「スクエニらしさはいらない」総額10億円スクウェア・エニックス ゲームコンテストの狙いとは?齊藤陽介氏×時田貴司氏に訊く

スクウェア・エニックスが主催するゲームコンテストSQUARE ENIX GAME CONTEST 2026の運営でもあり、歴戦のクリエイターである齊藤陽介氏と時田貴司氏に話を伺った。

スクウェア・エニックスは、SQUARE ENIX GAME CONTEST 2026を開催する。賞金総額10億円。キャッチコピーは「君のゲームが世界を変える!」。2026年の12月15日より応募受付を開始し、2027年3月15日23時59分で応募を締め切る予定。結果発表は2027年6月30日。

SQUARE ENIX GAME CONTEST 2026(以下、スクエニコンテスト)は、スクウェア・エニックスが主催するゲームコンテストだ。クリエイターから作品を募り、幾度かの審査を経て、受賞作を決める。最優秀賞1作品は賞金3億円が贈呈され、商品化が決まればスクウェア・エニックスと共にゲーム発売に進む。傑作賞(4作品)は賞金1億円、優秀賞(10作品)には賞金3000万円が贈られる予定だ。

昨今ではさまざまなゲームコンテストや支援プログラムが存在するが、スクエニコンテストの特徴はその額と応募条件だろう。前述したように総額は10億円とコンテストとしてはきわめて高報酬なほか、応募作品は応募時点でそれなりの完成度であることが求められるなど、成果物の要求も相対的に見て高い印象。

弊社アクティブゲーミングメディアはパブリッシャーとしてPLAYISMを抱えていることもあり、同コンテストはライバルとしても注目している。そこで今回、スクエニコンテストの運営でもあり歴戦のクリエイターである齊藤陽介氏と時田貴司氏に話を伺った。

時田貴司氏……スクウェアに入社、その後スクウェア・エニックスのディレクターおよびプロデューサーとして活躍。『ライブ・ア・ライブ』や『半熟英雄』など、スクウェアの中でもユニークな作品を手がけてきた。

――自己紹介をお願いします。

齊藤陽介(以下、齊藤)氏:
普段はゲームのプロデュースをやっておりますが、本コンテストにおいては社内の運営事務局にて統括という立場でお仕事しております。

時田貴司(以下、時田)氏:
最近は学校関係のアライアンスなどもやっておりまして、さまざまなコンテストでも審査員として参加させていただいた経緯から、今回のコンテストではその経験を活かして審査システムと運営をメインに担当しております。


Q1. 他のコンテストと何が違う?

――いまインディー向けコンテストやパブリッシングを募る施策は数多くあります。SQUARE ENIX GAME CONTEST 2026の独自性や他と決定的に違うところはどこか、改めて教えてください。

齊藤氏:
かつてエニックス社には、「ホビーゲームプログラミングコンテスト」というものがありました。それを今の時代にやったらどうなるか、というのが今回のコンテスト企画のスタートです。他社さんの開催しているコンテストなども研究していますが、採用目的だったり、企画書やアートワークのコンテストが多いように感じます。本コンテストの場合は、世の中へ向けて商品として着地させることを第一義にしているところが一番異なるかなと感じていて、その本気度をご理解いただきたいという意味で一線を画す優勝賞金を提示したところも大きな特徴だと思います。


Q2. なぜ今、コンテストを立ち上げたのか?

――今回のプロジェクトにおいて立ち上げられたきっかけを教えてください。BitSummitにあわせたタイミングで発表されました。意地悪な言い方をすると、「盛り上がっているインディーに一丁噛みしたい」ようにも見えます。

齊藤氏:
私自身がこれまでBitSummitに行く機会がなく、この発表をしたタイミングで初めて行けたので、想像以上にインディーは盛り上がっていることをそこでやっと知ったくらいです(笑)「一丁噛み」というよりは、「このタイミングでこれをできて良かったな」という思いの方が強かったです。

