今年のゲームの、恐ろしいトラウマ。AUTOMATONライター陣が打ち明ける、2025年の「ゲーミング・トラウマ大賞」

今年2025年を振り返る、AUTOMATONの年末企画第4弾。

今年2025年を振り返る、AUTOMATONの年末企画第4弾。悪意たっぷりなゲームから、ゲーム自体とはあまり関係のない恐ろしい体験まで。本記事では、弊誌ライター陣によるゲームにおける今年のトラウマエピソードを紹介していこう。つらい思い出は清算して、新年を迎えたい。


写真は「竜巻でふっ飛ばされた先がアリジゴクだった不幸な友人」

『PEAK』

開発元:Team PEAK
販売元:Aggro Crab/Landfall
対応機種:PC

2025年は協力プレイゲームの1年と言っても過言ではないほど協力プレイ作品が盛り上がりを見せた。筆者もその盛り上がりに完全に乗っかるようにさまざまな協力ゲームを貪り尽くした1年となった。その中でも特にお気に入りの作品が『PEAK』だ。本作はさまざまなバイオームの山を協力して登頂するゲーム。筆者は本作を「ベスト協力ゲーム」と位置付けると同時に大量のトラウマを植え付ける「トラウマメーカー」だと思っている。

本作はとにかく初見殺しの連続だ。毒入りかどうかは食べるまでわからない自生する木の実やキノコ。突如起こる大雨や大吹雪、竜巻などの自然ギミック。勢いだけじゃ絶対に登ることの出来ない入り組んだ山々。可愛らしいビジュアルとは裏腹に大自然に蹂躙されたかのような感覚まで覚えるほどの残酷な初見殺しの数々であり、嫌らしいギミックも多い。開発者にちょっと怒りすら覚えることもある。

さらに本作で特筆すべきは、「協力プレイゲーム」であることでそうしたトラウマを受ける他人の姿を目の当たりにできることだ。自分が受けると目を覆いたくなるような初見殺しだが、それに引っかかる仲間たちを見ると、めちゃくちゃ笑える。“性格の悪い笑い”がこみ上げてくる。

毒入りキノコを食べて苦しむ姿。吹雪に凍える姿。竜巻に吹き飛ばされて身体中サボテンの針だらけになる姿。他人事だと非常に滑稽であり、嫌らしいギミックをさまざま用意する開発者の気持ちも何となく想像できてしまう。何なら筆者はいつもギミックやトラップについてあえて黙りながら仲間に同行しているほど。やっぱり他人の大失敗を見るのは面白い。ただ他人を笑えば笑うほど、自分の失敗の不甲斐なさも際立ってくる。本作は開発者が用意した“悪意”を仲間たちに擦り付け合う恐ろしい構図のゲームだと、勝手に思っている。
by. Tamio Kimura


「せめてもの償い」

『ARC Raiders』

開発元:Embark Studios
販売元:NEXON
対応機種:PC/PS5/Xbox Series X|S

2025年に遊んだゲームでもっともトラウマを残した瞬間と聞かれたら、私は迷わず『ARC Raiders』を挙げる。本作では、ソロ出撃ならソロ同士、マルチ出撃ならチーム同士でマッチングする仕組みだ。私は普段、ソロで人の来ない場所をこそこそ巡り、ほかのプレイヤーを見かけても極力戦闘を避けるフレンドリープレイヤーである。その日も「軽くひと漁りするか」とソロで出撃すると、途中で同じようなフレンドリーなプレイヤーに遭遇した。彼はボイスチャットで漁りポイントを色々教えてくれ、私も知っている場所を紹介したりして、2人で楽しく徘徊していた。途中で大型ARCを協力して倒したり、貴重な物資を拾ったりと順調そのもの。そろそろ荷物もいっぱいになり、帰ろうということになった。

