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「一人称視点よりも三人称視点のほうが素早くゲームをクリアできる可能性」示す研究結果。“見渡せる強み”は速さのカギか
一人称視点か三人称視点かといった要素は、ゲームにおけるパフォーマンスや没入感と関連しているのか。

国立台湾科技大学の研究チームは10月5日、ゲームにおけるパフォーマンスや没入感がどういった要因と関連しているのかという研究結果を公開した。「視点・ゲーマータイプ・性別がシューティングゲームにおけるパフォーマンスと没入感に与える影響(Effects of viewpoint, gamer type, and gender on game performance and immersion in shooting games)」と題するこの論文は、コンピュータサイエンスにおける査読(第三者による検証)付きの国際学術誌「Discover Computing」第29巻に掲載され、オンライン版はSpringer Nature Linkより誰でも無料で閲覧可能だ。
本論文では研究チームが独自に製作した3Dのシューティングゲームを用い、参加者に4つのステージ(タスク)を提示。それぞれのタスクの突破にかかった時間や射撃数を測定し、それが一人称か三人称かという“視点”と関連するのか、あるいは参加者がカジュアルゲーマーかハードコアゲーマーかという“ゲーマータイプ”に関係するのか、はたまた性別によってクリアタイムに差が生じるのかといったことを網羅的に検証した。また、4つのタスクを終えた後には没入感に関する質問も行われ、どれだけそのゲームに入り込んでいたのか、という点からも調査が行われている。

結果として“視点”という観点からは三人称視点が、そして“ゲーマータイプ”という観点ではハードコアゲーマーが、タスクの完了時間の短さと総合的に有意な関連を示した。なお戦闘を主眼としたタスクにおいては、ハードコアゲーマーがカジュアルゲーマーの約3分の1の発砲数でゴールに到達した一方、三人称視点と一人称視点で有意な差は認められていない。またゲームへの没入感に関しては、これも視点による有意差は確認されなかったものの、性別とゲーマータイプという2つの要素間では互いに作用しあう傾向が見られた。具体的には、ハードコアゲーマーのグループにおいて女性が男性よりも高い没入感を報告した一方、カジュアルゲーマーにおいてはこうした性別による差は見られなかったのだ。以下では、これらの概要や本研究における限界点などについて、もう少し細かく紹介していく。
割としっかりした3Dシューティングゲームを作ってた
本調査における参加者は、ソーシャルメディアを通じて集められたゲーム経験のある100人の若者だ。平均年齢は約20歳で、一部大学院生を含むものの大半が大学生となっている。男性45名、女性55名となっており、全員が右利きだ。なお参加者の募集について本論文では、参加した人が他の参加者を誘う形での募集となった点が記載されている。
各参加者は実験に先立ち、ゲーム経験を問う「ゲーマー熱中度(Gamer Dedication: GD)」という指標への回答を行った。研究チームは、このGDのスコアが一定以上(56点以上)かつ、週のゲームプレイ時間が20時間以上のプレイヤーをハードコアゲーマーとし、どちらか一方でも満たさなかった参加者をカジュアルゲーマーとして扱っている。またゲームプレイ上の視点についても、三人称か一人称かは事前に割り当てられ、性別やゲーマータイプが偏らないよう、できるだけ均等に配分したとしている。

今回の調査のため、研究チームはUnity Asset Storeの素材から3Dのシューティングゲームを制作している。これはタブレット上で動作し、11インチのAndroid搭載型Xiaomi Mi Pad 5が使用されたそうだ。参加者は研究者による説明のあと、設定された4つのタスクをランダムな順番でプレイ。ゲーム終了後には没入感に関するアンケート(Immersive Experience Questionnaire:IEQ)が行われ、謝礼として5ドル(約790円)が支払われたとのこと。

制作されたゲームについては、「開始地点から出口に到達すること」が4つのタスク共通のクリア条件とされた。また、タスクそれぞれにサブ目標が設定されており、達成することで次々に目標が更新されていくかたちとなっている。サブ目標の内容はタスクによって異なり、戦闘を重視するタスク2と4では「全ての敵の排除」といったサブ目標が提示されることが多い一方、移動を重視するタスク1と3では「出口の発見」がサブ目標となっている場合があるそうだ。配置されている敵は攻撃もしてくるが、被弾してもゲームオーバーにはならず、プレイヤーの移動速度が低下する仕様となっている。多く被弾してしまうとそれだけクリアタイムが遅くなってしまうかたちだ。
三人称視点は見やすく、熟練のゲーマーは上手かったという話
参加した100人がそれぞれの条件下でゲームをプレイした結果は以下の表にまとめられている。nはその集団に属する人数となり、Task1~4の下部の数値はタスクの平均的なクリアタイムを示す秒数だ。なお、()内の数値は一人一人のタイムがどれだけバラけているかを表している。これが小さければ皆同じようなタイムでクリアしていると考えられる。

本論文では4つのタスクを総合し、視点・ゲーマータイプ・性別がそれぞれクリアタイムにどう影響しているのか分析が行われた。くわえて、視点が違うとゲーマータイプによってクリアタイムが変わるかなど、「ある要素による差が、別の要素の条件によって変わるか」といった交互作用も考慮された。さらに、視点・ゲーマータイプ・性別にくわえて、“タスクによってどう違うのか”という4つの要素も考慮の対象になっている。以下の表は、視点・ゲーマータイプ・性別・タスクと、それぞれの交互作用ごとにタスクの平均クリアタイムに有意な差が見られるかを分析した結果だ。

