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『Call of Duty』のチート対策は「使う側も潰し、売る側も潰す」二正面作戦に。“年間推計5500億円規模の巨大チート市場”を、根元から叩く
Activisionは9月18日、同社のチート対策チーム「TeamRICOCHET」にまつわる情報を公開。巨大な“チート経済圏”そのものを攻撃する方針を明らかにした。

『Call of Duty』シリーズなどを手がけるActivisionは9月18日、同社のチート対策チーム「TeamRICOCHET」にまつわる情報を公開。TeamRICOCHETは、チート利用者のアカウント停止だけではなく、販売業者にも圧力も強めることによって、不正行為全体では推計で85億ドルにもおよぶという“チート経済圏”そのものを攻撃する方針を明らかにした。
Activisionは、『Call of Duty』シリーズに向けてアンチチートシステム「RICOCHET Anti-Cheat」(以下、RICOCHET)を展開している。近年のPC版のシリーズ作品ではカーネルレベルドライバーも用いながら、不正行為の検出やアカウント停止措置などをおこなっている。またTeam RICOCHETでは、RICOCHETの開発・運用のほか、チート業者への法的措置など包括的なチート対策をおこなっている。RICOCHETは、今年10月23日発売予定の『Call of Duty: Modern Warfare 4』にも実装予定で、先行ベータテストでは新しいチート検知システムも導入されたという(関連記事)。

不正行為全体の市場は、推計1兆円級
そんなTeam RICOCHETは自身の公式ブログで9月18日、同社がおこなっているチート行為への対応と、チート産業の現状について報告した。まずIntorqaの調査を紹介し、巨大産業と化しつつあるチート業者の背景を解説している。
ゲームに関連する不正行為などの脅威情報を収集・分析するIntorqaの調査によると、チート業者が得る収益は年間約35億ドル(約5500億円)にのぼるという。この推計は、調査対象となった15タイトルを対象に、ゲーム会社が公表したBAN済みアカウント数やプレイヤー人口、チートツールの価格と、市場データなどをもとに算出されたものだ。ただしチート市場は実態を把握しづらく、調査対象外のタイトルや地域まで含めれば市場規模はさらに大きくなる可能性が高いとしており、「年間約35億ドル」という推定値はあくまで下限にあたると説明している。
また、ゲームにおける不正行為の市場は、チートツールの販売だけにとどまらない。アカウント売買やブースティング、スプーファー(ハードウェアBANを回避するためのツール)など、その周辺にもさまざまな市場が形成されている。こうした行為は厳密には違法でない場合が多いものの、ゲームの利用規約によって禁じられている場合が多い。同社はマーケットプレイスのアクセス数や一般的なeコマースの購入率などから、これらの周辺サービスの市場規模も推計。その市場規模は中央値で年間約50億ドル(約7800億円)に達するとみている。
ここに、前述したチートツールの販売による年間約35億ドルの収益を加えると、ゲームに関連する不正行為全体の市場規模は年間約85億ドル(約1兆3300億円)に達するとの見立てだ。これは2026年のeスポーツ全体の予想収益約51億ドルを上回る数字だ。さらにこの数字は推計レンジの中央値にあたり、上限では約138億ドル(約2兆1600億円)と見積もられている。この数値は、英国の年間ゲーム市場規模の約2倍に相当するという。くわえて、モデル化できなかったゲームタイトルや地域まで考慮すれば、不正行為全体の実際の市場規模はさらに大きい可能性があるとしている。

