ゲーム業界では2024年、失職者が「1万4000人以上」発生したとの報告。2年連続増、スタジオ規模問わずレイオフの波は続く

ゲーム業界におけるレイオフ情報の有志データベース「Game Industry Layoffs」によると、今年の業界での失職者は1万4600人にのぼるという。

有志によるゲーム業界のレイオフ情報データベース「Game Industry Layoffs」では、公式声明や報道に基づき、さまざまな規模のゲーム企業によるレイオフやスタジオ閉鎖の情報が集積されている。2022年から毎年情報がまとめられており、同サイトの推計では今年の失職者は1万4600人にものぼるという。

大手から中小までレイオフ多発

今年おこなわれた大規模なレイオフとしては、まず1月にゲームエンジン「Unity」を手がけるUnity Technologies(Unity Software)にて約1800人が解雇される方針が発表。また同月にはマイクロソフトのXbox 部門、ならびに同社傘下のActivision BlizzardおよびZeniMax Mediaにて、合計約1900人のレイオフがおこなわれることも明かされた。このほか1月にはRiot Gamesでも約530人におよぶレイオフが実施されたほか、DiscordやTwitchといった周辺業界でもレイオフはおこなわれた(関連記事123)。

そして翌2月にはソニー・インタラクティブエンタテインメントにて、PlayStation Studiosを含む世界中の社員を対象に約900人の人員削減が実施。米国ではInsomniac GamesとNaughty Dog、英国ではGuerrillaとFirespriteなどの社員も対象となった(関連記事)。また同月にはElectronic Artsでも全従業員の約5%の人員削減がおこなわれ、対象となったのは約670人と推計されている。1月・2月にはこのほかにも規模を問わずさまざまなスタジオでレイオフなどはおこなわれており、2か月で6000人以上が職を失ったとみられる。

その後も毎月複数のスタジオでレイオフの実施や閉鎖・活動停止が発表されてきた。たとえば5月にはマイクロソフト傘下で『Hi-Fi RUSH』などを手がけたTango Gameworksと、『Prey』リブート版や『Redfall』の開発元Arkane Austin、そしてAlpha Dog GamesとRoundhouse Studiosの4スタジオが閉鎖。このうちTango Gameworksについては特に実績のあるスタジオだったこともあり、閉鎖を受けて業界に波紋が広がっていた。なお同スタジオは8月にKRAFTONが事業継承し、復活を遂げることとなった(関連記事1関連記事2)。

他方、Take-Two Interactive傘下では、人気スケボーアクション『OlliOlli』シリーズを手がけたRoll7や、『Kerbal Space Program 2』を手がけていたIntercept Gamesが閉鎖。あわせて同社のインディー系レーベルPrivate Divisionが売却。このほか人気インディーゲームを数々輩出してきたパブリッシャーHumble Gamesでもレイオフがおこなわれ、事業再編が実施された(関連記事1関連記事2)。

大手だけでなく、実績ある中小スタジオや、インディーゲームのパブリッシング事業も苦戦しているようだ。また欧米を中心にゲームメディアでもレイオフは実施されており、周辺業界にも影響が広がっていることがうかがえる。ほか、12月に入っても複数の中堅スタジオでレイオフがおこなわれており、そうした状況は続いているとみられる(関連記事1関連記事2)。


2年連続で失職者増える

なおこの状況の背景として、新型コロナウイルスの流行による巣ごもり需要での成長を見越したビジネス方針が人件費の増大を招き、コロナ禍の収束と共にレイオフの多発に繋がっているのではないかという考えが業界内で見られる。またコンソール市場では新規ユーザー獲得の鈍化による成長の頭打ちが、開発費の肥大化による収益獲得へのプレッシャーを高めているとの見方もある(関連記事123)。

そうした中ではスクウェア・エニックスのように、マルチプラットフォーム展開の強化を掲げるメーカーも存在。また先述のKRAFTONは、開発規模が控えめでも独創的な作品でラインナップを増やし、リスクを軽減する方針をとっているという。このほか今年には、中小スタジオが親会社を離れて独立したり、新たな企業の傘下入りしたりする例も見られた。ゲーム業界が苦境にあるなかで、各社の戦略も変容を見せているのだろう。

なおGame Industry Layoffsでは、2022年は合計8500人、2023年には合計1万500人の失職者が出たと推計されている。今年は本稿執筆時点で1万4600人と推計されており、昨年を大きく上回る失職者を出すかたちとなった。またこの数値はレイオフ・解雇された人数が発表されている事例に限定した合計値がベースのようで、実際にはさらに多くの失職者が発生したとみられる。2年連続で悪化を辿ってきた業界の失職者数は、2025年は改善に向かうのだろうか。多数発生してきた失職者が業界復帰できるような動きの活発化も期待されるところだろう。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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