今年の、恐ろしいゲームの思い出。AUTOMATONライター陣が打ち明ける、2024年の「ゲーミング・トラウマ大賞」

今年2024年を振り返る、AUTOMATONの年末企画第1弾。弊誌ライター陣によるゲームにおける今年のトラウマエピソードを紹介していこう。

今年2024年を振り返る、AUTOMATONの年末企画第1弾。楽しいことばかりじゃないのは、ゲームにおいても同じ。恐ろしい難易度、名状しがたい恐怖、思わぬ失策。本記事では、弊誌ライター陣によるゲームにおける今年のトラウマエピソードを紹介していこう。苦い思い出はいっそ吐き出して、新年を迎えたい。


「ハット引き寄せじゃないが」

『不思議のダンジョン 風来のシレン5plus フォーチュンタワーと運命のダイス』

開発元・販売元:スパイク・チュンソフト
対応機種:PC/Nintendo Switch

楽しみにしていた『シレン6』は、結局発売されても買わなかった。なぜか?決着を付けなければならなかったからである、前作の『シレン5plus』と。同作で「2強」とされる2つのダンジョン、「わくわくパラダイス」と「あらしの森」が未攻略で残っており、これを片付けないことには大手を振って『シレン6』をプレイできまい。この不要なプライドで、地獄を見ることになった。ゲーマーは愚か。

「わくわくパラダイス」と「あらしの森」をデザインした人間には人の心がないのでおそらくはプレイヤーのことを実験動物か何かとしか思っておらず、そのことが漏れ出ているポイントはいくつもある。全てを網羅すると1万字は余裕で書けるので、ここでは端的に一番許せない生物について書かせていただく。そう、ドレッドラビである。

このウサギ、「フロア全体からシレンとモンスターを呼び寄せて自分の周りに配置する」というおぞましい能力を持っており、このゲームのあらゆるダンジョンにて猛威を振るっている。正直に言って本作においては「みだれ大根」よりも怖いという超S級危険生物なのだが、なぜか「わくわくパラダイス」では本来の出現階層よりも25F近く浅い31Fから出現してくる。なぜ?ラビ対策は基本的には「動かずの盾」しか確実なものがないため、31Fまでにこれを引けなかった場合は祈ることしか出来ない。また「あらしの森」では85Fから上位種のテリブルラビ2が「ゾウ」「バシャーガ」「ゲイズ」「ノロージョ」と言った色とりどりの危険生物と一緒に配置されており、こちらも冗談ではなく1ターンで詰まされる可能性がある。

夢の中でまでウサギに引き寄せられ、神経をすり減らしながらこの2ダンジョンを99Fクリアした結果、「ちょっとしばらくシレンはいい」という本末転倒な精神状態になってしまった。そしてまごついているうちに『シレン6』のSteam版が出たというではないか。再び戦いの時は近い。でも『シレン6』にラビはいないらしい……それはそれでなんだか寂しいかも。
by. Mizuki Kashiwagi


「VRでもかき消せない」

『VRChat』

開発元・販売元:VRChat Inc.
対応機種:PC/Meta Quest/PICO/Android

筆者は3Dモデルを自作しており、『VRChat』を始めたのはコミュニケーションではなく、自作3Dモデルを動かしたいという動機からだった。さっそくゲームをダウンロードし起動した筆者だったが、早々に壁にぶつかる。自作3Dモデルのアップロードにはフレンドを作ったりなど、ある程度『VRChat』内で活動をしなくてはならないらしい。

目的を達成するには、フレンドを作らねばならない。そうして筆者は小学生ぶりに友達作りに励もうと知らない人と話した。が、そこで不思議なことが起こる……自分が喋った後や相手が喋った後に、妙な間が開くのだ。居心地の悪い妙な間が。相手のさまざまな質問に、「はい」や「そうですね」といった返答をすると、なぜか相手が喋り出すまで5〜6秒ぐらいの間が開く。ネット回線が悪いのか?マイクなどの異常か?焦りつつ色々調べてみても、なんら異常はない。そうして一人困っていたところ、あることを思い出す。