――ではたまたまタイミングが合っただけで、かつてゲームコンテストを開催してきたエニックスのDNAを意識したところも大きいですか。

齊藤氏:
「こだわりがない」という意味ではそうかもしれません。「ホビーゲームプログラミングコンテスト」も、振り返ってみればもともとゲームを作っていた人も応募していましたし、中村光一さんは当時高校生でしたし、堀井雄二さんはゲームを作っていたわけではなく、取材に来たライターでした。そうした人たちがゲームクリエイターとして世に出ていったわけです。当時はインディーという言葉はありませんでしたが、後から見れば今インディーとされている人たちが参加していても良いコンテストだったと思っています。今回のコンテストは賞金額が大きいので、(インディー寄りのコンテストに)見えないというのは逆にちょっと申し訳ないなと思っています。

タイミングに関してはBitSummitがあったので、ちょうど合うのでそこには必ず間に合わせたいと思って頑張りましたが、時期そのものに深い意味はないです。もしかしたらもっと地盤を固めてからゆっくりでも良いのではないかということになっていた可能性もありますね。

BitSummit PUNCHでのトークセッション

時田氏:
奇しくも、いろいろなところが企画を募集したり、TGSでも話題になっていたサンリオさん、東映さん、PARCOさんなど独自のゲームパブリッシングを始めて、そういうことがトレンドになっているこの2~3年のなかで、エニックスの原点であるコンテストへの回帰というか。さまざまな業界でそうですが、チャレンジにはお金もかかるので、どうしてもIPに固まってしまう、でもトライしないとIPが育たないというジレンマに陥っているところも多いと思います。やはり何かやらないといけないという危機感はうちの社内にもあったと思います。


Q3. 他業界からのゲーム参入をどう見ている?

――今挙がったサンリオさんやPARCOさんなど、ほか領域からのゲーム業界への参入はどのくらい意識していますか。

時田氏:
めっちゃ気にしています。

――(笑)

齊藤氏:
集英社ゲームズさんなどもすごく頑張っていると思いますし、必ずどこかが続いていってほしいと思っていますね。

――「どこか」ということは、他社さんにもそういう動きがあってもいいと。競合他社が減った方が、いろんな才能が自社のところに集まってくるメリットがあると思いますが……。

齊藤氏:
ゲーム業界全体やクリエイターのことを考えると、いろんな会社さんが参戦される方が面白いゲームが出ますからね(笑)日本のクリエイターに頑張ってほしいなという思いも強いです。それと、エンドユーザーからしたら面白いゲームが出るならどこから出ようと、面白いゲームがたくさんあった方が良いんですよ。

時田氏:
小粒でも面白いゲームが数多くあるほうが、結果としてカルチャーは潤うと思うんです。大艦巨砲があるよりも、少数精鋭の面白いものが何百とある方が日本らしいとも思います。八百万の神々がいる……というような状況になると面白いと思います。


Q4. 発表後、どんな反響があった?

――発表時点ではどういう反響が多かったですか。

齊藤氏:
「金額すげぇ!」「どうせ金出すけど、その分口も出すんだろ」といった反応です。前者はポジティブ、後者はネガティブ寄りで、いずれも金額を軸に置いた逆ベクトルの感想が多いといった印象でした。

時田氏:
「社内でよほどアイデアが出ないんだろうな」とか「社員可哀想に」みたいなのもありました(笑)

齊藤氏:
「新しいものを出せなくなってるんだな」と言われることもありますが、出している方だと思うんですよ。『パラノマサイト』もそうですし、HD-2Dでは『オクトパストラベラー』もそうです。私たちも挑戦を続けてるんです。

私自身、エニックス時代は『ドラクエ』が4年に1本のペースになっていて、その間をどう埋めていくかというのを考えて、延々と挑戦的な事をやっていたんです。なので、今のスクウェア・エニックスも挑戦作を作る文化的な土壌もあると思っています。

時田氏:
スクウェアとエニックスが合併したときは、エニックス側に『せがれいじり』があったので、スクウェア側の(時田氏が携わった)『半熟英雄』とすかさずコラボしましたね(笑)自分も『ナナシ ノ ゲエム』など含めて、挑戦作を作ってきた側だと思います。


Q5. 現時点での手応えは?

――現時点でのコンテスト自体への反応はどのような感じですか。

齊藤氏:
アイデアを温めていたというデベロッパーさんからは、「この機会にいっちょやってみるか!」という声を多くいただいています。面白いのは、学校さんが賞金規模を見て「うちの生徒ではまだ実力が足りないかも」というところもあれば、「3~4チーム作って応募します!」というところもあって、両極端なんです。もともと私の部下で、今は独立して個人でやっているような方々からもやってみたいという声を聞きます。最後の一歩を踏み出してもらえるかどうかは、これからでしょうね。


Q6. 応募規約はどう作り込んだ?

