Syohei Fujita

Syohei Fujita

5歳の誕生日に『ポケットモンスター』の『緑』を買ってもらった時から、ビデオゲームは私と共にありました。煎じ詰めればじつに単純なインタラクティビティと光の明滅に、なぜ我々はここまで驚喜することができるのか?この興味深い問いを少しずつ解き明かしていくつもりです。……もちろん普通のレビューも書きます。なんにせよ、すべてのコンテンツは受け手が自分の人生を忘れるために作られますが、驚くべき豊かな未来において、ビデオゲームはその目的を完全に達成すると思います。

『Jalopy』紹介。東ドイツ共産主義時代のおんぼろ国民車でイスタンブールを目指せ、東欧縦断カーシムが教えてくれる人生の意味

「ドレスデン 300km」と記された看板が見える。あなたが乗っている車の最高速度は100km/hだ。ドレスデンに着くまであと何時間かかるだろう。3時間と答えたあなたは、『Jalopy』をプレイするべきだ。なぜならその答えは完全な間違いで、実際には12時間以上かかるから。

魔女の壺を巡る国産アドベンチャーゲーム『マジョのシマ』紹介。流麗なグラフィックによって描かれる、黄昏色の美しい悪夢

『マジョのシマ』の基本的なシステムはポイント&クリックである。プレイヤーは冒頭で呪いをかけられた女性を導いて、島のどこかにある壺の捜索を行う。この特異な状況を好機と見るようゲームが促している、とする理由は、この壺の捜索がかなり序盤で済んでしまうからだ。

田舎暮らし自動車組み立てシミュレーター『My Summer Car』紹介。1995年の北欧のくそ田舎で、こみあげる怒りを紛らわすためにビールを飲め

『My Summer Car』は、1995年の北欧フィンランドのど田舎で、車を組み立てるゲームである。もう一度言う。これはフィンランドのくそ田舎で、車を組み立てるゲームである。そのことは、以下にするトレイラーをご覧いただければ、ただちに了解されるであろう。

超絶シュール・スカム・ポイント&クリック『Paradigm』紹介。核戦争後の東欧を舞台に、遺伝子操作された奇形が行く

『Paradigm』はおそらく、かなり多くの人間にとって、わざわざ時間を割いてプレイするまでもない傑作である。ここでいう傑作というのは、奇妙でおもしろいという意味、「それはケッサクだな!」というほうの意味であって、作品がずばぬけて優れているという意味ではない。

人々の運命を環境から変えて、ループする一日の殺人を防げ。時間操作ミステリーADV『The Sexy Brutale』紹介

『The Sexy Brutale』においては、仮面の呪いとでも呼べそうな不思議な力によって、あなたはループを続ける一日を過ごすことになる。プレイヤーキャラクターであるLafcadio Booneという老執事は、奇妙な仮面をつけたままゴシック調の屋敷の一室で目覚めるのだが、その屋敷は時間の流れがおかしくなっていて、さまざまな場所で複数の殺人が起こる。

すべてのものになれるシミュレーション『Everything』が、私たちにさりげなく勧める「考え」について

『Everything』をプレイする楽しみは、ゲームプレイの快楽というよりも、知性の快楽である。したがってこの作品が提供してくれるのは、精密なコントロールや戦略などの楽しみではなく、百科事典をぱらぱらとめくって、任意の項目を読み進めていく楽しみといえる。

仄暗い巨大船舶を進むADV
『リトルナイトメア』紹介。レインコートの少女の孤独な逃走劇

『リトルナイトメア』は広義のプラットフォーミング(アクション)にあたるが、アクション性に重きを置くというよりも、『INSIDE』が確立したような環境によるストーリーテリングに重点を置いた作品である。基本的な動作は、少女には大きすぎるドアや家具が配された部屋を抜ける謎解きと、彼女を捕まえようとするものたちから逃げ、隠れるといったアクション性を等分に配している。

左遷された元刑事の復活を描くポイント&クリックアクション『Beat Cop』紹介。80年代アメリカ刑事ドラマへの、あふれんばかりのリスペクト

『Beat Cop』は、警察官の視点から80年代のニューヨークのストリート文化を描いたポイント&クリックアクションゲームである。主人公であるジャックは、もとは別部署で刑事として活躍していた男だ。

窒息死と吐瀉物と汚水にまみれた宇宙の地下基地運営ゲーム『Oxygen Not Included』紹介。「Don’t Starve」開発の新作

『Oxygen Not Included』のストーリーはたった3つの短文で終わるうえに、ゲームの冒頭にいきなり表示される。その内容はこうだ――「あなたの隊員たちは、見知らぬ惑星の地下深くの洞窟で目覚めました。奇妙なことに、彼らはどうやってここに来たのか覚えていません。とりあえず掘ってみると良いでしょう」。

