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Steamで約8850万円売り上げたゲーム開発者、“売上の13%”しか手元に残らなかったと赤裸々事情公開。しかし数字に見え隠れする「カラクリ」巡り議論白熱
ゲーム開発者のOmer Mustafa氏が、自身が手がけたゲームを売り、手元に残ったお金についての報告をし、話題となっている。一方で、その計算には議論を呼ぶ部分もあったようで、指摘の声なども相次いでいる。

ゲーム開発者のOmer Mustafa氏が10月7日、Steamで過去5年間に56万ドル(約8850万円)を売り上げながら、最終的な自身の取り分はわずか7万3000ドル(約1150万円)だったと報告し、注目を集めている。一方、計算の仕方や売上が減った理由については疑問の声も相次いでおり、議論を呼んでいるほか、「クリックベイトではないか」とする指摘などが寄せられている。
今回の報告をおこなったMustafa氏は、インディーゲームデベロッパーNorthend Gamesの共同創業者だ。同デベロッパーは、2024年9月にタワーディフェンスゲーム『戦塵の地:陣地戦』を正式リリース。2025年12月には、採掘と拠点防衛を組み合わせた『戦塵の地:鉱脈防衛線』を早期アクセス配信している。両作品ともPC(Steam)向けに展開されており、Steamユーザーレビューは、前者が1308件中74%が好評とする「やや好評」ステータス。後者も49件中71%が好評とする「やや好評」ステータスとなっている。
そんなMustafa氏は、海外掲示板Redditのゲーム開発者向けコミュニティ「r/gamedev」にて、これまで開発した上記2作品の収益内訳を公開。総売上からさまざまな費用が差し引かれ、最終的に自身の取り分が約13%となった経緯を説明している。
手元に来るまでどんどん消えていく売上金
まず、大きく影響したのが「返金」だ。Mustafa氏によると、総売上56万ドルのうち13万4000ドル(約2120万円)が返金によって差し引かれたという。両作品では、売上の6割以上を中国市場が占めているといい、中国のプレイヤーによる返金が多いと主張している。全体の返金率は22%に達しており、同氏が標準的と考える10~15%を大幅に上回っていたという。
返金によって売上は約42万5000ドル(約6720万円)となり、そこからSteamの販売手数料、いわゆる“ストア税”として30%を徴収することで、約12万7000ドル(約2010万円)が差し引かれた。さらに、米国での売上に対する源泉徴収税として米国内売上の30%、9700ドル(約153万円)が発生。Mustafa氏は当初イラクに居住していたため、米国との租税条約による軽減措置を受けられなかったものの、その後タイに移住したことで税率が5%に下がったと説明している。

そして、大きな支出となったのが、パブリッシャーへの分配だ。両作品では中国、韓国、日本市場向けにパブリッシャーと契約しており、販売実績に応じた割合で合計約11万5000ドル(約1820万円)を支払ったという。加えて、タイでの所得に対する税金として約2万6000ドル(約411万円)が発生。こうした各種支出を差し引くと、最終的にNorthend Gamesに残った利益は約14万6000ドル(約2310万円)になったそうだ。
さらに、Mustafa氏は共同創業者と利益を折半しているため、個人の取り分は7万3000ドル(約1150万円)となったわけだ。5年間で割ると年間約1万5000ドル(約237万円)となり、時給に換算すれば非常に低い水準だと同氏は訴えている。仮にフルタイム8時間20日ペースで働いたと仮定しても時給は1234円であり、同氏が開発者である事情に鑑みても、やはり低い水準と言わざるを得ないだろう。なお、各項目は概算として示されており、公表された数字をそのまま計算した場合には、最終的な金額に若干の差が生じる点は留意されたい。

“年収換算”の妥当性やいかに
こうした報告はReddit上で大きな注目を浴びたものの、コメント欄では計算の仕方を疑問視する意見も相次いだ。特に多く指摘されているのが、そもそも「返金された13万4000ドル」を“総売上”に含めるべきなのかという点だ。購入者に返金された金額は、開発者にとって確定した収益ではないため、最初から除外して考えるべきだという意見が寄せられている。
ただし、Steamの開発者向け公式資料によると、管理画面に表示される総売上は、返金や税金などが差し引かれる前の金額だ。月次売上報告では、そこから返金などを差し引いた純売上を算出し、収益分配率を適用する仕組みとなっている。つまり、Mustafa氏が返金前の金額を総売上として扱っていること自体は、Steamの表示方法に沿ったものといえる。
一方で、今回の報告では2作品を合わせた総売上56万ドルと、利益を共同創業者と折半した後の個人収入7万3000ドルが比較されている。Redditでは、共同創業者に分配された利益まで「失われた売上」のように扱うことは適切ではないとの指摘もみられる。会社全体では約14万6000ドルの利益が残ったことになるため、最初に提示された数字ほど極端な収益構造ではない、という見方だ。
また、Mustafa氏は今年5月に勤め先から解雇され、フルタイムの個人ゲーム開発者へ転身したことを明かしている。そのため、同氏の言をそのまま受け取れば、フルタイムで開発に携わった期間は1年もないだろう。つまり個人収入である7万3000ドルを5年間で均等に割った「年間1万5000ドル」という数字も、専業開発者として5年間働いた際の「年収」として示す同氏の見せ方には、疑義が抱かれている。