4つのタスクを統合して分析した結果、三人称視点の参加者と、ハードコアゲーマーの参加者は、それぞれ完了時間が有意に短かった。とはいえ、各タスク全てで個別に有意だったという訳ではなく、総合すると統計的に有意な結果が得られたという点は留意されたい。なお、効果の向きは全てのタスクで同様の傾向を示していた。つまり、ゲームに慣れ親しんだプレイヤーが素早くタスクを完了するのはもちろん、一人称視点ではなく、三人称視点ほうが短い時間でタスクをクリアする傾向が見られたことになる。研究チームはこの結果について、三人称視点では視野を広く確保でき、周囲の空間認識や状況把握をより効果的に行えていたのではないかと指摘している。
一方、戦闘を重視するタスクでは射撃数について視点による有意な差が見られていない。このため著者らは、三人称視点の完了時間に対する優位性が、敵への関与の度合いに起因するものではないと解釈している。つまり、三人称視点だから敵を無視してゴールに直進しやすかった、というようなことではないと見られる。とはいえこれは射撃数の分析結果に基づく解釈であり、実際の交戦状況まで詳しく検証されたわけではない。なお射撃数ではハードコアゲーマーの優位が顕著で、複雑な戦闘タスクではカジュアルゲーマーの約3分の1の射撃数でタスクを完了していた。
また、視点と性別の間には交互作用も見られた。移動を重視するタスク3では、男性参加者は三人称視点の方が一人称視点より大幅に速く完了した一方、女性参加者では両視点の間に有意な差が見られなかった。研究チームは、空間的な課題における性別の影響は一定ではなく、インタフェース側の視点調整によって変わりうると説明している。ただし、この結果はタスク3の個別分析で得られたもので、4タスクを統合した分析では有意ではなかった。

ちなみに没入感については、視点による差は見られなかった一方、性別とゲーマータイプ間の交互作用そのものが統計的に有意だった。平均値を見ると、ハードコアゲーマーの男性は没入感が最も低く、ハードコアゲーマーの女性やカジュアルゲーマーの男女は同程度の没入感を報告している。研究チームは、ゲーム経験の多さが没入感の高さに直結するわけではなく、ゲーム経験と没入感の関係が性別によって異なる可能性を示唆している。なおハードコアゲーマーの男性参加者にとって、今回設定されたタスクが簡単すぎた可能性も指摘されている。ゲームに没入するために必要な“挑戦的内容”が不十分だったとも考えられるとしているが、タスクの難しさは今回測定されておらず、この解釈は検証されていない。

今回の研究では研究チームが試作したゲームを用いて、一定の環境下でさまざまな条件を複合的に検証している。しかしながら、研究チームは本論文においていくつかの限界点が存在することを認めている。
一つ目は参加者層の偏りだ。参加者はソーシャルメディアでの紹介を通じて集められた18〜30歳の大学生が中心で、無作為に選ばれたものではない。次に指摘されているのがハードコアとカジュアルの分け方だ。どれだけゲームをプレイしているか、といったことは単純な二元論で語られるものではなく、本来は連続的なグラデーションであるという考え方だ。またパフォーマンスの指標についても、完了時間と射撃数が中心で、命中率や被弾回数、迷子になった時間などは見ていない。さらに、空間能力などの個人差は測定されておらず、視点と性別の関係についての説明は現時点では仮説にとどまっている。没入感についても、全タスク終了後にアンケートで一度だけ測定しており、タスクごとの違いは分かっていない。
研究チームは、今回の結果は用いた試作ゲームとタブレット、そして参加者に特有のものだと認めている。ほかのゲームやPCといったプラットフォーム、異なるゲーマー層を対象にした場合は、また結果が違ってくる可能性もあるのだろう。
とはいえ、「一人称視点と三人称視点のどちらが総合的にゲームをクリアしやすいのか」という問いについて、一定の回答が得られた点は興味深い。論文では先行研究を引用し、一人称視点は細かな作業に向くなどの利点が述べられているため、実際のところ全てのジャンルで三人称視点が優位性を持っているわけではないと思われるが、今回用いられたシューティングゲームではその優れた点が統計的に示されたかたちだ。
ちなみに、一人称視点と三人称視点が切り替え可能な人気作もさまざま存在。『The Elder Scrolls IV: Oblivion』以降のBethesda Game Studios作品のほか、今年2月に発売された『バイオハザード レクイエム』は発売当初から一人称視点と三人称視点の切り替えが可能となっていた。『バイオハザード レクイエム』についてはSteamにおけるクリア率が約73%であり、『バイオハザード RE:4』『バイオハザード ヴィレッジ』といった過去のシリーズ作品よりも高めになっている(関連記事)。もちろんゲームのクリアしやすさは難易度やボリューム、コンテンツ内容など視点以外のさまざまな要因も関わっているとみられ、視点の切り替えがクリア率の高さにつながったかどうかは不明だ。とはいえ、好みの視点でプレイできるシステムは幅広いプレイヤーが遊びやすいアクセシビリティ上の配慮といえるだろう。
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