極寒の世界を行く私立探偵アドベンチャーゲーム『Kona』紹介。吹雪に閉ざされた村で起きた殺人と超常現象の謎とは

『Kona』は、ハードボイルドな私立探偵モノと極寒の地で起きる超常現象を組み合わせた、意欲的な一人称視点ADVだ。探偵が路肩に突っ込んだまま雪に埋まってしまった愛車のタイヤにチェーンを巻き、どうにかして依頼主との待ち合わせ場所に訪れたとき、そこにはほかでもない依頼主自身の遺体が転がっていた。

コラム――メトロイドヴァニアは胎内回帰である

冗談のつもりで、私は「奥様のメトロイドヴァニアを攻略してください」と返答した。この返答は私の狙い通り編集長の不興をかったが、それと同時に、メトロイドヴァニアというジャンルは胎内回帰のイメージをこれ以上ない美しさで応用しているのかもしれない、というネオ澁澤龍彦めいた奇妙な考えを引き起こした。

ホログラムとして再現された四人の技術者と協力し、テラフォーミングに失敗した惑星からの脱出を計るADV『Alone With You』紹介

この惑星への入植計画は16年前に開始されたが、ある事故によってテラフォーミング工程は失敗し、人類のすべての努力は水泡に帰した。あなたは入植基地に残されたたったひとりの生き残りとして、すべての通信が途絶した惑星からの脱出のために奔走することとなる。

北欧の古民族に伝わる異教の神話が、艶やかな動く絵画で語られていく。2DサイドスクロールADV『The Mooseman』紹介

『The Mooseman』は、フィンランドやノルウェーなどが面するバルト海近辺から、ロシア連邦はサンクトペテルブルグ付近に分布するフィン・ウゴル系民族のあいだで語り継がれてきた神話をもとに、さまざまな表現を広義の2Dサイドスクロール型のアドベンチャーに落とし込んだ作品である。

慣れ親しんだ故郷と人々に、さようなら。ただ別れを告げるだけのウォーキングシミュレーター『Leaving Lyndow』紹介

『Leaving Lyndow』は、少なくとも長い間会うことがないだろうと思われる人々と故郷に、はっきりと言葉で別れを告げる“だけ”の作品だ。ひとたびプレイをはじめれば、この状況はプレイヤーの好奇心をおおいにそそることだろう。

国産無料スマートフォン向けADV『からっぽのいえ』紹介。父と娘、OSとロボットの、愛が死に打ち克つ物語

『からっぽのいえ』は、個人制作者のにょり氏によって開発されたスマートフォン向けの作品である。すでに『ひとりぼっち惑星』で偉大な達成を成し遂げた氏の次の作品は、ミニマルなグラフィックと演出を踏襲しつつ、より内面的な問いかけに富んだ作品となっている。

怖すぎる、でも止められない。丁寧な恐怖演出と禁忌の歴史で巧みに物語を綴る台湾産ホラーゲーム『返校』を紹介

ホラーゲームだというだけで怖いのは無理とそっぽを向いてしまう人はたくさんいると思うが、そのタイプの人間のひとりでありながら、本稿の執筆のためにこの恐ろしいゲームに手をつけることになった私から言わせてもらおう――この記事を閉じずにちょっと待ってほしい。

『Strange Telephone』コラム
――白熱灯は世界を照らし、電話は世界を接続する

先日掲載したレビューでも話題にしたが、『Strange Telephone』はわかりやすい物語によってプレイヤーを引っぱるタイプの作品ではない。まずは魅力的なグラフィックが、その後に謎解きがプレイヤーの興味を惹く。本作の虚構世界を説明するのは、用意された5つのエンディングをすべて回覧したあとの、エンドロールの一枚絵だけだ。

『Strange Telephone』レビュー。
生みだされる美しい無秩序と、それを「制御」する職人芸

『Strange Telephone』は、たったひとりの日本人の開発者、yuta氏によって制作された作品である。プレイヤーが入力する六桁の電話番号の組み合わせによって自動的に生成される「ワールド」を探索し、アイテムを手に入れたり、それらを机や花といったオブジェクトに使用したりして遊ぶ。

コラム――『ゆめにっき』をどのように語るべきなのか

この作品は、そもそもすべての解釈を排してしまうような態度、それについて語られることを拒絶するような構造を持っている。あまりに特異な作品性のために、この作品を分類するには、専用の新しいジャンルを設置することが必要なほどだが、そうなると分類の意味がない。