Nintendo Switch向け『泥棒シミュレーター』は同機種だけで「70万本」売っていた。推測されるからくりとは


パブリッシャーForever Entertainmentは12月14日、『泥棒シミュレーター』Nintendo Switch版の売上が70万本を突破したと発表した。同機種のみでの数字という。Steamで発売され、そのテーマだけでなく内容についても評価された作品。Nintendo Switch向けにも移植されたが、なんと任天堂プラットフォームで大きく売上を伸ばしていたようだ。


『泥棒シミュレーター』は、一人称視点のステルスゲームだ。Nintendo Switch向けには海外では2019年4月に発売された。国内でも12月に入り、『スィーフシミュレーター』というやたらと発音のいいタイトルとしてリリース。その後『泥棒シミュレーター』に改題され、一部で話題を呼んだ。

プレイヤーは泥棒となり、近隣の住宅街を自由に歩き回って窃盗を働くことができる。盗みを成功させるには相応の準備が必要だ。ターゲットとなる家に目星をつけたら、住民の生活スケジュールやセキュリティ状況などを綿密に観察。人がいなくなる時間を見計って作戦決行する。忍び込んだ住宅内でなるべく価値のある物品を収集するのだ。持てる量には限りがあるため、瞬時に金目のものを見分ける判断力も重要だ。無事に獲得した盗品を売り払えば、利益を使ってより高度な窃盗ツールを購入することができる。お金を稼ぎ新たな盗みのスキルを習得しながら、大泥棒を目指していこう。


『泥棒シミュレーター』はSteamでも8600件ものレビューがついており、ヒットタイトルとも言える作品。しかしながら、70万本というのも相当な数字である。Forever Entertainmentは、今年9月下旬には60万本突破を報告しており、3か月で10万本を積み上げたようだ。ではどのように売上を積み上げたのだろうか。

実は『泥棒シミュレーター』は、派手な投げ売りがされている。Nintendo Switchタイトルの価格推移を調査するサイトeShop Priceによると、現在同作は海外向けには格安セールを展開していることがわかる。たとえばアメリカ向けには90%オフの1.99ドル(200円)で販売中。カナダ向けにも90%オフの格安価格にて販売中。ヨーロッパ向けにも、大幅割引セールを度々展開しているようだ。大規模なセールをすることで、お得感を出し数を増やす。その結果、ランキング上位に顔を出し露出が増え、売上を伸ばした形だろう。


一方で、GoNintendoは9月から12月までに売上を伸ばした理由として、日本でのリリースをあげている。12月頭に『スィーフ シミュレーター』として発売され、日本でも好調なのではないかという推測である。日本ではリリースしたばかりということもあり、大規模なセールは展開されていない。10%オフの1800円で販売されているのみだ。にもかかわらず、ニンテンドーeショップのダウンロードランキングには顔を出しており、12月15日16時現在27位にランクインしている。少なくとも日本では、値引きなしでちょっとしたヒットにはなっているようだ。国内では一年前から加藤純一氏や牛沢氏など有名インフルエンサーが同作に実況動画があげており、売上に好影響が出ているのかもしれない。

なお『泥棒シミュレーター』はCEROではなくIARCレーティングにてリリースされたタイトルだ。任天堂は今年の夏からIARCレーティングを解禁(関連記事)。ダウンロード版ならCEROの審査は必ずしも必要ではなくなり、Nintendo Switchタイトルのリリースにおける間口が広げられている。同作はそうして広げられた間口のおかげでリリースすることを果たした作品である。

なお今作のIARCレーティングは3歳以上(3+)


安売りによる露出を狙うやり方は賛否あるかと思われるが、ゲームの骨組みはしっかりしており粗製乱造を目的としたものではない。窃盗という犯罪をテーマとしたインモラルな珍しい作品であるが、ゲーム内容によってはそうした作品も任天堂は受け入れるということなのだろう。IARCレーティングでリリースされた犯罪ゲームということで異色ながら、ファミリーに配慮しながらも幅広いゲームを迎え入れようとする、現在のNintendo Switchの多様性を象徴する作品と言えるかもしれない。

『泥棒シミュレーター』は、PC(Steam)/Nintendo switch向けに発売中。12月17日23時59分までは、10%オフの1800円でゲームを購入できる。ただし将来的には大幅に値引きされる可能性もあるので、その点は注意。