『ファイアーエムブレム 風花雪月』第二弾DLCの“雰囲気に合わない”新衣装が笑いを誘う。シリアスな学園生活がスポ根ものに


任天堂は9月11日、『ファイアーエムブレム 風花雪月』向け追加コンテンツ第二弾を配信開始した。同作の追加コンテンツは「エキスパンション・パス」を購入することで、4回に分けて受け取ることが可能。今回配信された追加コンテンツ第二弾では、新たな衣装とフリー戦闘マップ。さらフリー戦闘BGMに、サポートアイテムが受け取れる。あわせて実施された無料アップデートでは難易度「ルナティック」が追加されている。某敵も暴れまわるという凶悪難易度をプレイしたユーザーから悲鳴が上がる中、コミカルすぎる新規衣装が国内外で話題を呼んでおり、Kotakuなどが報じている。なお本稿においては、極力物語やキャラクターのネタバレに関する描写は控えているが、注意して読み進めてほしい。

 

https://www.youtube.com/watch?v=dqS2IEj5rEM

まず前知識として『ファイアーエムブレム 風花雪月』は、非常に重い作品であることを認識する必要がある。プレイヤーは士官学校の教師となり、3つの学級からひとつを選び生徒達を導いていく。学校生活の中でさまざまな生徒と関わるわけだが、彼らはそれぞれ異なる境遇を持つ。成長し年をとれば、たとえば領家の跡取りであったり、もしくは許婚のもとに嫁ぐといった“逃れづらい境遇”に直面する。学園生活を共に過ごす生徒たちは、学生時代こそは同じ目標を掲げていたが、成長すればそれぞれ立場も守るべきものも異なってくるのだ。複雑な出自を持ち、内面まで掘り下げられた「意思を持つ」キャラクターたちが、境遇や立場に翻弄され苦しんでいく姿が濃厚に描写される。『ファイアーエムブレム 風花雪月』はそんな重苦しい作品なのだ。

物語が重いことに加えてルナティック導入により難易度も重くなった同作であるが、今回追加された衣装だけがそうした重さを感じさせないとし、そのギャップが話題になっている。追加された衣装は、主人公と生徒に着せることができる「訓練服」。着せてみるとわかるが、つまるところスポーツウェアである。クラスによってデザインはそれぞれ異なり、エーデルガルド率いるアドラークラッセは、赤色のウェア。ディミトリ率いるルーヴェンクラッセは青色のウェア。クロード率いるヒルシュクラッセの生徒は緑色のウェアを着用する。

https://twitter.com/Yusunachan/status/1171729652060229633

バスケットボール向けにも、バレー向けにも、もしくはサッカー向けにも見える衣装。学生生活を楽しむにおいては適した服装であるが、前述したように本作は重々しい作品。多くのプレイヤーが、生徒達が苦しむ姿を見ながら戦場を共にし、もしくはクリアしている。発売から1か月半が経過し、コミュニティが苦しみや葛藤を共有し合う中、突如として現れた雰囲気に合わないスポーツウェアの登場がいじられているわけだ。たとえば海外Twitterでは、数々のキャラクターが“スポ根”にされており、その中で友情が芽生えるといった独自の設定が設けられている。

https://twitter.com/tyoriponzu/status/1171783430297702408

全体的に、男性キャラを“サッカー少年”にするといういじりが人気であるようだ。また本編では「濃密に」描写されるディミトリが標的になりがち。またこうした大会は、ゲーム内で実施される学園対抗戦に絡めてネタにされている。仲良く学園生活を過ごしているにも関わらず、境遇やすれ違いから対立してしまう。そんなキャラクター達の背景があるからこそ、スポーツで親交するという場面を描く二次創作が、どこか尊く思えてくるのかもしれない。開発に携わっているコーエーテクモゲームスの影響が強いという指摘も散見される。また同DLCにおいては主人公にメガネを装着することが可能となる。同要素については、“真面目に”好評だ。ギャップを狙ったのかそうではないかは不明であるが、新衣装はゲームに新たな風を吹き込んでいるといえるかもしれない。

https://twitter.com/robiinyan/status/1171620977584852992

https://charbartt.tumblr.com/post/187633512705/dlc-dlc-dlc

ちなみに、更新データVer1.0.2では英語版の男主人公ベレトの声優が差し替えられたことが発表されていたが、これは男主人公を演じた声優Chris Niosi氏のスキャンダルに関連したもの。Niosi氏は今年の7月に元恋人の告発されたことを受けて、人生の30年間の中における多くの時間を、友人や恋人、そして家族へのハラスメントに費やしてきたとTumblrで懺悔。その悪態は、肉体的・精神的両方によるものだったという。精神的に不安定で自殺を示唆するなどして、周囲の人々を傷つけてきたとも。具体的な名前を出し、個別に長文の謝罪投稿をしていたほか、Noisi氏は『オクトパストラベラー』ではテリオンを演じるなどキャリアある声優であっただけに、この自白(告発)は騒ぎとなった。

また謝罪投稿の中で氏は、元彼女に自身が『ファイアーエムブレム 風花雪月』のベレト役を務めると漏らし秘密保持契約を破っていたと告白。騒ぎそのものか秘密保持契約の違反が原因かは不明であるが、米任天堂は「現状を精査した上で、(ベレトが登場する)『ファイアーエムブレム ヒーローズ』と『ファイアーエムブレム 風花雪月』の声優を今後のアップデートで差し替えます」とNintendo World Reportに声明を出していた。『ファイアーエムブレム ヒーローズ』では迅速に差し替えがおこなわれていたが、『ファイアーエムブレム 風花雪月』でも今回のアップデートでその差し替えが実施された。そのほか、Redditではそのほかの女性キャラの声優も変わったのではないかと指摘されているが、パッチノートには記述されていないので憶測の域は出ない。日本語で遊ぶユーザーには関係のない話であるが、パッチノートに一文記載されているシンプルな変更にも、複雑な背景があるこということだろう。