しかし、このゲームは最後まで気を抜いてはいけない。出口へ向かうと、そこにはなぜか大量のARCが待ち構えていた。仲間が撃たれて倒れ、私は慌ててスモークを焚いて応戦。敵の猛攻の中、ゴロゴロと転がりながら仲間の元へ向かい、なんとか蘇生して反撃を続け、どうにか殲滅に成功した。

――と思った次の瞬間、仲間の姿がない。さっき起こしたはずの場所には、なぜか彼の“死体”が転がっていた。最初は「間に合わなかったのか?」と思った。しかしすぐに悟った。本作では、マルチのチームメイト以外は通常の方法では蘇生できず、「蘇生装置」というアイテムが必要なのだ。では、私が先ほど行った行動は何だったのか。

そう、私は“蘇生した”のではなく、彼にトドメを刺していたのである。

頭が真っ白になり、その場でしばらく「どうしよう」と死体の周りをうろうろしたがどうしようもあるはずはない。どうせならという気持ちで彼の持ち物を漁ると、中にはレジェンダリーやエピックのアイテムが何個も入っていた。あの時手に入れた貴重な品々は、今でも私の保管庫に丁寧にしまってある。

それ以来、必要最低限の装備しか持たなかった私のバッグには、いつも「蘇生装置」が入っている。
by. Motoharu Ono


「AIも文句無しにリーチしろと言っている」

『雀魂』

開発元:Cat Food Studio
販売元:Yostar
対応機種:iOS/Android/Windows/ブラウザ

多くゲームをプレイするほど、とてつもない幸運に恵まれることもあれば、信じがたい不運に出くわすこともある。今年の私に訪れたトラウマ級の不運は『雀魂』での一幕だった。

麻雀とは簡単に言えば点の奪い合いだ。4人が同じ点を持った状態で始まり、ゲームごとに勝てば点を奪い取り、負ければ点を奪われる。その日、私は4人の中で2位の点数で最終ゲームであるオーラスへと進んだ。運が良ければ1位も狙えて、4位とはかなりの点差がある。普通は4位になるなど考えられない状況だ。

そんな中、私は運に恵まれた。わずか5回目の手番で、アガリの一歩手前であるテンパイとなったのだ。諸説あるものの平均的には10回目くらいでそうなることが多いから、かなり順調に手牌が揃っていたといえる。

ここで私はリーチを宣言した。これは手持ちの形を変更できなくなり、自分がテンパイであると知らせるデメリットと引き換えに、アガった際に獲得できる点数を上げる効果を持つ。当然、他プレイヤーは警戒するが、この場面では1位と3位に守りに入ってもらえば、あとは自分が最後の1枚を引いてしまえば2位以上確定だ。要するにプレッシャーをかける意味もある。やらない理由はない。試合後に麻雀AI「Mortal」による検討もおこなったが、文句無しでリーチを推奨されていた。

……が、そこで運は尽きた。最後の1枚が来ないのだ。目当ての牌を引けないし、他プレイヤーも出さない状況が続く。そして迎えたラスト1周。私の前のプレイヤーがチーを宣言し、本来そのプレイヤーが引くはずだった牌がずれ込んで私の手元にやってくる。掴んだのは赤ドラの五索、4位のプレイヤーが一縷の望みを賭けて待っていた最後の1枚だった。ついでにゲーム終了の最後の手番で完成したときのボーナスも乗るおまけ付き。リーチを宣言している手前捨てるしかない。こんなことがあるのかという絶望的な点数移動を、私は眺めているしかなかった。

最後の最後に、相手にとってこれしかないタイミングで全136牌の中から絶対に引いてはいけない牌を引き、私は4位に転落したわけだ。糸ほどに細い偶然の先に待っていた敗北。麻雀を続けてきた中でも屈指の大敗だ。“オーラスの魔物”の前では何者も等しく無力であると思い知った、忘れられない試合となった。
by. Naoto Morooka


