『龍が如く』の“あの見たことある画像”の元ネタは「極」にいっぱい入ってるのでやるといい。「だめだね」「挨拶ができへん人間は建設も……」など、あなたはどれだけ知ってる?

「暴力」だけじゃない『龍が如く』の魅力を、ネットミームを通じてご紹介。気になったら『極』をやろう。

セガは11月13日、Nintendo Switch 2版『龍が如く極』『龍が如く 極2』を発売する。また、12月8日にはPS5/Xbox Series X|S版もリリース予定。本シリーズ未経験の方が新たに『龍が如く』の世界に飛び込むには、うってつけの機会だといえるだろう。しかしながら、本シリーズへのイメージから、プレイを足踏みしたり、敬遠したりしている方もおられないだろうか。

『龍が如く』というと、「男臭い」「暴力」「怖い」などのイメージを思い浮かべるかもしれない。しかし実際のところはどうなのだろうか。本稿ではそんな『龍が如く』発のネットミームや、ファンが親しむ「あるあるネタ」などの「出どころ」を辿ってみた。すると、『龍が如く』の想像以上に「振れ幅」がすごいエンターテインメント性が見えてきた。

『龍が如く』といえば「ばかみたい」

『龍が如く』のバラエティ性を示すもっとも顕著で有名なネットミームが「ばかみたい」だろう。この曲は、カラオケミニゲームの収録曲としてシリーズお馴染みの存在となっている。恋人への慕情を捨てるに捨てきれずに「ばかみたい」と切なく自嘲する女性の歌を、桐生一馬が切なげに歌う様子は必見だ。

この曲は、シリーズを通じて複数の屈強な男たちがしっとりと歌い上げている。歌唱中に挟まるムービーでは、歌っているキャラが写真を切なげに眺める様子が楽しめる。お相手は動物から思わぬ人物まで多彩に用意されており、奇妙な笑いを誘うとともに、そのキャラの秘めたる思慕の情を見せてくれる名曲となっている。

なお、この曲はネットミームとして海外でも爆発的にヒット。さまざまなキャラクターや人物に「ばかみたい」を歌わせる動画も流行した。単に名曲なだけではなく、切なさとおかしさが同時に流れ込んでくるこの一曲。一度は作中で聴いてみてほしい。病みつきになるだろう。

「もう殺すしかなくなっちゃったよ」はマジで怖い

「ばかみたい」に次いで知名度が高いのは、『龍が如く0 誓いの場所』より佐川の「もう殺すしかなくなっちゃったよ」だろうか。佐川の複雑すぎる表情の画像とともに、このセリフを目にしたことがある人も多いのではないだろうか。ネットでは「越えてはいけない一線を越えた相手」などに向けて使われたり、「もう○○なくなっちゃったよ」と、何かが“なくなっちゃった”悲しみを表現するかたちでコミカルに利用されたりしている。

ネットミームとしてカジュアルに使われがちなセリフだが、実は作中においてのこの発言は、かなり恐ろしい状況で発せられた一言である。『龍が如く0』の主人公のひとりである真島吾朗に向けられたもので、監視していた真島の裏切りに直面した佐川の心境を表した名言なのだ。

真島を追い詰めつつ、「なんで俺に嘘ついちゃうの?悲しいじゃん」「殺すしかなくなっちゃったよ」としょんぼり顔でつぶやき銃口を向ける佐川。極道の恐ろしさと、佐川の真島への執着を感じさせる身震いするようなワンシーンだ。一度作中で経験すると、「もう殺すしかなくなっちゃったよ」ミームの見方も変わるかもしれない。

実は言ってない「あいさつができる人間は建設もできる」

ほかにネット上で大々的に広まった『龍が如く』の“ネタ”といえば、真島吾朗の「あいさつができる人間は建設もできる」がある。安全ヘルメットを被った真島吾朗が拡声器で呼びかけるこのシーンは、動画の自動字幕を紹介したTwitter(現X)でのユーザー投稿が発端となり広まったと見られる。

実際にこのようなセリフが作中に発せられたわけではない……が、その対偶とも言うべきセリフは『龍が如く 極2』に実在している。自動字幕があてられたこのシーンの本来のセリフは「挨拶ができへん人間は 建設もできへんで!」とがなり立てているものだ。いずれにせよ「挨拶と建設に何の関係があるのか」とツッコみたくなる一言だが、真島の気迫の前には無意味だろう。

状況としては、カタギとなった真島が元組員を巻き込み「真島建設」を設立し、建設のドシロウトである元組員たちに檄を飛ばしているシーン。作ろうとしているのは、吹き抜け構造やショッピングモールを擁する巨大ビル「神室町ヒルズ」だ。真島はほかにも、「ネットで調べてとっとと建設」「不眠不休で働けや」など無茶苦茶な訓示を押し付けている。なお、真島建設の血と汗の滲む労働の成果か、神室町ヒルズは無事に完成している。

歩くエンタメ・真島吾朗

そして真島吾朗は、存在そのものが「ネットミーム」であり「ネタの宝庫」であるといっても過言ではない。『龍が如く』シリーズをいわゆる「ミリしら」な方のなかには、「桐生ちゃ~ん」という独特の呼びかけを知っている方もいるだろう。真島は執拗に桐生一馬を付け狙う奇抜なライバルでありつつも、その行動は思いつきに直結している。前述の「真島建設設立」のほか、「なんとなくトラックで建物に突っ込む」「成り行きで海賊になる」など突飛な行動は枚挙にいとまがない。