加えて、パブリッシャーに支払われた約11万5000ドルについても議論が生じている。両作品のSteamストアページには、パブリッシャーとしてNorthend Gamesに加え、中国のゲームメディア「游民星空」が展開するゲームパブリッシングブランド「Gamersky Games」が記載されている。同ブランドは、中国市場向けのゲーム販売やマーケティングなどを手がけており、『プレートアップ!』や『デスクロール:放置ARPG』といった作品にも携わっている。
Mustafa氏は今回の収益報告で、パブリッシャーへの分配が利益を大きく減らした要因のひとつとして説明。また、次回作ではセルフパブリッシングをおこない、こうした分配をなくす方針を示している。しかしReddit上では、この判断に疑問の声が寄せられた。前述したように、両作品では、中国だけで売上の6割以上を占めるとされており、その市場を担当するパブリッシャーが販売実績に大きく貢献している可能性があるためだ。次回作でパブリッシャーを起用しなければ取り分の割合は増えるものの、そもそもの売上が減ってしまうのではないか、という指摘である。
こうした指摘に対し、Mustafa氏もパブリッシャーの貢献を認めている。同氏によれば、パブリッシャーは宣伝やマーケティングのほか、海賊版サイトへの対処なども担当していたという。その結果、販売本数は2倍以上に増えた可能性があると説明。また、パブリッシャーなしで同規模の売上を達成できたかはわからないとも述べている。つまり、パブリッシャーへの約11万5000ドルは、売上を伸ばすために必要な支出だった可能性もあるわけだ。ただし、今回のスレッドでは具体的な貢献度は明らかになっておらず、契約がどの程度パブリッシャー、あるいはデベロッパーに有利な契約だったのかは判断できない。

さらに議論は、返金率が高い原因にも及んでいる。前述したように、Mustafa氏は両作品の返金率が22%に達したと報告し、その背景として中国市場での返金の多さを挙げている。一方、Reddit上では中国市場のユーザー傾向だけが理由ではなく、両作品の完成度や不具合が影響しているのではないかとする批判も寄せられた。実際、『戦塵の地:陣地戦』のSteamユーザーレビューには、操作性や不具合などを指摘する意見も確認できる。加えて、『戦塵の地:鉱脈防衛線』についても、開発元がUIや操作性の改善、不具合の修正などを繰り返してきたことがアップデート履歴からうかがえる。
また、今回の報告では両作品全体の返金率が22%に達したことや、中国市場で返金が多いことは明かされているものの、中国市場単独の返金率や具体的な返金理由までは公開されていない。そのため、中国市場での返金の多さとゲーム自体の品質が、全体の返金率にそれぞれどの程度影響したのかは不明だ。

混迷を極めるコメント欄
先述した各要素やMustafa氏の言及に対し、コメント欄では大いに議論が紛糾。投稿が「誤解を招く」として通報されたりしたほか、同氏のYouTubeへの誘導を目的とした“クリックベイト”だと批判されたりする様子もうかがえた。そんな中で、Redditのコミュニティ内で投稿やコメントの管理を担う「モデレーター」が、こうした情報共有は必要だとしてMustafa氏を擁護している。また、開発者の5年間の仕事を一方的に粗製濫造と決めつけるような誹謗中傷的コメントに対しても、厳しい姿勢を見せている。
Mustafa氏もコメントでの批判に反応しており、今回の投稿は自身の収入を共有することが目的で、Steamや共同創業者を非難する意図はないと説明。同氏が伝えたかったのは、ゲームを作るだけでは十分ではなく、ビジネスについても学ぶ必要があるということだそうだ。
ちなみに、Mustafa氏は現在、配信済みの作品から得られる継続的な収益によってタイで生活しながら、次回作の開発を進めているという。“年間約1万5000ドル”という収入も現地では快適に生活できる水準だとしており、休暇を取っている間もゲームが売れ続けることを前向きに捉えているようだ。
今回の収益報告に対しては計算方法を巡る疑問も寄せられたが、返金リスクや販売手数料、パブリッシャーへの分配といった、インディー開発のシビアな収益構造を浮き彫りにしたといえる。パブリッシャーの力を借りて露出を増やすか、自力で販売して手元に残る利益を最大化するか。次回作でセルフパブリッシングに挑むMustafa氏の選択も含め、インディーゲーム開発における収益化の模索は今後も続きそうだ。
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