「え!!2026年にチャプター5を!?」

『DELTARUNE』

開発元:Toby Fox
販売元:ハチノヨン(国内)
対応機種:PC/PS4/PS5/Nintendo Switch/Nintendo Switch 2

筆者が『UNDERTALE』を楽しみ、考察や小ネタ動画にハマっていた2018年ごろ。あのToby Foxの新作、それも世界観が繋がっている『DELTARUNE』のチャプター1が公開された。そんなもの、面白いに決まっている。

だが、チャプター1を遊んでしまった日には、ストーリーの続きが気になって眠れなくなり、毎日の食事の味も忘れてしまうに違いない。そう思った筆者は、チャプター1の公開以来『DELTARUNE』に関するあらゆる情報を断ってきた。2021年にチャプター2が公開され大絶賛を得ても、「私は3年間苦しまずに済んだぞ」と自分に言い聞かせダメージを回避した。

そして、待ちに待った2025年6月5日。『DELTARUNE』がチャプター3と4を収録して有料版としてリリースされた。ネタバレのため詳細は伏せるが、世界の奥深さとキャラクターの魅力は前評判通りの素晴らしいものだった。じっくり1か月かけてクリアし、エンドロール後にチャプター5の予告が出現。わくわくするなあ!

「To be continued in Chapter 5  2026」

一瞬にして、全身の力が抜けるのを感じた。

筆者は勝手に楽観視していたのだ。チャプター5が後日配信されるとはいえ、おそらく年内ではないかと。もし配信時期が告知されるとしても、せいぜい「2025 Winter」だろうと。チャプター4までと承知の上でプレイし、そう苦しまずに待てる期間だろうと高をくくっていた。

ところが、発表は時期未定の「2026年」。同じ2026年でも1月と12月では、待つ期間はかなり変わる。チャプター6以降に至っては、いつになるか分からない。そこから数日間、筆者は放心状態だった。チャプター1の公開から7年。我慢に我慢を重ねてやっとの思いでプレイをしたのに、年単位で悶々と考察を続ける日々からはとうとう逃れることができなかったのだ。

でもいい。チャプター4までの完成度は、期待に違わず非常に高いものだった。早めに遊んで、ネタバレの懸念を解消できてよかったとも思う。これからもToby Fox氏を信じていくらでもチャプター5を待とうではないか……。
by. Rikuya Melichar


「くだらないミスで無駄に時間が溶けまくり」

『アークナイツ』
開発元:Hypergryph
運営元:Yostar(グローバル版)
対応機種:iOS/Android

今年は何度もプレイを繰り返すゲーム……たとえばローグライトジャンルのようなゲームにハマった1年であった。同時に、プレイミスで何度もプレイ時間が犠牲になった1年でもあった。この事例として代表的なものが、『アークナイツ』の高難易度ローグライトモード「統合戦略」である。このモードはステージの攻略を通じて、ランダムでキャラクターやバフアイテムを選択することを繰り返し、編成を充実させながらラスボスの打倒を目指すというコンテンツだ。

当時、筆者はこのモードにおける最高難度のラスボス打倒を目指していた。40分かけて。この「統合戦略」というゲームモードにはラスボスが弱いものから強いものまで複数体用意されており、今年実装された最強のラスボスは文字通り1ミスで負けるほどの強さを誇る。ここまで何度も負けを繰り返し、攻略方法を学習。バフアイテムの上振れと十全な編成を確保。これなら勝てる。間違いない。往くぞッ!ゲームがクラッシュ!!負けたッ!!!ラスボス戦は演出が凄まじいため、クラッシュ対策でゲームを毎回再起動していた。それを怠ったのが敗因だった。気づいたら窓の外は夕暮れ。肩こりが酷い。はぁ、俺の40分を返してくれ……。

