キュートでサイケデリックな2Dアクション『GoNNER』。首がもげても続くコンボ連鎖がプレイヤーを熱くさせる

 

ジャンプとガンアクションでコンボを重ねながら、プロシージャル生成されたダンジョンを切り抜けていく2Dアクション『GoNNER』が発売された。プレイヤーはアメーバのような生きものIkkとなり、クジラの友人Sallyへのプレゼントを探す旅へ出発。道中で出会う死神と商人の助けを得ながら、不気味な洞窟やロボットの世界を巡っていく。コンボを重ねてハイスコアを狙う爽快感と、少ないライフで一瞬の操作ミスが命取りとなる緊張感が合わさっており、“tough as hell” (死ぬほど難しい)と謳うだけあって高難度なアクションタイトルに仕上がっている。

ステージ構成や敵の配置は自動生成されるため、敵の行動パターンを覚えるだけでなく、咄嗟の判断力も試される。ミニマルなビジュアルデザイン、そして死と隣り合わせのなかでコンボをつなげていくゲームプレイは、昨年リリースされた『Downwell』を思い起こさせる。『Downwell』ではコンボをつなげるために止まることなくステージを落下し続ける必要があり、ガンブーツの独自の操作感に慣れる必要があった。その点『GoNNER』は横スクロールの2Dアクションであるほか、銃撃でもコンボが続くため、高難度ながら初見でも銃声と敵の破裂音が奏でるリズムを楽しむことができる。また、鮮やかなビジュアルがトライ&エラーによるストレスを緩和してくれる。

視覚と聴覚の両方で刺激されながらダンジョンの奥深くへと潜りこんでいく

 

手探りの状態からはじまる冒険

ゲームプレイの基本はジャンプ、2段ジャンプ、壁蹴りジャンプによるプラットフォームアクションと、さまざまな銃を操るガンアクションから成りたつ。操作方法や各種アイテムの効果については一切説明がないが、これは試行錯誤しながらゲームの仕様を紐どいていく「手探り感」を出すための演出。開発を担当したArt in Heartは、今後のアップデート時にもあえてパッチノートを公開せずプレイヤー自身に追加要素を探し出させる形式を検討しているほど、「手探り感」に対して強いこだわりをもっている。

操作キャラクターであるIkkはアメーバ状の生物であり、そのままでは攻撃手段がなく非力な存在だ。そのため、ダンジョンへ潜る前に「頭部パーツ」「バックパック」「武器」の3つの装備を装着することで準備を整えていく。はじめは1種類ずつしか用意されていないが、ダンジョン内で新しいアイテムを見つけるたびにラインナップが増えていく。「頭部パーツ」は種類によって追加で得られるライフ数や特殊効果がことなる。「バックパック」にはそれぞれ固有の特殊スキルが備わっており、数秒間のクールダウンはあるものの、銃の連射や爆撃が可能となる。「武器」にはオーソドックスなライフルやショットガンからレーザーガンまで、さまざまな種類が用意されている。各装備を組み替えることで、遠距離からじりじり攻めていくスタイルや、ステージ上を飛び跳ねながらショットガンを乱射するアクロバティックなプレイなど、自由にプレイスタイルを構築することが可能。いろいろと試しながら自分に合った組み合わせを探し出すのも楽しみ方のひとつだ。

身につける装備を決めたらいよいよ攻略に挑戦だ。1つのエリアにつき4ステージまであり、各エリアの最深部ではボスが待ち構えている。トライ&エラーで確実に先へと進めるような難易度設定となっており、ボスも初見では苦戦するが、パターンを覚えてしまえばあっさり倒せるだろう。ライフが満タンのままノーダメージでボスを倒せば、クジラのSallyから素敵なプレゼントがもらえる。

なお操作キャラクターのIkkは敵の攻撃を受けると首がもげ、装備がバラバラに飛んでいってしまう。首がもげた状態で攻撃を受けると即死なので、落ち着いて頭と装備を回収する必要がある。死んでゲームオーバーになればスタート地点からやり直しだが、一度見つけたアイテムは初期装備を選択する死神部屋のラインナップに追加される。より強力な装備品を身につけることで次の攻略が楽になるというわけだ。

Ikkの友人であるクジラのSally
Ikkの友人であるクジラのSally

 

