Ninja Theoryが新作『Project: Mara』のアート制作の裏側を解説。リアルな表現への異常なまでのこだわりを語る

 

マイクロソフト傘下のデベロッパーNinja Theoryは1月19日、現在開発中の作品の制作背景を紹介する映像シリーズ「The Dreadnought Diaries」の第3弾を公開。同スタジオのチーフクリエイティブTameem Antoniades氏が、『Project: Mara』のアート制作について解説している。
 

*2020年1月に公開された『Project: Mara』のティザー映像

 
Ninja Theoryは、『Heavenly Sword』や『DmC Devil May Cry』などで知られるデベロッパーで、現在は『Hellblade: Senua’s Sacrifice』の続編である『Senua’s Saga: Hellblade II』を手がける傍ら、実験的作品として『Project: Mara』にも取り組んでいる。

『Project: Mara』は、人が心に抱える精神的な恐怖を、実際の体験談や綿密な調査に基づいて、現実世界の中に説得力ある表現で描く作品だとされている。Ninja Theoryは、本作を通じて新たなストーリーテリングの手法を模索しているという。どのようなゲームになるのか、まだ多くは明かされていないが、昨年公開された上のティザー映像ではとある施設内が登場。実はこれはゲームエンジン上の映像であり、非常にリアルな描写である。今回公開された映像では、そうした現実世界の表現を取り込む手法について解説している。
 

 
本作は実在するとあるアパートを舞台にしており、Ninja Theoryのアートチームは、ゲーム内にそのアパートを丸ごと完璧に再現することを目指しているという。そのためには、まずアパート内に存在するあらゆる素材のサンプルを集めてスキャンすることから始めたそうだ。

映像では、革のサンプルにさまざまな角度から照明を当てて撮影し、ゲーム内で使用できるように加工している。また、素材によって異なるディテール再現するシェーダーも開発し、近くに寄ると細かな傷の凹凸や汚れ、繊維などが見えてくる。リアルな見た目のテクスチャを貼っただけの平面ではないということだろう。

アパートの間取りの再現に関しては、メジャーで寸法を測るだけではディテールを捉えるには十分ではないとして、複数の手法を組み合わせている。そのひとつには3Dスキャンがあり、専門業者であるClear Angle Studiosと協力。LiDARスキャナを使いまる1日かけてアパート内をすべて3Dスキャンし、満足いくディテールを持つデータを得られたとのことだ。
 

 
本作でのリアルな表現へのこだわりは、細かな糸くずなど微細な床のゴミにまで至る。これは手作業で配置することは不可能なため、Houdiniなどのソフトウェアを活用して独自のツールを開発し、プロシージャルな手法を用いて実現しているという。映像ではほかに、シンク周りに飛び散った水などをツールによって細かく調整している様子も見られる。

Ninja Theoryではこうした開発作業を通じて、アーティストは単にオブジェクトを作るのではなく、オブジェクトを作るためのシステムから構築するよう、アート制作への取り組みが変化してきたそうだ。これによって、オブジェクトのあらゆるバリエーションを生み出すことができる。そうした開発文化は『Project: Mara』だけでなく、同スタジオのほかの作品にも活かされていくだろうとしている。
 

 
Tameem Antoniades氏は『Project: Mara』について、プレイヤーがゲームや映画であると感じるものではなく、現実であると信じ込むような、これまでとはまったく異なる表現を目指していると語る。プレイヤーは、そうした感覚を麻痺させる奇妙さや恐怖と共に、Maraと呼ばれる人物が暮らす世界を体験することになるそうだ。

『Project: Mara』の発売時期は未定。対応プラットフォームもまだ明かされていないが、映像が公開されたYouTubeの概要欄には「#Xbox」というタグがつけられているため、少なくともXbox Series X|S向けに発売される可能性がありそうだ。