ナムコの傑作『ミスタードリラーグレート』にて、理論上の限界「32767m」に到達した猛者あらわる。再起動に怯え、尿意や終電と戦う“極限の2時間”

本稿では、アーケード版『ミスタードリラーグレート』宇宙ステージにて、理論上の最深部とされる「32767m」に到達した人物にインタビューをおこなった。

アーケード版『ミスタードリラーグレート』宇宙ステージにて、理論上の最深部とされる「32767m」を達成した人物が現れた。弊誌ではそんな大記録を打ち立てたくろみや氏にインタビューを実施した。

『ミスタードリラーグレート』は、2001年3月にナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)がアーケード向けに発売した穴掘りアクションゲームだ。『ミスタードリラー』シリーズの第3作にあたる。本作でプレイヤーは、崩れ落ちるブロックにつぶされないようにしながら、地底のゴールを目指して地面を掘り進めていく。エア切れになってもミスになるため、適宜エアカプセルで補給していく必要がある。

前作『ミスタードリラー2』からの進化としては、まず新たな操作キャラクターたちが加わり計6名に。またステージとしては、前作の隠しステージであった「北極ステージ」と、ゴールが存在しない「宇宙ステージ」が追加。そのほか、最速を目指して掘り進む「タイムアタックドリラー」やゴールまでのスピードを2人で競う「ドリラーレース」など、モードの拡充もおこなわれている。本作はアーケード版がリリースされた後、2001年11月にPlayStation版が発売。また2013年6月には、PS3/PSP/PS Vita向けのゲームアーカイブスでも配信された。

そして前述した宇宙ステージが今回の記録の舞台である。無限に続くかと思われる宇宙ステージだが、実は50000mに到達することで、ゲームが強制終了することが知られている。では50000mが最大の記録かと思えばそうではない。32767mを超えるとマイナスの値となってしまい、ランキングに記録が残らなくなってしまうようだ。

32767といえば、16ビットの符号付き整数型が表現可能な最大値。大きな値の格納を想定していない一部のプログラムでは、値がこの上限を超えることでオーバーフローが発生し、逆に極めて小さな値として扱われてしまうことがある。ちなみに、最小値である-32768を下回ることで発生する負のオーバーフローも存在。過去には『マリオカートWii』にて、32768周逆走することで2ラップでゴールできるようになるというバグ挙動も発見されていた(関連記事)。

そのため、本作の宇宙ステージにおける理論上の最深部は32767mとなっているわけだ。最深部到達に成功したくろみや氏の報告を受け、SNS上では多くのユーザーから祝福の声が寄せられている。弊誌での取材に応じた同氏によれば、まず5000mを突破することが本当に難しいそうだ。

――自己紹介をお願いします。『ミスタードリラーグレート』のプレイ歴や、ほかにお好きなゲームがあれば教えてください。

くろみや氏:
初めまして、くろみやと申します。『ミスタードリラー』シリーズはアーケード版初代から遊んでいて、家庭用でもアーケードの移植作品を主にプレイしています。数年前にはついにアーケード基板とコンパネを手に入れて、自宅にも環境を作りました。ドリラー歴はもう27年になります。あの頃は中学生でしたが、まさかアラフォーになっても飽きずに掘り続けているとは…。

他には、STGやパズルゲームやローグライク、アーケードの音ゲーなどを主に嗜んでます。ゲームセンターが大好きなので、今でもゲーセン通いを続けています。

――32767mの記録に挑もうと思い立ったきっかけは何だったのでしょうか。

くろみや氏:
2001年の稼働当初からエンドレスの宇宙ステージがお気に入りで、最初は1000mも満足に掘れませんでしたが、上手くなってからは、全てのキャラクターでの5000m突破や、よく通っているゲームセンターである秋葉原Heyのランキングに乗ることを目標に遊んでいました。

元々、50000m掘るとゲームが強制終了し、深さがマイナス表記になり記録が付かないというバグった挙動をすることは知っていました。そしてとある攻略サイトにて32768mを超えることが原因である事を知り、意図的に32767mで止めることが数値上の最大値になると分かったので、いつかこの数値を記録に残したい!と思い日々宇宙ステージを掘り進めていました。

――最深部を目指すにあたって一番難しいのはどういった要素なのでしょうか。

くろみや氏:
アーケード版の『ミスタードリラーグレート』は、5000mを突破するとゲームスピードは最高速のまま、盤面が0m~1000mと同じ少し簡単なものになってループする仕様があります。そのため、「フルエアー」という回復アイテムを引き続けるループに突入出来れば、あとは集中して精密操作をし続け、最高記録を伸ばす作業に移ります。