※背景として、SQUARE ENIX GAME CONTEST 2026の公式ホームページには、応募規約やFAQも含めて情報が充実している。このコンテストを知った時に浮かぶ疑問はだいたいここに記載されているだろう。

SQUARE ENIX GAME CONTEST公式サイトより

――要項・レギュレーションなどもかなりしっかり定められている印象です。訊きたいと思うようなことは、すでにFAQに掲載されていますね。

齊藤氏:
目まぐるしく情勢が変わるAI周りに関しては、応募規約と別に「AI利用ガイドライン」を設けていて、こちらは応募開始直前までベータ版としておいて臨機応変な対応ができるようにしています。規約に関しては、そろそろ最終版を出せるところですね。

時田氏:
発表時からいろいろとお問い合わせをいただいていて、公明正大にやろうというポリシーのもと、問い合わせがあった内容をサイトにも追加していく、という対応をしています。今後も何かあった場合は真摯に、なるべく細かく情報発信できるようにしたいですね。


Q7. 他社の支援プログラムを受けた作品でも応募できる?

――いまインディーの開発者支援においては、インキュベーターなどで支援されているタイトルも多いです。応募条件においては、「他コンテストでの未受賞作品、未発売作品に限る」という条件があります。これはインキュベーターや他プログラムも含むものでしょうか。あるいは著作物……つまり権利関係において他社が絡んでいなければOKという認識でしょうか。

齊藤氏:
基本的にはご自身が著作者として作られたものだったらOKという前提にはしています。ただしいろいろな関わりがあることは想定されるので、たとえば支援金を渡す代わりにこういう縛りがあって作っているとか、そういう事情ははじめにご相談いただきたいと思っています。今は行政なども含めていろいろな座組で開発する事例がありますので。

未発表という点についても、「今こういうゲームを開発しています」という進捗をXなどのSNSで公開している、というようなケースはOKの範疇です。支援プログラムなどについては、会社へのファンドであれば問題ないケースに当てはまると思います。「この作品に投資しています」という形だと厳しくなると思います。あとから「そんな話聞いてない」とならないようにはしたいので、疑問があればぜひ問い合わせをいただきたいですね。

――たとえば、ゲーム開発を支援するかわりにエクイティを獲得するプログラムもあります。そういった支援を受けていても問題ないですか。

時田氏:
権利関係が解決できるならOKです。

――個別の相談もありだと。

齊藤氏:
はい、都度相談できればと思っています。

――元スクエニ社員の方の応募もOKなんですか。

齊藤氏:
他の人と同じく、規約に準じていればOKです。

時田氏:
法的な理由から「日本在住の方」という線引きはしていますが、それ以外は特に制限なく、なるべくオープンに募ろうとしています。

――日本在住なら外国籍でも大丈夫ですか。

齊藤氏:
大丈夫です。国籍による制限は設けていません。


Q8. 本当に必ず受賞作を出すのか?

――絶対になんらかのタイトルを選出するというお話ですが、本当ですか……?

齊藤氏:
本当です。本気で商品化を目指してやっていきたいので、最初から「受賞者を出す」と書こう、と。ただ、15タイトル選出するのに応募が13タイトルしかなかったら「13しかなかったんですよ」と言わなければならなくなります。

――それも言うんでしょうか。「13しかなかったんです」と。

齊藤氏:
もちろん、言いますよ。「受賞者は必ず出す」と言っているので、説明がつきませんからね。

SQUARE ENIX GAME CONTEST公式サイトのFAQより


Q9. 受賞作はすべてスクエニから発売されるのか?