筆者はこの経験がトラウマとなり、スマートフォンを買い替える運びとなったが、悲劇は『アークナイツ』に終わらなかった。『ELDEN RING NIGHTREIGN』ではボス前に落下死してレベルが低下してしまったり、『Hades 2』ではビルドの強さにかまけてゴリ押しした結果、体力管理がおざなりになって返り討ちにあったり。くだらないミスで時間を溶かした事例はこの他にもいろいろあった。思い出したくもない。筆者は対戦ゲームで負けてもゲームに対してブチギレることは殆どないが、繰り返しプレイを前提とする作品に対しては何故か感情的になってしまう。それでも強烈にハマってしまう。不思議なものである。今もこうして『アークナイツ』の最新ローグライトコンテンツをプレイしているのだから。
by. Takayuki Sawahata


「怪異を解き明かすと見えてくるのは、人の心の闇」

『都市伝説解体センター』
開発元:墓場文庫
販売元:集英社ゲームズ
対応機種:PC/Nintendo Switch/PS5

虫よりもお化けよりも怖いのは生身の人間。筆者はずっとそう考えているので、ホラーゲームをプレイしても「でも生きてる人間の悪意の方がずっと怖いし」と冷静になってしまう。しかし、だからこそ今年は『都市伝説解体センター』が怖かった。

本作は、SNSで都市伝説の噂の出どころを探って、現地にも調査に赴き事件のあらましを紐解いていく探偵ゲームなのだが、ゲーム内のSNSの書き込みがあまりにもリアルさに満ちているのだ。軽い憶測も一定数集まれば、誰かにとっての暴力になりうる。それを的確に生々しく表現していて「実は誰かの実体験ではないか」と思うことしきりだった。

というのも、筆者自身がSNSを利用する中でそういう体験をよくしてきた。サークルで仲良くつるんでいるように見えるメンバーの裏日記サイトを見つけたら相方への呪詛が繰り返し綴られていた。複数のアカウントを使い分けて表で媚びて裏では同じ相手への愚痴を書く知人。掲示板で荒らしやってるんだ~となかば誇らしげにカミングアウトする知人。掲示板で自分の悪評を一生懸命広めている人が直接の知り合いだった――すべて実体験だ。無害そうな知人がネットでは悪意や害意を突如剥き出しにし悪びれもしないのを、間近で何度も見た。なぜインターネットが間に挟まるだけで……。本作はこういう思い出をフラッシュバックさせる。

悪意なく無邪気に人を傷つける発言も多いのがインターネットだが、厄介なことに当人なりの正義や大義を盾に自己の正当性を信じている場合もある。そんなテーマが織り込まれたストーリーから、生きてる人間の、なんなら身近にいた人間の恐ろしさが改めて身に染みるゲームであった。
by. Kei Aiuchi


「ちなみにちゃんとアバターは買いました」

『VRChat』
開発元・販売元:VRChat Inc.
対応機種:PC/Meta Quest/PICO/iOS/Android

『VRChat』には「謎解きワールド」という一大ジャンルが存在する。自分はあらゆるゲームのキャラメイクを20秒以内に終わらせる悪癖があり、初期アバター、あるいはプリセット以外のものを選ぶことは皆無に等しい。そんな奴が『VRChat』で一体何をするのだと思われがちなのだが、日夜Steamのパズルゲームをこれでもかと舐め回している身からすると『VRChat』はこの謎解きワールドというのが実に最高なのである。パズルゲームや(リアル)脱出ゲームが無料でいつでも無限に遊べるようなものだ。中でもcompetor氏による「Word Sculpture Museum」(単語彫刻美術館)というワールドが大のお気に入りであるので、この場を借りて紹介したい。同時に、単問単位で見て今年もっとも苦戦したパズルのうちのひとつも、このワールドに由来するものだという話もしよう。