そうであった。筆者は知らない人と全く喋れないのだ。どうしても苦手すぎて、淡泊な返事しかできない。樹木と話していたほうがまだ世のためになるかもしれない。気まずすぎる間が開くのは絶対にそれが原因である。「自分の望む見た目になったところで中身までは変われない」という、VR世界の残酷な事実を、筆者はプレイ開始から数時間後に突きつけられてしまった。その日の夜は疲れているのにぜんぜん寝付けなかった。

しかし、そんな折に筆者は気がつく。頑張って知らない人と話すより、そもそも仲のよい友達を『VRChat』に連れてきて、ゲーム内でフレンドになってもらった方が心労も手間も少ないと。筆者にとって会話における「知らない人と友達」の違いを例えるなら、苦手教科の抜き打ちテストと、得意教科の事前対策済みのテストくらいの差がある。筆者は抜き打ちテストなんてしたくない。そうして筆者は早速、ゲーム内に友達を“インポート”し、無事に試練をクリアできた。自作3Dモデルを動かせて大満足……ではあるものの、なんとなく虚しさが心の隅に残っている。
by. Sen Ito


「私は誰の腹上で死んだのか」

『Elin』

開発元・販売元:noa(lafrontier)
対応機種:PC

今年は健やかなゲーミングライフを送っていたが、2024年も終わりに差し掛かった頃にリリースされた『Elin』で度肝を抜かれる事態が起きた。もともとめちゃくちゃをするタイトルなのは知っていたけれど、まさかここまで想像の斜め上を超えてくるとは。

私は『Elin』をサキュバスで遊んでいる。「気持ちいいこと」で成長するというコンセプトが面白いと思ったからであって、断じて下心からではない。47歳男性のサキュバスである筆者のキャラクターは、今日もせっせとNPCを誘惑して自己研鑽に取り組んでいた。

事件はウィロウで起きた。ゲーム開始からお世話になっていたエイシュランドがホームを去ることになり、さみしくなって挨拶に行ったのだ。彼に再開できた嬉しさに舞い上がった私は、サキュバスの固有アイテムである「夢蟲」を街中にばらまいた。もちろんエイシュランドの鞄にも押し付けた。それから街の片隅でハンモックを広げ、期待に胸を踊らせながら眠ったのだ。

その晩は一大パーティーであった。一人が夜這いにやってきては体力を削いでいき、息もつかせぬうちに次の人間の相手をすることになり、怒涛の勢いで小部屋がキャラクターグラフィックで埋め尽くされていった。「はぁはぁ」「すごい!」といった湿度の高い吹き出しの量に、嫌な予感がしたのも一瞬。あっという間に体力ゲージはマイナスに振り切れ、人に押しつぶされるようにして欲深く哀れなサキュバスは死んでしまった。

私は『Elin』でのこの経験から、後先を考えず欲望に身を任せることの危うさを知った。来年はもう少し思慮深く生きていければ良いな、と思うが……どうだろう、あまり自信はない。
by. Aki Nogishi 


「地獄を日常とし、絶望を友として」

『Senua’s Saga: Hellblade II』

開発元:Ninja Theory
販売元:Xbox Game Studios
対応機種:PC/Xbox Series X|S

今年もゲームには散々な思いをさせられた。貴重な時間を吹き飛ばされた。ケアレスミスで勝てる試合を落とした。謎解きに詰まって自分の頭の悪さに泣いた。遊びすぎて身体を痛めた。もう最悪である。なかでも本当につらい思いをしたのが、『Senua’s Saga: Hellblade II』だ。精神を患った主人公と、美しくも残酷な世界がもたらすのは、プレイするたびに心へ亀裂が入るゲーム体験。直接的な暴力ではなく、巨大な口内炎ができていつまでも治らないような不快感。戦闘アクションはどこまでも痛々しく、進行中に挿入される幻聴や幻覚を隣人としたコミュニケーションは筆者のつらい経験をときおりフラッシュバックさせるほどの描写力を誇った。嫌いな人間からLINEの通知が来て心臓がキュッとなる感覚。夜中に不快な思考が湧き出て止まらないあの感じ。それでも生きねばならない絶望と命の力強さ。

本作のゲームプレイは至って平坦であり、非常にシンプルだ。じゃんけん気味な戦闘を挟みつつ、謎解きをこなしていればクリアできる。一方、主人公とプレイヤーの内心はぐちゃぐちゃである。ゲームプレイが日常(とはいっても主人公にとっては激動の時間であるが)のように静かだからこそ、極まった心理描写がじわりじわりと活きてくる。ゲームの中にはトラウマをなぞるような「不快感」によって情動を揺さぶる作品もまた沢山存在するが、『Senua’s Saga: Hellblade II』はその点において指折りの作品であると私は感じた。ぜひ心に余裕があるときにプレイしてほしい。
by. Takayuki Sawahata


