛手を負ったように見えるかもしれない。しかし、昨年の段階でmiHoYoは『原神』のモバイル版の総売り上げとして約30億USドル(約4200億円)を受け取ったと推測されている(Sensor Tower調べ)。そういった資金的な余裕もあってか、7月18日にmiHoYoは新たにGoerTekという音響機器開発メーカーとのパートナーシップを発表している。

技術的革新がある分野への投資は特にリスクが付きまとうものだ。しかし、miHoYoは少々の痛手を負いながらも、モットーである「Tech Otakus Saves the World(技術オタクが世界を救う)」という信念を崩さず、技術的な革新がある分野を投資先として選び続けたいのかもしれない。