『サイバーパンク2077』開発者、作中にいっぱいあるエレベーターは「ローディング誤魔化し」じゃないと断言。街中シームレスだからそもそも不要
『サイバーパンク2077』に登場するエレベーターは“ロード画面隠し”を意図したものではないという。

ゲームにおいて、裏でローディングがおこなわれていることを誤魔化す目的で配置されることもあるエレベーター。ただ『サイバーパンク2077』を手がけた開発者によると、同作に登場するエレベーターはそうした“ロード画面隠し”を意図したものではないという。
『サイバーパンク2077』は2020年12月10日発売のオープンワールドアクションゲームだ。『Cyberpunk 2.0.2.0.』など、テーブルトークRPGの『Cyberpunk』シリーズを原作としている。舞台は欲望渦巻く近未来都市ナイトシティ。とある出来事をきっかけとして、脳内にジョニー・シルヴァーハンドの人格データが入り込んでしまった主人公Vの物語が繰り広げられる。

同作を手がけたCD PROJEKT REDは現在続編の制作に着手しており、今年5月にはプリプロダクション段階に突入していることを発表。「Project Orion」と呼ばれていたプロジェクト名は「Cyberpunk 2」に変更されて開発中であるという。なお『ウィッチャー』シリーズを含むスタジオの過去作では内製エンジンであるREDengineを採用していたが、今後はUnreal Engine 5を用いて開発されることが発表されている。
そんなCD PROJEKT REDの開発者であるIgor Sarzynski氏のポストが話題を呼んでいる。Sarzynski氏は『サイバーパンク2077』にてシネマティックディレクターを務め、「Cyberpunk 2」にもクリエイティブディレクターとして携わっている人物だ。同氏は「mini rant(ちょっとした愚痴)」として、『サイバーパンク2077』の作中に登場するエレベーターは“巧みなロード画面隠し”ではないと語った。
というのも、特にオープンワールドゲームなどではロード画面を挟まないシームレスな遷移を実現するために、エレベーターなどがローディングの役割を兼ねて用意される例もあるという。たとえばBungieにて『Marathon』のアソシエイト・ワールドデザイナーを務めるCollin MacGregor氏が、エレベーターがロード画面を誤魔化す目的に用いられる場合があるという秘密を明かしていたこともある(関連記事)。昇降中には自然に待ち時間を作ることができるうえ、周囲の景色が見えないという点で、エレベーターは裏でロードをおこなうにはぴったりなオブジェクトであるともいえる。
『サイバーパンク2077』でも多くのエレベーターが登場。たとえばナイトシティに十数棟存在し、Vの自室も位置するメガビルディングでは、各階へ出入りする際に頻繁にエレベーターを使用することになる。ほかにも、本編ACT 1のストーリーで訪れる100建てのホテル「紺碧プラザ」や、DLC「仮初めの自由」に登場するドッグタウン随一の高級クラブ「ブラックサファイア」などにおいて、長時間のエレベーター移動が存在する。ただ本作においてそうしたエレベーターはあくまで移動演出であり、ロードを誤魔化す意図はないようだ。

Sarzynski氏はロードを誤魔化す必要がない根拠として、同作ではロード画面なしで街中を走り回ったり、巨大で複雑な建物内部に入ったりすることができるため、ペントハウスを読み込むためだけであればエレベーターのトリックは必要とならないことに言及。というのも、ファストトラベル時やミッション内での暗転を除き、本作では基本的にはオープンワールドのマップの隅々までシームレスに移動可能。技術的にはロードを待つ必要はなく、前述したようなロードを誤魔化す目的にエレベーターが用いられているのではないと同氏は説明したわけだろう。「エレベーターを透明にすることだってできる」とも述べており、メガビルディングなどの大きな窓のあるエレベーターもそうした仕様によって実現されているのかもしれない。また同氏はこうしたロード要らずの設計を実現できたREDengineについて、「miracle(奇跡)」と表現している。
なお同氏は「エレベーターは意味があるからそこにある」とも発言。作中のエレベーターが持つ明確な役割について示唆した。そもそも長いエレベーターの待ち時間はプレイのテンポを考慮するのでれば、暗転でカットすることも可能であったはず。ただ、ストーリーにおいてはエレベーターで、ジョニーをはじめとするキャラクターたちとの会話も発生。なかにはVのこれからの行動を左右する重要なシーンも存在する。もしかすれば、ひと呼吸ついて緊張をほぐしつつ、次に向かうための気持ちを入れる時間にしているというプレイヤーもいるかもしれない。もっとも、ナイトシティに立ち並ぶビル群の高さを表現しつつ、世界が一繋ぎのものであることをプレイヤーに感じさせてくれる要素として貢献しているのだろう。
ロード画面を誤魔化すための工夫として用いられることもあるというエレベーターだが、今回は別の演出上の目的があることを開発者が説明するという珍しい例となった。本作は発売当初パフォーマンス面の課題も多く抱えていたものの、たび重なるアップデートで改善が施されてきた。開発者としては、REDengineのポテンシャルを引き出すようなブラッシュアップが続けられてきたということかもしれない。

とはいえ、Sarzynski氏はゲームエンジンの開発ではなく“ゲームの開発”に集中するためにUnreal Engine 5に切り替える決断がなされたことを示唆している。CD PROJEKT REDでは現在、Unreal Engine 5にて新作『ウィッチャー4』と先述した「Cyberpunk 2」が開発中。このうち『ウィッチャー4』ではEpic Gamesとの協業のもとで、CD PROJEKT REDのオープンワールド設計哲学に特化した強力なツールの開発と既存機能の拡張に取り組んでいるという(関連記事)。最適化不足が指摘される採用作品も見受けられるUnreal Engine 5ながら、そうした連携によって今後のCD PROJEKT REDの新作も“ロード画面隠し”なしで展開されていくかどうかは注目されるところかもしれない。
『サイバーパンク2077』はPC/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S向けに販売中。本編と拡張パック「仮初めの自由」をセットにした『サイバーパンク2077 アルティメットエディション』はPC/PS5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch 2で販売中だ
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