商売自体を潰す
こうした巨大なチート・不正行為の市場に対し、Team RICOCHETではチートを支える経済圏そのものを揺るがすことを目指した対策をおこなっているという。同チームによれば、チート市場はピラミッド型の構造をしているそうだ。頂点に位置する少数の開発者がチートツールを制作し、それを主要な販売業者が顧客に直接販売したり、多数の再販業者に供給したりすることで、広く流通していく仕組みだという。ちなみに、こうした仕組みのため、一見大量に存在するようにみえるチートツールや販売業者についても、実際には同じ商品が異なる名前やロゴ、店舗名で販売されているケースも多いそうだ。
Team RICOCHETは、こうしたチート業者を数百社規模で追跡しており、 これまでに375以上の再販業者の業務を妨害したほか、80件以上に活動停止要求をおこない、31の主要販売業者の閉鎖をサポートしてきたという。運営が法的措置を講じることで、チート販売にかかわる収益源や決済手段、取引関係を揺るがし、不正行為によるビジネスそのものを持続しづらくすることが目的だ。
さらに、チート産業そのものを攻撃する取り組みは、チートの利用者にも影響を及ぼすという。近年では、チートツールもサブスクリプション形式で提供されるようになっており、チート販売業者は月額・週額プランやプレミアムパッケージなど、さまざまな形態でアクセス権を販売しているそうだ。そうしたツールの利用には、平均で月額約40ドル(約6000円)、高額なものでは100ドル(約1万6000円)以上もの支払いが必要になるという。さらに一部のプレイヤーは、回避ツールやスプーファー、代替アカウントの購入など、取り締まりを逃れるための費用を投じており、チート関連サービス全体に年間数千ドルを費やす例もあるそうだ。
しかし、たとえ高額な利用料を支払っていたとしても、販売業者が摘発・閉鎖されれば、基本的にユーザーはチートツールへのアクセス権を失い、支払った費用も戻ってこないだろう。TeamRICOCHETは、アンチチートツールで不正アカウントを検出したり、継続的な法的措置で販売業者への圧力も強めるなど、利用者と販売業者双方に働きかけることで、チート経済圏そのものを不安定なものにしてきたと説明。TeamRICOCHETは、こうしてチートツールの利用をより高リスク・高コストなものにすることで、不正行為を続けるハードルを高めているそうだ。

また、TeamRICOCHETは、こうした違法ツールの使用は、ゲームの利用規約に反するのはもちろん、利用者自身のセキュリティにも危険が及ぶ可能性があると警告している。多くのチートコミュニティでは、フォーラム参加やツールのダウンロードの前にアカウント認証を求めるといい、その過程でIPアドレスやDiscordアカウント、ハードウェア情報、メールアドレス、支払い情報といった個人情報が販売業者にわたることになる。なかには、写真付き身分証明書の提出を要求する販売業者も存在するそうだ。さらに、一部のチート開発者はツールにマルウェアを仕込んでいる場合もあるという。自身の安全のためにもチートツールには手を出さないのが賢明だろう。
今回は、『Call of Duty』シリーズでチート対策を続けるTeam RICOCHETによって、チート産業ビジネスの一端と、そうした状況を踏まえた対策が明かされたかたちだ。Team RICOCHETは、不正アカウントの停止だけではなく、チート業者への法的措置も積極的におこなっており、先月にはチート開発業者へ活動停止命令書を受け渡す“家宅訪問動画”を公開していた(関連記事)。
FPSをはじめとする対戦ゲームにおいて、チート対策は長年にわたる課題のひとつであり、その対応をめぐってゲーム会社に不満の矛先が向けられることも少なくない。今回の発信には、シリーズ最新作『Call of Duty: Modern Warfare 4』の発売を控え、同作におけるチート対策や安全性をあらためてアピールする狙いがありそうだ。またこれまでゲーム会社が対策を講じる一方で、チート開発者がその対策をかいくぐろうとする、“いたちごっこ”は続いてきた。技術的なチートの検知・対策だけでなく、その流通や収益構造構造にも目を向けて対策を講じているというActivisionの取り組みが実を結ぶのかは注目されるところだ。
『Call of Duty: Modern Warfare 4』はPC(Steam/Microsoft Store/Battle.net)/Xbox Series X|S/PS5/Nintendo Switch 2向けに、10月23日発売予定だ。
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