Naughty Dog、スタジオ史上最大級の新作『Intergalactic』開発中に“強制残業期間”発生と報じられる。「クランチ脱却」を掲げてきた最中
『Intergalactic: The Heretic Prophet』を開発中のNaughty Dogにて、強制的に残業をさせていたとの関係者証言を、Bloombergが伝えている。

デベロッパーのNaughty Dogは現在完全新作『Intergalactic: The Heretic Prophet』を開発中だ。その開発現場では「強制残業」も発生していたとの関係者証言を、Bloombergが報じている。
Naughty Dogはアメリカ・カリフォルニア州に拠点を置くゲーム開発会社だ。『クラッシュ・バンディクー』シリーズの一部作品をはじめ、『アンチャーテッド』シリーズ、『The Last of Us』シリーズなど、高評価作品を多数手がけたことで知られている。同スタジオはAndrew Gavin氏とJason Rubin 氏によって1984年に設立され、2001年には、SIEの前身であるSCEに非公開の条件にて買収された。なおAndrew氏とJason氏はEvan Wells氏らに社長の任を譲り、Naughty Dogを去っている。
そしてNaughty Dogは2024年12月13日に『Intergalactic: The Heretic Prophet』を発表。宇宙を舞台としたSFであることが伝えられており、プレイヤーは賞金稼ぎのJordan A. Munとして、辺境の惑星Sempiriaからの脱出を目指すことになる。

今回BloombergのJason Schreier氏は、Naughty Dogにおいて10月下旬より7週間にわたって継続的に強制的な残業が実施されていたとの関係者証言を報じた。関係者によれば、週に最低8時間の残業が命じられ、残業時間の記録も求められたのだという。残業が発生した理由としては、SIEがレビューするデモ版の準備のため、開発の遅れを取り戻す必要があったとのこと。それまでに締め切りを複数回逃しており、開発スケジュールの立て直しが図られたことが背景にあったそうだ。
またこの「強制残業」期間においては、通常週3回の出社となっていた勤務形態から、週5の出社対応へと切り替えられたという。一方で勤務時間の上限は設けられていたようで、週60時間以上働かないようにとの指示もあったとのこと。加えて、関係者証言として伝えられるところによると、デモ版が完成した今週には強制残業対応は終了。経営陣は2026年1月末までに順次週3出社の対応に戻していくとスタッフに伝えたという。このことから、今回の強制的な残業対応は、あくまでレビュー用のデモ版作成に備えた臨時対応だと想定される。

クランチと呼ばれる継続的な長時間労働は、ゲーム業界においては以前より問題視されてきた。たとえば『メトロイドプライム4 ビヨンド』を手がけるレトロスタジオは、任天堂に買収される前には休み無しで9か月間働き続けることもあったという、元スタッフによる証言が話題となっていた(関連記事)。また『The Callisto Protocol』を手がけるStriking Distance Studiosの元CEO・Glen Schofield氏が長期間にわたる強制的な長時間労働、いわゆるクランチを肯定するかのような発言をした際には多数の非難が寄せられ、発言の撤回をおこなうという一幕も見られた(関連記事)。
Naughty Dogにおいても過去には“クランチ文化”があったと経営陣が認めており、その結果スタッフの燃え尽き症候群や相次ぐ離職などに見舞われていた(関連記事)。その後の労働環境の詳細は不明ながら、2021年にはプロダクションチームが結成されたようで、主に進行管理面での改善も期待されていた(Bloomberg)。また2024年には『The Last Of Us Part 2』の制作風景を収めたドキュメンタリーにおいて、同スタジオが“クランチ風土”で有名であることを踏まえ、「慣行を終わらせ、今後クランチをなくすことを目標にしている」との方針も語られていた。
今回、そんなNaughty Dogにおいて強制的な残業が要請されていた点で今回の報道は注目を集めている。あくまで7週間限定かつスタッフらの残業時間の管理もおこなわれていた様子ながら、スタジオの大部分が残業を義務化されたのはここ数年で初の事態だという。開発後半にふたたび“クランチ文化”が復活してしまうことも懸念視されているようだ。
なお『Intergalactic: The Heretic Prophet』はNaughty Dog史上もっとも大規模かつ野心的な作品になるとのこと(Variety)。2020年より開発が進められており、今回のBloombergの報道によれば現状では2027年半ばの発売が計画されているそうだ。今回の“立て直し”により、スケジュール通りに開発が進むような進行管理も望まれるところだろう。
『Intergalactic: The Heretic Prophet』は、PS5向けに開発中。
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