今年のつらいゲームの思い出を清算。AUTOMATONライター陣が打ち明ける、2023年の「ゲーミング・トラウマ大賞」

“人生楽ありゃ苦もあるさ”は、ゲームにおいても同じ。犯してしまった失敗、名状しがたい恐怖、リアルに困ってしまう失策。本記事では、弊誌ライター陣によるゲームにおける今年のトラウマエピソードを紹介していこう。

今年2023年を振り返る、AUTOMATONの年末企画第3弾。“人生楽ありゃ苦もあるさ”は、ゲームにおいても同じ。犯してしまった失敗、名状しがたい恐怖、リアルに困ってしまう失策。本記事では、弊誌ライター陣によるゲームにおける今年のトラウマエピソードを紹介していこう。もし同じ傷を抱えた読者がおられれば、その痛みをそっとしまい込み、新年を迎えようではないか。

「偽りのゴールド免許」

『Euro Truck Simulator 2』

開発元・販売元:SCS Software
対応機種:PC


今年の春、筆者は二度目の免許更新を行い、初のゴールド免許を取得した。毎日とはいわないが車に乗っている時間は多い筆者は、普段こそ注意散漫であるが、運転中は違反・事故のないような運転を心がけているつもりだ。更新時、渡された免許の帯がゴールドであることに気付き、喜んだと同時に「この結果に油断せず、最大限安全な運転をしよう」と改めて心に刻んだのである。

そのわずか三か月後の話であった。筆者は友人たちと『Euro Truck Simulator 2』をマルチプレイで楽しんでいた。本作はトラック運転手となり、ヨーロッパの国から国へ、あらゆる荷物を運ぶシミュレーターゲーム。友人と遊ぶゲームを探していた筆者は、セールにて安く買える本作をプッシュ。ハンドルコントローラーは所有していなかったので、キーボード操作で友人たちとゆるやかなトラック業に勤しんでいた。本作のいいところは、みんなで同じ依頼を受けられるところ。スタート地点で集合さえすれば、ヨーロッパの風景と馬鹿話を楽しみながら、ツーリング気分で遊ぶことができるのだ。

そんな時の話だ。筆者と友人たちはいつものように同じ場所で依頼を受注。受注先を出発して間もなく、友人が「クラクションがNキーで鳴らせるよ」と教えてくれた。早速鳴らそうと思ったが、Nキーの位置がわからなかったので、画面から目を離しキーボードを確認。「あ、ここか!」「プーッ!」パッと画面に戻った瞬間、目の前には友人のトラック。「うおっ!」、一瞬で画面が暗転する。衝突事故だ。後ろにはまた別の友人、そのトラックも止まることができずに筆者と激突。結果、一般の車両も巻き込む巨大な玉突き事故を起こしてしまった。これがもし現実だったらと思うとゾッとする。わき見運転は絶対にダメ。無事故・無違反でいるための教訓だ。

by. Tamio Kimura


「ビビり、肩を壊す」

『Visage』

開発元・販売元:SadSquare Studio
対応機種:PC/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S


『Visage』は、一人称視点のサイコロジカル・ホラーゲームだ。本作はホラーゲームとして多くのプレイヤーの心に爪痕を残した『P.T.』に影響された作品。筆者は『P.T.』に震え上がった身として、本作の存在を販売当初の2020年から知っていた。しかし、ウィッシュリストに入れたまま購入することはなかった。なぜなら筆者は大がつくほどのビビりだからである。

幼少期にフラッシュ動画にハマっていた筆者は、何度となく「ウォーリーを探さないで」などのいわゆる“ドッキリ系”ホラーに引っかかり、そのたび条件反射で身体が硬直し、首や肩を痛めた。大人になった今もそれは変わらず、『Apex Legends』などのホラーとまったく関係ないゲームであっても、突然発砲音がするとビックリして肩を痛めることがある。そんな私が「探索・ドッキリ系ホラーゲーム」の『Visage』を遊び始めたのだ。

『Visage』は、“浸食ホラー”と表現するのが一番いいように思う。本作ではランダムエンカウントがいくつか存在し、突然部屋の角から老婆が覗き込んでいたり、廊下の奥に人影が見えていたりなど、およそ心が休まる瞬間が訪れない。しかもドッキリ要素は物語に影響を与えるわけではなく、ただゲーム内とリアルのプレイヤー正気度を下げるためだけにある。

そんな筆者はハンマーを持ち歩きながら探索していたのだが、大きめのアイテムは壁などに引っかかってしまうことがある。その場合、アイテムは画面上をスーッと横切るように目の前にスライドインしてくる。そんな何気ない現象だが、浸食されきった筆者が目にすればドッキリ要素。手持ちのハンマーにビビリちらかし、肩を痛めた時に“これはもう限界だ”と感じ、プレイを中断してしまった。久しぶりに悪夢を見たうえに、肩と首を痛めた。散々な思いをしたが、パンドラの箱を開き、今一度プレイを再開するかは肩・首と相談しながら考えることにしよう。

by. Mayo Kawano


「シュココ!(SE)」

『クトゥルフ神話TRPG』

著者:サンディ・ピーターセン、リン・ウィリスほか
発行元:ケイオシアム、KADOKAWA
対応機種:アナログゲーム


その日、筆者は友人とともに、『クトゥルフ神話TRPG』を遊んでいた。『クトゥルフ神話TRPG』のプレイヤーキャラクターというものは、事件に巻き込まれた際に仕事を放り投げざるを得ない場合も多い。自分の身に冒涜的な危険が迫っているというのに、暢気に出社などしていられるわけもないからだ。筆者のキャラクターもその例に漏れず、冒涜的事象の解決のため、仕事を放り出して図書館へと調べ物に行こうとした。