コンボ継続でハイスコアを狙う、スピーディな展開

攻略のキーとなるのが本作のコンボシステム。踏みつけるか、銃弾を当てることで敵を倒しつづけ、連鎖をつなげていく。本作では同時に持てる弾数には限りがあるが、コンボが長引くほど敵の弾薬ドロップ率が高まる。また、5コンボごとに古代文字が刻まれたルーン石のようなものを獲得する。このルーン石は通貨の役割をはたし、商人とアイテム交換できる。本作はゆっくりと慎重にプレイすることも可能だが、それだと弾薬やルーン石が不足しがち。ハードな後半戦を持ちこたえるためには、コンボを途絶えさせないスピーディーなプレイスタイルが求められる。

うまくコンボを稼いでルーン石を集めていれば、ボス戦前の商人部屋でライフや弾薬を補充したり、ボスと相性のよい武器を購入して万全の状態で挑むことができる。ルーン石は死亡時のコンティニュー代としても消費されるため、むやみにアイテムを購入していると復活できなくなる。ルーン石が足らなければゲームオーバーとなり、最初からやり直し。先のエリアに進むほどコンティニューに必要なルーン石の数が増えていくため、後半戦まで消費せず残しておくのも手だ。

ゲームオーバーを繰り返しながら、敵の攻撃パターンやコンボのコツを覚えていくことで、ダンジョン制覇に近づいていく。エリアの数は全部で4つと少ないため、上手いプレイヤーなら数時間でクリアできてしまうだろう。クリア後には、隠し要素やマルチエンドを探す楽しみが残されているほか、コンボを極めてリーダーボードで他のプレイヤーとスコア/クリア時間を競い合うことができる。

撃って倒すか、踏んで倒すかの見極めが大事
撃って倒すか、踏んで倒すかの見極めが大事

 

コンボに酔いしれサイケデリックな世界へ

本作の操作キャラクターやモンスターは鮮やかな蛍光色のパレットで描かれており、黒の背景によく映える。全体的に丸みをおびたキャラクターデザインは絵本のようで可愛らしい。ミニマルなデザインではあるが、敵は赤、味方は青系のカラーで統一されているため、大量の敵に囲まれても操作キャラクターを見失わずにすむ。なお、コンボが一定回数継続するとネオングリーンとピンクのパレットに切り替わり、絵本の世界からサイケデリックな世界に豹変する。コンボの継続はビジュアルだけでなく音楽にも作用し、落ち着いたトーンから徐々にテンポアップしていくことで疾走感を助長する。

死神の部屋はダンジョン内とは対照的なモノクロ絵で描かれており、ほのかな不気味さが漂う
死神の部屋はダンジョン内とは対照的なモノクロ絵で描かれており、ほのかな不気味さが漂う

装備品の種類には限りがあるため、一通りそろえてしまえば操作キャラクターの成長は止まる。本作はプレイヤースキルの成長に重きを置いたアーケードゲームのような作風のため、操作キャラクターが成長し続けるRPG要素を求める方には飽きの訪れが早いだろう。新アイテムやスキルが次々とアンロックされていく『The Binding of Isaac』や『Enter the Gungeon』と比較すると、プレイスタイルの幅という意味でのリプレイ性は低い。また、操作方法やアイテムの効果を教えてくれない点も、好みが分かれる。筆者はアイテムの効果を探ること自体が謎解きのようで楽しめたが、時間の浪費だと感じる方もいるだろう。いずれも意図的なゲーム設計であるため欠点とはいえないが、プレイヤーを選ぶ作風だ。なお、本作はコントローラとキーボードの両方に対応しているが、本稿執筆時点ではリバインドできない。WASDではなく矢印キーでの移動に慣れていない方にはコントローラ操作をおすすめする。

リプレイ性が低いといっても、本作の販売価格は980円。ときにかわいらしく、ときにサイケデリックな画風と、歯ごたえのある2Dアクションがコンパクトにおさまっており、ミニマルながら刺激の強い体験が待っている。手探りの中での発見を楽しむゲーム性に戸惑うかもしれないが、高難度のなかでコンボを重ねるゲームプレイと、アドレナリンの放出を促進する映像/音楽演出による相乗効果は一見の価値がある。

GoNNER』はPC/Mac/Linux向けに、Steam/GOG/Humble Store/Green Man Gamingにて発売中。今後のアップデートではコンボ時のビジュアルに過激さが増し、新たな隠し要素が追加されるということで、さらなる進化が期待できそうだ。


元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)