単語彫刻美術館は単純に言えば「館内に設置されているオブジェを見て、それが表す英単語を答える」というパズルワールドである。このワールドは作者であるcompetor氏による厳密な「パズルかくあるべし」という信念のもと制作されており、「アルファベットの形と順番以外の一切の事前知識を必要としない」という厳しいルールが存在する。答えが実在する英単語である以上英語の知識が有利に働く場面は多々あるが、基本的には閃き一本勝負の問題が多く、どれも実に苦しく美しい。そして添付のスクリーンショットは本館と別館、計100問のパズルの中で筆者がもっとも苦戦した問題である。なお題名として見た目から勝手に「タンパク質の分解」と名付けていた。このパズルではこの黄色い立方体の乱雑な集合体が特定の英単語を表しており、しかも回答に一切の事前知識は必要ないというのだ。意味が分からないと思うだろうが、実際に意味が分からなかった。夢にまで出てくるのではないかというくらい苦戦したのだが、ある時突然「降りてきた」。あの衝撃は筆舌に尽くしがたい。頭がおかしくなるかと思うくらい悩んだが、パズルというのは解けるとその分気持ちよくなれるものだ。個人的に『VRChat』屈指のクオリティを誇るワールドなので、ぜひ自分でも味わいに行ってほしい。
by. Mizuki Kashiwagi


絶望を焚べよ

『エルデンリング ナイトレイン』
開発元・販売元:フロム・ソフトウェア
対応機種:PC/PS5/PS4/Xbox One/Xbox Series X|S

今年リリースされた『エルデンリング ナイトレイン』は、これまでソウルシリーズのマルチプレイには及び腰であった筆者が自分でも意外なほどのめり込む作品となった。そしてその弊害としてゲームとは別の部分で「大きな絶望」を感じることになってしまったので、ここで“悔い納め”したい。

『エルデンリング ナイトレイン』の長所であり短所でもある点は、「1セッションの時間が長い」点だ。ソウルシリーズの持ち味である手強いステージ攻略とボス戦が濃縮された体験ができる一方で、プレイ中は約35~45分ほどモニターから離れられない。たとえば一般的なFPSのマルチプレイの試合であれば数分、伸びても約20分程度と思うと長い拘束時間である。

ところで筆者は、腹が弱い。特に、季節の変わり目には症状が激しくなるケースが多い。そしてそれは、調律の魔物「リブラ」を目指している最中に起こった。2日目が始まった直後、下腹部に違和感を覚えたのだ。嫌な予感を覚えたが、仲間には迷惑を掛けられない。本作で途中抜けした場合、プレイヤーの“再補充”は無く、味方に大きな負担を押し付けてしまう。

気合を入れつつプレイを続行したが、予感は現実になった。「リブラ」戦に入る直前に違和感が確信に変わったのだ。実質、ボスがもう一体増えたような状態、二正面作戦である。しかも、お腹については仲間の援護も期待できない。負ければ尊厳にかかわる戦いが開幕だ。

……お見苦しいので、その後の仔細については省略させて頂くが、結論を言うと、筆者はなんとか両方の戦いに“勝利”することができた。ただ倒し終わったころには、コントローラーが冷や汗で包まれていたことだけはお伝えしておく。

ゲームとは娯楽であり、楽しみである。本来筆者のように歯ごたえある難易度以外で苦しむ必要はなく、体調を最優先にすべきだ。本稿は12月前半に執筆しているが、記事が公開される頃には更に冷え込んでいるはず。皆様は、体調を万全にして良きゲームライフを楽しんでいただきたい。
by. Satofumi Inoue


「りょ、りょ、りょ、呂布だ~っ!」

『真・三國無双 ORIGINS』
開発元/販売元:コーエーテクモゲームス
対応機種::PC/PS5/Xbox Series X|S(Nintendo Switch 2版が2026年1月22日発売予定)

リブート作品として回帰を果たした『真・三國無双 ORIGINS』。それは同シリーズでお馴染みの「彼」も回帰を果たしたことを意味する。呂布だ。呂布と言えば、「三国志演義」にて最強の人物として「人中に呂布あり」とも称されるほど。その迫力は過去のシリーズ作品においても遺憾なく発揮されてきた。とはいえ死にかけの武将を必死に走らせ、肉まんを探したのも今は昔。近年では士気によって味方も強くなり、ある程度与しやすかった。