Discordの通話にて、私は元気よく宣言した。「おそらく仕事のSlackなど来ていると思うのですが、無視して調査に向かいますね」と。そしてその瞬間、ヘッドセットから思いもよらぬ音がした。「シュココ」という特徴的な、あのSlackの音である。気を利かせて友人がSEを鳴らしてくれたのかと錯覚したが、画面の通知を見てヒヤリとした。編集長からはタイムリーにメッセージが届いていた。

その日筆者はちょうど、いくつかの原稿を抱えている状態でTRPGを遊んでいた。名誉のためにいわせてもらうともちろん進捗に問題はなかったし、編集長からのメッセージもごく一般的な業務連絡であった。だが、あまりにも自分とプレイヤーキャラクターの状況が似通っており、妙に肝が冷えてしまったのである。なお、セッションでは仕事を放棄して調査へ向かい、無事にキャラクターは生還することができた。ときにはSlackを無視することも大切なのかもしれないが、それはあくまで架空の世界での話。報連相をまめにして、来年もライター業に勤しもうと思う。

by. Aki Nogishi 


「ざんねん!!わたしのぼうけんは ここでおわってしまった!!」

『バルダーズ・ゲート3』

開発元:Larian Studios
販売元:Larian Studios/スパイク・チュンソフト(日本国内)
対応機種:PC/PS5/海外Xbox Series X|S


「これ、もしかすると詰んでる?」ダンジョン攻略中、おそらくボス前にたどり着いたであろうところで、休息を取ろうとした時に気づいたのだ。パーティ回復用のリソースが無くなっているということに。焦ってはいけない。とりあえずセーブデータの一覧を開いてみる。そこで気づく。己の浅はかさ。そもそもダンジョンに持ち込むリソースの総量が足りなかったのだ。そっとコントローラーを机に置き、天を仰いだ。普段ならそのまま適当な呪詛を1人吐いたあと、ゲーム機の電源を落として、夜は温かいお風呂に浸かり、慰め代わりにちょっといい夕食を食べ、就寝後、次の日にプレイを再開するのだが、このときの私はそうはいかなかった。仕事で本作をプレイしていたからである。原稿の締切が待っていたからである。数時間分のプレイがパァだという現実を前にして、脳内を走馬灯のごとく駆け巡るのは年末のスケジュール。

結局今回は睡眠時間が犠牲になったわけだが、筆者にとってこういった状況は特段珍しいことではない。なんなら今年は『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』でも似た状況になりかけている。そしてこういった「事故」は、悪いことばかりをもたらすものでもない。仕事に関わらず、急なトラブルへの対応力があがった気がするし、執筆速度も上がっている。ゲームの腕がメキメキと鍛えられている感触もある。可愛い子には旅をさせよ。可愛い子には高難易度ゲームをさせよ。ゲームがクリアできないという状況は、人を強くする。

……そう思うようにしている。

by. Takayuki Sawahata 


「ハイラルのくねくね」

『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』

開発元・販売元:任天堂
対応機種:Nintendo Switch


「くねくね」というインターネット発祥の怪談がある。遠くで人ならざる動きでくねくねと動く怪異の目撃談で、双眼鏡で見ると精神に異常にきたすといったエピソードがまことしやかに語られている。田んぼなどを舞台とし、怪談らしからぬ明るくのどかな情景に佇む異質な存在が想起される点も特徴といえる。

『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』を遊んでいて「くねくね」を思い出すことになるとは思わなかった。あれは昼下がりの穏やかな平原を愛馬で駆け巡っていたときのことだ。丘に上がり、ひと息ついてあたりを見まわしていると視界の端に見慣れぬ赤黒いくねくねとした“手”が見える。気になった私は少し近づき、望遠鏡を構えた。すると赤黒い手はすぐさまこちらに気づき、凄まじい勢いで迫ってくる。「もし敵でもこの距離なら気づかれないだろう」と高をくくっていた私は大混乱。あたふたしながら間一髪で馬に乗って逃げだし、窮地を脱したのである。

今までの経験からの“安全な距離”の目算が大外れしたこともあり、瘴気の手が迫ってきた時の驚きと恐怖は尋常ではなかった。その後検証してみるかぎり、どうやら出現した時点でプレイヤーの存在に気づき、探し回る仕様のようだ。安全な距離など存在しない怪異との遭遇は、間違いなく今年一番血の気が引いた出来事となった。未知の存在を発見する驚きは本作の醍醐味ながら、発見には喜びだけでなく恐怖も伴うことも思い知らされた。まさに好奇心は猫を殺すといったところ。

