『PUBG MOBILE』、中国で正式に配信するために『平和エリート』なるタイトルへと転身。倒されたプレイヤーは死なずバイバイする“平和仕様”に

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今月5月8日、中国にて『和平精英 Game for Peace』なるタイトルが配信開始された。『和平精英』は、日本語で表現すると平和エリート。パラシュートにて戦地に降り立ち、生き残りを目指すTPSである。しかしこの『和平精英』は、どうやらもとは『PUBG MOBILE』であり、政府からの許諾を得るために大きくモデルチェンジしたものであるようだ。ロイターBloombergが詳細を報じている。

『PUBG MOBILE』は昨年3月よりテンセントのもと中国で配信されていたが、政府の許諾が必要となるゲームライセンスを取得していなかった。暴力表現などが危惧されていたという。収益化されない状態、つまりゲーム内課金が無効の状態で配信されており、1日に約7000万のプレイヤーが遊んでいた。いつまで経ってもゲームライセンスを取得できない状態を続けた同作は、ついにその看板を降ろし、“似て非なるタイトル”として収益化できる状態で正式配信を果たした。なおBloombergによると『和平精英』は今年4月に政府の認可を得ているという。

比較してみると、元タイトルの『絕地求生』は、『和平精英(平和エリート)』へと変化。英語名は『Game for Peace』とされており、そもそも原題が大きく変更されている。100人で死闘するという根本的なルールなどは変化していないが、倒されたプレイヤーは倒れて死ぬのではなく、その場で座り込んで“手を振る”。ゲームシステムやインターフェースの根幹は『PUBG MOBILE』そのものであるが、タイトルのほかゲームのテーマに大きく手が加えられているのだ。

公式サイトの声明によると、『和平精英』は反テロを掲げ開発されたという。テンセントの内製ゲームとして作られており、中国の空軍に敬意を表したテーマのゲームであるそうだ。前述したように、死という概念はなく出血もなし。“平和的なシューター”へと変化した。なお『PUBG MOBILE』をインストールしていたユーザーは、アップデートによりこのアプリに置き換えられたという。現在は、16歳以上のユーザー向けに配信されているそうだ。

中国政府は先日、国内ゲームの規制における新たなガイドラインを設定したと噂されている。これまで禁止されていた“赤い血”に加えて、緑色の血を禁止(中国版『PUBG』はこの緑もしくは青色の血を採用していた)。また戦闘表現においてはいかなる液体が出ることも許さず、倒した相手の遺体はできる限り速く消えることを要求。このガイドラインを3度違反した場合、そのタイトルは金輪際ゲームライセンスの申請をできないというもの。冒頭に述べたように、政府からゲームライセンスを得られなければ、収益化できないまま。ユーザーからお金を得るためには、ガイドラインを沿う必要がある。ただし、このガイドラインはデマではないかとも噂されており、正確な真偽は不明であるので留意してほしい。

いずれにせよ、中国政府は暴力表現を厳しく検閲しており、政府から認可を得るためにはそうした規制にそった表現に変更することが求められていた。『PUBG』はPC版の配信当初から中国で絶大な支持を得ながらも、一方でその暴力性が危惧されてきた。『PUBG MOBILE』も政府からの認可も1年間降りないままだったが、マネタイズをするために、ついにその冠を諦め、暴力性を極力排除した別タイトルとして配信することとなった。ゲームライセンスは、中国共産党を称賛する内容のものが優先的に認可されているといい、中国空軍を讃える今回のコンセプトはそうした噂を裏付けている。

PC版はすでに中国で多くの人が遊んでいるほか、インドやネパールといった中央アジアでも大ヒットしている『PUBG MOBILE』。同作が形を変えて収益化を実現したことで、テンセント株も3.7%上昇し、投資家からも期待が寄せられている。中国でゲームを販売するためには、現地パートナーを用意するだけでなく、場合によってはゲームのテーマを変えることすら必要になる。あらためて中国ゲーム市場の難しさと特殊性が、浮き彫りになった事例だといえるだろう。

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