ところが、『ORIGINS』では違った。昨年11月の体験版では「特別版」の呂布であり、新システムにも不慣れで強い印象がついているだけ。製品版ではそれほどではないだろう、と高をくくっていたのも良くなかった。虎牢関の戦いでは誇張なしに戦況を一人でひっくり返し、下手に止めようとすればこちらの命が危うい。さらに呂布との決戦となる下邳の戦いでは、その容赦なさに磨きがかかる。

呂布が待ち構えるフィールドでは赤兎馬がまず雑兵をなぎ倒していく。呂布を馬から引きずり下ろしたところで、空中から突進、地上では弓の連撃、地面を叩けば全方位に波動を飛ばす。挙句の果てには格闘ゲームの“コマンド投げ”かと勘違いするほどの痛烈な投げをお見舞いしてくる。気づけば味方の武将も敗走し、1対1になっている。幸い本作にはジャスト回避や弾き返しもあるものの、一度攻撃を食らえば数割の体力とのトレードは覚悟せねばならない。手持ちの肉まんが尽きれば、ステージの隅に駆けていき肉まんを探す、まるで“あの頃”のような光景が繰り広げられる。再戦の仕様により、ある程度の体力割合からやり直せるのは嬉しいが、その仕様に喜ぶということは、つまりそれは何度も呂布に倒されている、ということでもある。

そして何より許せないのは最後の最後で外功を削らせる「DPSチェック」を仕掛けてくること。もう、いいじゃないか、1ミリもない体力のお前を殴っているんだから、倒れてくれたって……。
by. Kosuke Takenaka


「撃てば楽になるのに」

『ARC Raiders』

開発元:Embark Studios
販売元:NEXON
対応機種:PC/PS5/Xbox Series X|S

今年、ゲームで“もっとも腹が立った出来事”は『ARC Raiders』にて起こった。脱出地点でエレベーターを待っていると、見知らぬプレイヤーが近づいてくる。「撃たないで!」のエモートを用いたところ、それを飲んでくれたようだ。相手に背を向けて小型の敵NPCと戦闘したが、見守ってくれていた。そんな相手に気を許していざエレベーターパネルを操作し始めたところ、そのプレイヤーは突如牙をむいた。レアな物資を手に入れていたが、おじゃんである。後にして思えば相手はエモートに返事をしていなかった。嘘はついていない、ということだろうか。

ここで終われば、今年ゲームでもっとも腹が立った出来事どまりだろう。しかしその直後のマッチでは、親切にもレアなアイテムをお裾分けしてくるプレイヤーに出会った。やはりさっきのプレイヤーはイレギュラーなのだ……そう思っていると、今度は別のマッチで「撃たないで!」と言い合ったプレイヤーに背を向けた途端に殺されてしまった。

そんな経験を繰り返している筆者には、いまだに戦闘開始時に心理的なハードルがある。戦わずに済む場面もあり、敵NPCを引き寄せるリスクを考えれば先に引き金を引くことが必ずしも得になるとは限らない。何よりも見知らぬ人と仲良くできたときには、心が温まる。

しかし1対1の戦闘だけを見れば先に撃ち始めた方が有利だ。呑気に背を向けず戦っていれば、クエスト用の物資を失ってまた探し回る羽目にはならなかったかもしれない。自分の油断にも腹が立つと同時に、徐々に暴力の連鎖に引き込まれていく心中に恐ろしさも感じる。

そうした葛藤は「囚人のジレンマ」にも似ており、本作の大きな魅力、かつ恐ろしさにもなっている。もちろん本作はゲームだから気軽にPvPをし続けてもいい。しかし筆者はどうしても“戦いたくないけど戦いたい”ジレンマを抱き続けてしまう。やられるたびに戦いの誘惑がどす黒く広がる体験に、得も言われぬ恐怖があった。
by. Hideaki Fujiwara