また、ゾンビやカラーコーン、そしてきらびやかなキャバ嬢まで扮装のレパートリーも豊富。いつでもプレイヤーを楽しませてくれるのが、真島吾朗である。なお、そうしたバラエティ豊かな真島の姿は『龍が如く 極』『龍が如く 極2』どちらでもたっぷり楽しむことができる。さらにいえば、真島は突飛でクレイジーなだけでなく、信念を貫く芯の強さがあり、そうした真島の熱い部分を愛するファンも多い。一言だけでは語りきれない“真島吾朗”というキャラクターの旨味を、ぜひ作中で確かめてほしい。

『龍が如く』あるある

『龍が如く』には、よく考えると面白い「あるある」が豊富に存在する。たとえばファンの間でよく話の種にされるのが「桐生一馬のなに?”「一発で脱げる服」などだ。

桐生一馬が主人公のシリーズ作品において、桐生が「なに?」「なんだと?」と状況を問いただすことがとても多く、桐生の名台詞(?)として国内外のファンに愛されている。開発陣も「なに?」の多さとファン人気については把握しているようで、弊誌が過去に実施したインタビューでも、桐生一馬の声優である黒田崇矢氏が海外でファンにせがまれて「なんだと?」をサービスしたという話が挙げられた。言葉として耳なじみの良い「Nani?」は、特に海外ファンの耳に残るのだろう。

また、「一発で脱げる服」もシリーズのお約束だ。本作の主人公や主要な敵役は、それぞれ背中にキャラクターを象徴する刺青を背負っていることが多い。大きく盛り上がるボス戦では、服を脱ぎ捨てて上半身裸になり、入れ墨をあらわにしながら激突するのが慣例となっている。その際には「キャラクターが服の袖を掴み引っ張ると、ボタンが掛かっていようがどんな服装だろうが、一発でズバッと裸になる」という演出がなされる。

どんな服装だろうが
ズバっと脱げる

真似をしてみればよくわかるものの、この動作で常人が服を一瞬で脱ぐのは不可能に近い。ファンの間では「服の構造はどうなっている」「マジックテープを利用してすぐ脱げる構造になっているのか」といった話題にされることもしばしば。しかし、決戦に向けての盛り上がりを邪魔しない演出として「一発で脱衣」は大切だろう。後からしみじみ面白がろう。

ネタとして面白すぎる脇役たち

本作のバラエティ性を語るにあたって外せないのが、しばしばネットミームとしても見かける脇役たちだ。そんな有名な脇役としては、主人公たちに迫る悪徳カルト団体「ムナンチョヘペトナス教」およびその教祖「ムナンチョ・鈴木」、“変わったプレイ”を暴力も交えて他人にも強いる「権田原組長」、主人公に執拗に密着しようとする謎の老齢女性「悦子」、桐生一馬のことを「カズマくん」と呼べる唯一の男・ポケサーファイター(本名は藤沢)などなど。

権田原組の皆さん。とても刺激的なのと、ネタバレ防止のため、弊誌側でぼかし処理をした。
ゲーム内ではぼかし無しでご覧いただける。

サブストーリー(サブクエスト)やミニゲームに絡めて多種多様なキャラが存在しており、上述のような「お約束」キャラについては、シリーズが進むにつれて意外な側面を見せたり、涙あり笑いありの物語を紡いでくれたりする。また、作品やコンテンツによっては味方キャラになってくれる場合もあり、おむつ丸出しの権田原組長や、押しの強い悦子などの世話になることも多い。そのほかにも多様な脇役キャラクターがサブストーリーを伴って登場しており、それらと接してクスッと笑ったり、時には涙したりするのも本作の楽しみのひとつだ。

「極道!任侠!暴力!」だけじゃない、“面白さ満載”の『龍が如く』

『龍が如く0』より

ここまで『龍が如く』シリーズの多彩な側面を紹介してきたものの、ほかにもまだまだ紹介しきれていないユーモアやコンテンツの幅広さがある。「麻雀」「ダーツ」「将棋」といったミニゲームのほか、『龍が如く 極2』ではなんとセガの3Dロボットアクション『電脳戦機バーチャロン』が丸ごと収録されており、さらにはサブコンテンツとして防衛シミュレーション「新・クランクリエイター」が収録。プレイヤーを楽しませようとする意気込みがすさまじく、初めて触れてみればその遊び方の豊富さに驚くはずだ。

そして筆者としては、なにより『龍が如く』シリーズファンとして、ぜひとも先入観をとっぱらって、一度本作を遊んでみてほしい。今回手に取りやすくなる『龍が如く 極』『龍が如く 極2』だけでなく、続くシリーズ作品も本筋は熱い男たちの物語が展開するだけでなく、バラエティに満ちており、その楽しさの幅はどんどん広がっていく一方だ。シリーズ第3作のリメイクと新作を楽しめる『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』も発表されており、激熱なゲーム内容とともに新要素にも期待したい。どうかこの機会に、『龍が如く』の独特のユーモアと世界観に、病みつきになっていただきたい。

龍が如く 極』『龍が如く 極2Nintendo Switch 2版は、11月13日発売予定。12月8日にはPS5/Xbox Series X|S版もリリース予定だ。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

記事本文: 2073