ただしこの5000m突破というのが本当に難しくて、そこまでに拾うアイテムの運にもかなり左右されるので、自分の腕前だと100回に1回くらいしか突破出来ず、どうにか5000mを突破しても理想的なループに入れないと、エアの残量に限界が来たり、ブロックに潰されてしまいます。このループを掴めるかが重要です。

今回は5000mを超えてからのループがあまりにも理想的で、フルエアーが4個もあり、更に均等に配置され、ある程度エアの残量が増えてきたら安全最重視の掘り方を延々とし続けることが出来ました。それでも気を抜いたらちょっとした操作ミスで終わってしまうギリギリの状態だったので、だいぶ集中力を使いました……。

――プレイしている最中にはどのような点に意識を割き、判断をおこなっているのか教えてください。

くろみや氏:
プレイ中はとにかくエアカプセルやアイテムのトリアージを瞬時にすることが大事です。

宇宙ステージは後半になればなるほど、少しモタつくだけでエア残量がみるみる減ってしまいます。これを意識していないと、エアが20%回復するエアカプセルを取るために40%のエアを消費する、なんていう本末転倒なことになってしまったり、拾っても無駄なアイテムを取りに行ってエアを大量消費してしまったり、ブロックに潰されるなんてことが往々にして起こります。

アイテムですが、効果の種類は全部で12種類あり、拾うまでどんな効果が出るかは分かりません。ただし、アイテムの配置場所によって「全部で12種類あるうち、更に内部で3~4種類に指定されたものをランダムで抽選」という仕様なので、アイテムの効果はある程度予測出来ます。なので、アイテムの位置と出現する可能性のある効果は全て記憶しています。

エアが全回復する「フルエアー」が出る可能性のあるアイテムは積極的に取りに行き、エアが半減する「ハーフエアー」や、盤面がバツブロックばかりになってしまう「バツジルシ」が出る可能性のあるアイテムは絶対に拾わない、というのを徹底しています。

――SNSでは尿意や終電の時間と戦う様子も報告されていました。ゲーム外での一番の脅威は何でしたか。

くろみや氏:
記録が見えてきた時に真っ先に後悔したのが、ゲームを始めた時間が21時頃だったことと、ゲーム開始前にトイレに行かなかったことでした(笑)更に、自分のプレイしていたミスタードリラーグレートの基板は、経年劣化からか、極稀にゲームが突然再起動する不具合があるものだったので、それだけは何があっても起こらないでくれと祈ってました。

32767m達成までに2時間11分ほど掛かったのですが、後半はゲーム画面に集中したいのに

お腹の調子と営業時間と終電を気にしつつ再起動の不具合が起こらないことを祈り続けるという状態で、意識の在処がとっ散らかってました(笑)極限状態になると何もかもが脅威に成り得ることを体感しました……。

――『ミスタードリラーグレート』の魅力はずばりどこでしょうか。また、何が記録挑戦のモチベーションになっていましたか。

くろみや氏:
最高に爽快で気持ち良いアクションパズルゲーム!キャラも可愛くて単純明快!まだプレイした事が無い人は是非ともプレイして、掘り進んでみてほしいです。また、細かな仕様や運要素、難易度、キャラクターの世界観などが、やればやるほど奇跡的なバランスに思えるくらい完璧だと感じます。

誇張抜きに一生遊べる、魅力だらけのゲーム!願わくば!アーケードアーカイブスが欲しい!!いくらでも協力しますので!!(大声)モチベーションは、ドリラーが楽しくて好きだから、という気持ちがほぼ全てです。

――最後に、大きな目標を達成された今、次の目標があれば教えてください。

くろみや氏:
今回は32767mという数値上の最深部まで掘れて記録にも残せました。次は記録にも残せない、ゲームの限界値となる50000mや、さらに連射ボタン無しでの達成、別キャラでの達成など、まだまだやることがありまくりです。宇宙以外のステージやタイムアタックモードもあるので、それらも記録を狙い続けたいですね。

あと、『ミスタードリラーグレート』に関する知識は無限に欲しい!と思っています(笑)昔の世界記録の中には、普通に遊んでるだけでは達成出来ないような謎の超高スコアが記録されていまして、その謎も追っている最中です。どこまで掘っても終わりが見えず熱も冷めない、このゲームそのものがエンドレスの宇宙ステージのようです。

これからも掘り続けます!

――ありがとうございました。

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