ちなみに初遭遇時の恐怖を身体が覚えているからか、私は瘴気の手との戦いも非常に苦手だ。容赦なくこちらに迫り続ける手のひらの目を冷静に狙い撃つのが難しく、戦うたびに大量の矢を消費している。ゲームでは怖いものでも対処法さえわかれば平気になることも多いが、瘴気の手にはトラウマと苦手意識を抱えたまま新年を迎えることになりそうだ。

by. Hideaki Fujiwara


「見た目も鳴き声も全部最悪」

『ホグワーツ・レガシー』

開発元:Avalanche Software
販売元:WB Games
対応機種:PC/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S/Nintendo Switch


人気小説・映画「ハリー・ポッター」シリーズを題材としたオープンワールドアクションRPG、『ホグワーツ・レガシー』。特にホグワーツや「ハリー・ポッター」世界の再現度が高く評価されている本作だが、再現度が高くリアルなものはそれだけではない。

本作のリアルなオブジェクトとは何か。蜘蛛である。本作は古代魔術の真実を探し求めるために、ホグワーツ城の外で冒険する。当たり前のことではあるが、クエストでは森へ向かったり洞窟を探検したりする必要があり、そこではゴブリンや魔法使い、そして蜘蛛などと戦うわけだ。

筆者は蜘蛛が、さらに言えば虫全般が苦手だ。昆虫図鑑に載っている昆虫の写真すらできれば触りたくない。したがって本作の蜘蛛には辟易し、特にクエスト「逃亡者との遭遇」「絡み合った蜘蛛の巣」にはいたく苦しめられた。このクエストは簡単に言えばでっかい蜘蛛と超でっかい蜘蛛を倒すクエストだ。それだけでも嫌な理由足りうるが、嫌悪感にさらに拍車をかけたのは、大きい蜘蛛以上に小さい蜘蛛がうじゃうじゃ出現するという事実。

群れを成す蜘蛛、卵のうから這い出てくる蜘蛛……見た目の気持ち悪さは今でも脳裏に浮かぶ。そうした蜘蛛たちを掃討する際にはボンバーダやインセンディオなどで、吹き飛ばしたり範囲攻撃しつつ燃やしたりしてしまうのが簡単なのだが、あろうことか火のついた蜘蛛は「キィー」と鳴き声をあげつつ高速でカサカサと走り回る。その効果音も挙動も十二分に気持ち悪い。夢にこそ出てこなかったものの、悪夢のような体験であったことは間違いない。

ちなみに「蜘蛛恐怖症モード」が実装される前にプレイしたため、残念ながら蜘蛛の嫌悪感を回避することはできなかった。二度と同じクエストをプレイすることはないだろうが、試しに新モードを適用して軽くプレイしたところ、脳内に生々しい蜘蛛の姿がフラッシュバックした。やはり第一印象は大事。

by. Kosuke Takenaka


「攻撃パターンはパルス、レーザー、そしてパワハラ」

『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』

開発元:フロム・ソフトウェア
販売元:フロム・ソフトウェア/バンダイナムコエンターテインメント
対応機種:PC/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S


『アーマード・コア』シリーズ新作が出るのは、実に約10年ぶり。初代『アーマード・コア』からのファンである筆者は、文字通り寝る間も惜しんで遊んだ。「明日のしんどさ」に目をそむけながら、朝日を浴びつつコンティニューを繰り返す体験を久方ぶりにしたのである。本作に並み居る「バルテウス」「シースパイダー」「アイビス」といった強敵たちとの戦闘を重ねるたびに、レイヴンとしての私の実力と自信も高まり、周回攻略も順調かに思えた。

しかし2周目終盤にて、私の心は折れる寸前までひん曲げられることとなった。「アーキバス・バルテウス」が立ちはだかったのだ。同機を駆るは、V.IIスネイル。「閣下」「企業」「木っ端役人」などの異名をもち、筆者からは「野郎」と呼ばれている男だ。

「アーキバス・バルテウス」の攻撃パターンは、とにかく筆者と相性が悪かった。その場のノリではなく、ちゃんと何が来るかを見て丁寧に避けないとしっかり貰ってしまう攻撃が多く、しかもひとつひとつが高火力。そして閣下は精神攻撃まで繰り出してくるのである。罵倒だ。ひどすぎてピンとこなかった「害獣」との罵倒も、100回聞けば心に届いてくる。しかもあろうことか、後半になると野郎は職場の愚痴までこちらにぶつけて来るのである。部下でもないのにパワハラを受けている気分で、34歳のいい大人がゲームをやりながらちゃんと悔しくて泣いた。

『アーマード・コア』シリーズにおいて企業とは、世界を牛耳る国家同然の存在であり、体制側・権力側・世界を食らい壊す人類の業の顕現である。その代理である閣下がパワハラクソ野郎なのも、むべなるかな。しかしレーザーやパルスは回避できても、パワハラは避けようがないではないか。

by. Sayoko Narita

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