「ああ!横に!後ろに!」

『Void Stranger』

開発元・販売元:System Erasure
対応機種:PC

『Void Stranger』は、フィンランドのインディースタジオSystem Erasureが開発した『倉庫番』風なパズルゲーム。主人公は失われた何かを求め、底知れぬ「Void」に単身挑む。本作は『倉庫番』ライクを自称しながらも「残機制」を採用しているなど、独特なシステムが特徴的だ。筆者はインターネットで本作を力強くすすめる文章を何度か目にしており、そのただならぬ熱意が購入の決め手となった。

しかしあろうことか、『Baba Is You』でパズル筋を鍛えたと調子に乗っていた筆者は、『Void Stranger』の無慈悲なパズルのラッシュに打ちのめされてしまった。ゲームの性質上詳細は控えるが、本作は周回要素が用意されている。そのため筆者も数度、同じステージ群を周回している。何度も行き来しているなかで、すっかりと心に恐怖を植え付けられたステージがある。その名も「B071」。

この「B071」はステージ全体が狭く、身動きがとりづらい。敵に前後左右から攻められると、一瞬で追い詰められてしまう。精度の高い操作が求められる難関ステージだ。前述の通り、本作は『倉庫番』ライクゲームでありながら、残機制を採用している。少しのミスが文字通り命取りになるこの部屋で、何度リトライしたことか。そのパズルゲームらしからぬ緊張感が、じわじわと筆者の心をむしばみ、遂には拭えないトラウマになってしまった。

これは後ほど知ったことだが、「B071」はSystem Erasure公式Discordでは「例の部屋」「あの部屋」などの異名で親しまれ(?)ている。一部のファンからは「ここではその名を言ってはならない」と冗談まじりに言われるほどだ。少なくとも、「B071」の餌食になったのは筆者だけではないと、なんとか胸をなでおろすことができた。もし「Void」に挑戦する読者がいるなら、本作ストアページのアドバイス通り、プレイの際に適度に休息をとることをおすすめしたい。
by. Chen Lichun


「広すぎて孤独すぎて、まるで宇宙」

『Dreamcore』(体験版)

開発元:Montraluz
販売元:Tlön Industries
対応機種:PC

不気味な空間「リミナルスペース」を歩き回る一人称視点のウォーキングシミュレーター『Dreamcore』。その第1ステージは、広大な屋内プール建造物の中を探索し、ランダムスポーンするフラッシュライトを探してゴールを目指すプレイ内容となっている。何かが起こりそうだが、決して何も起こらない空間をひたすら歩きまわるゲームだ。筆者は今年2月のSteam Nextフェスにて本作の体験版に触れた。

ホラーに耐性のある筆者は、軽い気持ちで体験版をスタートしたものの、1時間、2時間と歩き回るうちに不安にとらわれた。もう二度と「行きたいどこか」へたどり着けないのではないかという不安。無機質な白いタイル張りの景色が延々と続く中、どれだけ歩いても「一度通った場所」に再度たどり着くことがないのだ。あまりにも分かれ道が多く、あまりにも広すぎる。ひとつの部屋に14もの出口があり、すべてがまったく繋がり合っていないときもあった。スタートにも戻れないがゴールやクリアも依然見えてこない。進んでいるつもりで、遠ざかっているに違いない。

あまりにも静かで孤独だ。空が見える場所はなく、ここが閉ざされた空間であることだけがわかる。マップもなく、複数の階層が複雑に絡み合っているため、一向に土地勘が身につかない。あたかもここに来てからの記憶を繰り返し消されているような感覚だ。今、クリーチャーが出てきたら、自分以外の生命体がいることでいっそ安心するのではないか。そのくらい孤独を感じた。6時間ほどは彷徨ったがライトすら見つからず、結局クリアできなかった。

もし宇宙に放り出されて、もう母星に帰れないとなったらこういう気持ちになるのかもしれない。その日は夢でも屋内プールの中を歩き続けていた。
by. Kei Aiuchi


