発売即販売中止ゲーム『The Day Before』の開発元に訴えられたと、なぜかロシアのメディアが報告。「詐欺」との表現などを巡り

Yakutia.infoは3月13日、サービス終了済みゲーム『The Day Before』の開発元Fntasticによって訴訟されたことを明らかにした。

ロシアのヤクーツクに拠点をおくインターネットメディアYakutia.infoは3月13日、サービス終了済みゲーム『The Day Before』の開発元Fntasticによって訴訟されたことを明らかにした。『The Day Before』を巡る一連のトラブルに対して「詐欺」との表現を用いたことなどに対する反発だとされている。

Fntasticは、『The Day Before』を手がけたスタジオだ。同作はパンデミック後のアメリカ東海岸を舞台とするオープンワールドサバイバルMMOと標榜されていた。2021年1月に発表されたのち、幾度も発売延期を重ねながらも2023年12月8日にPC(Steam)にて早期アクセス配信開始された。サーバー問題や品質面などの課題を数多く抱えていた点や、「MMO」と掲げながらも実際のゲームプレイが脱出型PvPvEシューターとなっている点などに多くの不評が寄せられる結果となった。そうした中で開発元のFntasticは12月12日にスタジオを閉鎖し『The Day Before』の開発を中止すると発表。あわせてSteamでの本作の販売も停止され、購入者への返金もおこなわれた。

しかし、それでも事態の収拾には至らなかった。その後スタッフの劣悪な労働環境の中で同作が制作されていたと、元スタッフから相次いで報告された。仕事上のミスを理由に罰金を科すなどの悪質な対応も報告され、さらなる火種となった(関連記事1関連記事2)。そんな状況の中、同スタジオは2024年9月27日、新作ゲームのクラウドファンディングキャンペーン開始とともに、スタジオの再始動を宣言。「Fntastic 2.0」を掲げ、改めてスタートを切ることを表明していた(関連記事)。

そして今回、一連の騒動にまつわる報道に関して、Fntasticに訴えられたととあるメディアが報告。ロシアのヤクーツクに拠点をおくインターネットメディアYakutia.infoは、Fntasticによってヤクーチア仲裁裁判所への訴訟を起こされたとして、自社サイトにて経緯を発表(ロシア語)した。記事によると、Fntasticが提起したのは『The Day Before』の一連のトラブルに言及した2つの記事を掲載したことに対する訴訟とのこと。1つはFntasticの過去の活動に対して「скам(scam/詐欺)」との表現を用いた記事で、もう1つは「Fntasticがほかのゲームのメカニズムを借用した」とするロシアのメディアIXBT GamesのYouTube動画を引用した記事のようだ。

なお、Yakutia.infoは「скам」との言葉はロシア語のなかでも新しく、幅広い意味で使われており、問題の記事においては「詐欺」といった意味合いでは用いていないとしている。同メディアはこの訴訟を受け、記事の内容を修正。「скам」という単語を「恥」や「へま」といった意味の単語に置き換え、映像についても引用であることを明確にした形に修正。しかし、Fntasticはこの対応には満足せず、記事の削除や編集チームの謝罪を要求したという。一方のYakutia.infoもこれを受け入れず、Fntasticの要求は言論の自由を侵害していると主張し、逆にFntasticを反訴する意向を固めたとのこと。

また、Yakutia.infoが拠点とするヤクーツクは、Fntasticが生まれた地でもある。Fntasticはヤクーツク出身のEduard Gotovtsev氏およびAisen Gotovtsev氏の兄弟によって設立されたスタジオ。Fntasticは『The Day Before』の開発時に拠点をシンガポールへと移しているが(Yakutia.infoは現在Fntasticがカザフスタンを拠点としていると報道)、出身地の地元メディアを訴えたかたちだ。『The Day Before』の騒動を巡っては、世界規模の大きなメディアをはじめ、多くのインフルエンサーやユーザーから批判が相次いでいた。なかでも比較的小規模なロシアのメディアを狙い撃ちにした今回の対応には、創業地であることが影響していそうだ。ゲーム業界への復帰を狙うFntasticであるが、いまだ業界からは厳しい視線が向けられている。Fntasticの開発する新作ゲームの行方や今回の訴訟の結果も引き続き注目される。

Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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