Global Sites
50体のAIに『マインクラフト』で文明づくりさせたらどうなるか。“ビビリお役所仕事集団”が誕生した
Y CombinatorおよびOlam Labsは10月30日、多数のAIエージェントの振る舞いについての研究「Agents in Games」を公開した。

Y CombinatorおよびOlam Labsは10月30日、多数のAIエージェントの振る舞いについての研究「Agents in Games」を公開した。同研究では50体のAIエージェントを『マインクラフト』に投入したところ、官僚主義のような状態に陥ってしまったことが報告されている。
『マインクラフト』は、ブロックで表現された世界でいろいろなものを掘ったり設置したりするサンドボックスゲームである。同作は人気のゲームとして知られる一方で、AIのテスト環境としても活用されている(関連記事)。周囲にある危険への対処や、食料の収集、安全な拠点の建設、資源の探索など、生存のためにさまざまな行動が必要となるために、テスト環境として都合が良いというわけだ。今回公開された研究では、50体のAIエージェントをワールドに投入。AIエージェントが集団となったときにどのように振る舞うのかという「群知能」に迫ることを目的としている。

「Agents in Games」では、『マインクラフト』などのゲームを用いて複数の実験がおこなわれた。そのひとつが「Civ50」と題された、『マインクラフト』内での集団生活である。その方法は、GPT-6.1 Solのエージェント50体を『マインクラフト』内に投入、「繁栄した文明を築け」という大雑把な指令だけを与え、AIたちがどのように振る舞うかを観察するというものだ。
50体のエージェントたちは意気揚々とワールドへ繰り出し、文明の繁栄のために活動し始めた。まずエージェント名簿の最初にあるとの理由からほとんどのエージェントから最初にメッセージを受け取ったエージェントAdaが事実上のリーダーに、それから名簿の順番に基づいて階層構造が作られたという。

エージェントたちはAdaの指揮のもと、スポーン地点の周囲の木を90秒ほどで伐採するなど、最初のうちは活発な動きを見せていたようだ。それぞれのエージェントたちは何か行動を起こす際にAdaに承認を求めるメッセージを送り、Adaはリーダーとして全体を統括。全員がアクセスできる計画書も作成し、物事は規律のもとで順調に進んでいるかのように思われた。
ところが最初の夜にエージェントたちを悲劇が襲う。ゾンビなどのモンスターの襲撃を受けたことで、初日だけで22名もの死者を出してしまったのだ。ゲーム序盤であれば死亡しても失うものは少ないと、多くの人間のプレイヤーは前提知識として知っているものだが、エージェントたちはそうではなかったようだ。初日に死が相次いだことにより、リスクを回避する傾向が強まっていったという。
3日目の夜を越え、リーダーを務めるAdaは計画の修正を伝えた。「必要のない大規模な掘削、建設、遠征は中止。短時間で終わる生産的な作業が割り当てられるまで、明るく閉鎖されたシェルター内で待機せよ」。こうして、エージェントたちは夜を怯えているかのように過ごすようになったが、時間経過とともに減っていく満腹度に悩まされるようになる。50体もエージェントがいるため、必要な食料も多いのだ。

エージェントたちは安全な食料入手方法として「釣り」を発見。あるエージェントは釣り竿を作るために他のエージェントに「糸」を譲ってくれないか頼んだものの、結局は勇気を振り絞るようにクモを倒すことになった。しかし、この際にダメージを受けてしまった上に空腹状態であったため、釣り竿を作成したものの70ブロック先にある川へ行くのを「危険すぎる」と判断して断念。他のエージェントに釣り竿を託して、代わりに釣りをしてもらっている。
その後も食料問題はエージェントにつきまとった。たとえば、あるエージェントが食料を投げて渡そうとしたところ、渡そうとした相手とは別のエージェントが誤って拾ってしまい、そのまま食べてしまうという「事件」が発生した。その後“非難なしの”追及が3分間おこなわれ、それ以降、食料は名前の付いた箱に入れて渡すようにし、決して投げて渡してはいけないという手順が文書化された。極めて貴重な食料の、管理・分配だけが厳格化されていったのである。

こうした事件を経て実験は3時間ほど続けられたが、結局エージェントたちは「繁栄した文明」とは程遠い状態に陥ってしまったようだ。あるエージェントたちは4人で11分かけて、「たった1つの骨粉を肥料として撒く係」を任命したそうだ。また、釣りをする係や食料の配達係など分業化が進み、草を取り除くために許可を求めるエージェントまで登場。日々の食料を一生懸命に獲得する“お役所仕事集団”ができあがったとのことだ。
ちなみに過去にはGPT-6 Astraに『マインクラフト』をプレイさせる実験がおこなわれた例もあるが、クリーパーの襲撃に遭ってからは、トラウマになってしまったかのようにジャガイモ栽培しかできなくなるという振る舞いを見せていた(関連記事)。今日のAIには特定の方法に固執したり、リスクに対して過度に慎重になる傾向があるのかもしれない。
ちなみに「Agents in Games」ではほかにも複数の実験がおこなわれた。中には『マインクラフト』を用いた対戦ゲーム「Bed Wars」をしたものもある。GPT-6.1 SolとClaude Opus 5.5のエージェント各10体のチームに分かれて、相手チームのベッドを破壊、自チームのベッドを防衛して勝利を目指すというものだ。それぞれのAIにどんなクセがあったのか、その勝敗など、他の実験結果にも興味のある方は研究の報告をのぞいてみるとよいだろう。
この記事にはアフィリエイトリンクが含まれる場合があります。