「オレんちの玄関にもヒントが……?」

『Blue Prince』
開発元:Dogubomb
販売元:Raw Fury
対応機種:PC/PS5/Xbox Series X|S

世界は謎に満ち溢れている。『Blue Prince』は謎に満ち溢れた屋敷を探索するゲームだ。ジャンルとしては「ローグライト・ミステリー・パズル」とでも呼べるだろうか。本作ではとにかく謎が多く、謎が謎を呼び、解法の鍵となるヒントは至る所にある。彫像の数・絵画の内容・隠されたメモなど、何気ない部屋の装飾まで丹念に調べなければならない。

本作では自分が屋敷内の部屋の構造を操作する。ドアを開くごとにランダムに選ばれた部屋が提示され、望む部屋を選び取って屋敷の奥へと進んでいく。屋敷の構造は毎日リセットされ、探索を効率的に進めるためには慎重に屋敷を“設計”していく必要があるのだ。

そしてたちの悪いことに、本作では特定の部屋のパズルのヒントが、同じ部屋の中にあるとは限らない。その結果陥るのは、「強烈な疑心暗鬼」である。ありとあらゆる部屋で大量のスクリーンショットを撮り、デジタルなり物理なりのメモ帳に書き込んで、役に立つかどうかもわからない情報を蓄えていく。多分こんなにメモらなくていい。それでもヒントかもしれないと思うと、スルーするのが怖くて怖くてたまらないのだ。

やがて、何もかもがヒントに見えてくる。筆者はハマりすぎてちょっとおかしくなっていたようで、ゲーム内のみならず現実の街にあるちょっと気になる装飾や、モノの配置までヒントに見えてきた。極めつけに、家から出る際に「あれ、玄関の靴の配置が変わってる……?覚えとこ」と咄嗟に写真を撮った時、さすがにまずいと思いしばらくプレイを休んだ。今も、ネイルが1枚だけ剥がれた自分の指先がなにかのヒントに見えているが、幸い今は現実とゲームの区別はついている。とてもいいゲームなので、遊んでみてほしい。
by. Sayoko Narita


「39度の熱がでたんだが」

『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』
開発元:Tookyo Games
販売元:アニプレックス
対応機種:PC/Nintendo Switch

ゲームをしていて熱を患ったのは、初めてである。『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』をプレイ中のことだ。熱を患うというと、きわめて熱中していた……という解釈ができるかもしれない。それは半分正解で、半分間違いだ。自分は、『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』をプレイして、本当に熱を出したからだ。

本作については弊社アクティブゲーミングメディアが翻訳やデバッグのお手伝いをしていたということもあり、自分としては発売前のレビューも気合を入れていた。ローカライズ現場からも面白いという絶賛の声を聞いていたのもあり、楽しみであった。で、発売前から『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』をプレイしていた。していたのだが。このゲーム、とにかく内容が濃いし、長いのである。謎が謎を呼ぶし、情報量が多い。しかも終わらない。熱中しているのだが早く終わらせないといけないという焦りもあり、会社から帰った後もプレイ。土日もずっとプレイ。するとやりすぎて、39度の熱が出た。体調管理はしていたので、どう考えても『HUNDRED LINE -最終防衛学園-』のせいなのである。

エンディングが100あるわけで、見ても見ても終わらない。ずっと情報量が多い。熱自体は土曜日に出て日曜に寝て治したのだが、3~4月はずっと知恵熱状態であった。まごうことなきトラウマのひとつ。しかしながら、ゲームで熱を患うなんてそうそうない。あんな思い二度としたくないという気持ちと、もう一度それほど体調を崩したいという気持ちの両方が、自分の中で渦巻いている。
by. Ayuo Kawase

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