「耳にこびりつくリズム」

『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』

開発元・販売元:任天堂
対応プラットフォーム:Nintendo Switch

『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』は、昨年2023年10月に発売されたゲームだ。筆者は発売直後からプレイして、昨年内にクリアしていた。「ではなぜ今年のトラウマに?」と、不思議に思われるかもしれない。理由はシンプルで、年を跨いでもゲームクリアとは関係のない、あるひとつのステージにずっと詰まり続けていたからだ。

筆者を苦しめ続けたのは「モックモック高山SP 天空のリズムブロック」だ。メトロノームのような効果音と共にBGMが流れ、リズムにあわせて足場や壁となるブロックが出現し、少し時間をおいて消えていく。ブロックに乗る、あるいは壁ジャンプをし損なうと、下から迫ってくる即死のダメージエリアに飲まれてしまう。

このステージに筆者が苦戦した原因は明快。横スクロールアクションが苦手だからだ。嫌いではないものの、普段遊ばないジャンルの筆頭となっている。さらに遊ばないジャンルの双璧をなすのが、リズムゲーム。つまり「モックモック高山SP 天空のリズムブロック」は、筆者にとって天敵だったのだ。

そんな筆者は、フレンドと共に週末にゆるゆると本作をプレイしていた。ほかのステージではお互いを復活させあいながら楽しんでいたものの、このステージではリズムがあるゆえに復活して立て直すことが非常に難しい。筆者とフレンドはこのステージで残機を使い果たし、貯め込んだフラワーコインも残機の購入に使いこみ破産。それでもクリアは叶わなかった。『スーパーマリオ』でこんな世知辛い思いをするとはよもや思わなかった。

結局貯められるだけフラワーコインを貯め込みリベンジ。「ちょっとずつ上達してる!」と運動部のようにお互いを励まし合いながら徐々に歩みを進め、ようやくクリアを迎えたとき、フレンドは道半ばでタマシイになっていた。ひとりだけの登頂だったことも苦い思い出になった所以かもしれない。
by. Hideaki Fujiwara


「進化した嫌がらせ(進化するな)」

『エルデンリング』DLC「SHADOW OF THE ERDTREE」

開発元・販売元:フロム・ソフトウェア
対応機種:PC/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One

さまざまなトラウマを生み出した『エルデンリング』発売から2年。DLC「SHADOW OF THE ERDTREE」を引っ提げて『エルデンリング』が帰ってきた。さんざん痛い目を見せられたが、今回はこちらも丸腰ではない。なんたって鍛え上げたレベル180の戦士でスタートできるからだ。苦戦はしつつも、強靭な体力で切り拓いていく道。事故死は減ったし、英雄墓はないし、DLCはさほど苦戦しなかったな。そう締めくくることも考えていた時、奴が現れた。サソリ川の地下墓である。

サソリ川の地下墓のひと味違うところは、「独自のルールギミック」があること。「バジリスク像に見つめられているだけで死にます」。なんじゃそら!初見では何が何かわからず死に、原因を突き止めてもちゃんとパニック要因になり他の死因を誘発する。「バジリスク像から避けないと!あ!インプ!穴!あ!あ!」。ひとつのギミックで、いろんなパターンの死を味わえますね、じゃないんだよ。いきなりこの地下墓のみ出てくる変なゲームギミックを追加するな!死の苔で対策しても怖いものは怖い。

このギミックの恐ろしいのは、いくらキャラを鍛えていようと問答無用で死ぬこと。能力貫通である。そういえば、DLCは能力貫通即死ギミックが多かった。奈落の森も、サソリ川の地下墓に劣らずトラウマ。プレイヤーキャラがムキムキになってしまっているので、こうした手段をとるのは理解できる。ただ、作中屈指の嫌がらせ敵・バジリスクを進化させようという発想がフロム・ソフトウェアである。いや、このマップでだけ出てくるというのは良心が残っていた証拠かもしれない。本編英雄墓のトラウマレベルが強烈すぎてやや霞むものの、サソリ川の地下墓も立派なトラウマダンジョンである。フロム・ソフトウェアの次回作にはどんな嫌がらせがあるのか、ドキドキと高揚の気持ちが交錯して情緒がどうにかなってしまいそうである。
by. Ayuo Kawase

AUTOMATON JP
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