――選出タイトルについて、商品化される場合は基本的にはすべてスクウェア・エニックスから発売される認識であっていますか?スクウェア・エニックスから発売されることになるので、その看板に耐え得る製品でないといけないのでは。

齊藤氏:
スクエニから発売する前提で、二人三脚でやっていきます。品質に関しては、たとえば今実際に売れているインディータイトルのなかで、ゲーム会社のスクウェア・エニックスとして出すにあたってすべての項目において社内必要水準を満たしているかというと、そこはそうでない作品もあるかもしれません。今回のコンテストにおいては、その点は社内の基準よりもゆるくなるかもしれません。

時田氏:
今回、審査の基準として新規性・独創性・娯楽性・完成度(詳細はコンテストページを参照)を掲げていますが、応募作の内容やクオリティによってその意味は変わりますし、クオリティとははたしてなんだろう、と。僕らもよく開発で言いますが、クオリティって実は細分化するといろいろな意味があるし、必ずしも「クオリティが高い=面白い」ではないということがありますよね。

昔のレトロゲームの方が面白かったり、換骨奪胎や温故知新みたいなインディーゲームが流行っていたりもするので、そういう意味ではいたずらにクオリティや完成度を意識しないで、今の時代の面白さに一番重きを置くべきではないかと考えています。

――スクウェア・エニックスのゲームにはグラフィックスのクオリティに一定の担保があるという認識ですが、そこが十分でなくても応募していい、と。

齊藤氏:
なくていいと思いますよ。うちに限らず特にインディーゲームはそうですが、実態として美麗なグラフィックが売上に必ずしも繋がっているかというと、そんなことはないと思うのでそこだけにこだわらなくていいと思います。もちろん「そこを売りにしたゲームなんです!」という場合はそれを突き詰めてもらえばいいと思います。

時田氏:
「美男美女が多い」とかじゃなくてもいいと思いますよ(笑)たとえばグラフィックを突き詰めたうえで、独自の手法を貫くのもアリだと思いますね。


Q10. どんな規模の開発者を想定している?

――応募者について、どういった規模感やスタジオをイメージしていますか。少人数のインディーチームの話は出やすいですが、たとえば今は都内で大型タイトルなどの受託開発をしているゲーム会社もラインが空いて自社開発などをしています。そういったタイトルも応募対象ですか。

齊藤氏:
幅広く、ですね。BitSummitのときには私の口から言うのは憚られたので言わなかったのですが、具体的なタイトルを挙げるとすれば『めっちゃカメレオン』とか『8番出口』みたいな作品も欲しいですね(笑)少人数で短期間でワンコンセプトでつくりあげた、という意味で。個人クリエイターさんも大歓迎です。BitSummitのときに何社かお伺いしたんですけど、「1~2人体制で2年作り続けていたんです」というようなデベロッパーさんにもお会いしましたし、そういう形もアリだと思います。『Clair Obscur: Expedition 33』のような作品が出てくるかもしれません。

時田氏:
あれはもう十分にAA(ダブルエー)を超えていますよね。

――コンテスト名に「インディー」などを入れていないのには理由があるんですね。中規模のスタジオからの打診などもあったりはしますか。

時田氏:
開発会社さんの中には、委託開発の合間を縫って、自社でこつこつゲームを作ってTGSに自前でブースを出して3年くらい同じゲームを出展しているところなどもありますよね。そういうところからは「ぜひ!」という声もあります。意外とそういう会社さんは多いはずです。やはりみんな「自分の作りたい作品を作りたい!」というのがあって、それが純粋なパワーになると思うので、そこも非常に期待しているポイントですね。


Q11. 「求める水準は『パラノマサイト』」発言の真意は?

――齊藤さんが今年のBitSummitで講演されたときに、「求める水準は『パラノマサイト』レベル。それを認識して参加してほしい」というお話があり、それがSNSで広がりました。ちょっとトゲのあるようなニュアンスで広まりましたが、真意を教えてください。

齊藤氏:
あのときに『8番出口』や『めっちゃカメレオン』や『スイカゲーム』を求めているというのは、私の口からは言えなかったですね。その結果、ああいう表現になったんです。それはそれで基準値としてはわかりやすいかもしれませんよ。『8番出口』は映画にもなって国外でも話題作になったほどですし、『めっちゃカメレオン』は2000万本の売上、『スイカゲーム』はおまけのゲームをスタート地点にしてあそこまで伸びたのもすごい。

でもこれらはミラクルなわけで、そういうイレギュラーの名前を出す方がよっぽど失礼だなと思ったんです。あのときはちょうど、『パラノマサイト』の宣伝をして来いとも言われていたので、スクウェア・エニックスのゲームとしては比較的カジュアルな作り、かつ少人数チームで作ったものとして『パラノマサイト』を挙げました。『FF』とか『ドラクエ』を望んでいるわけではないですよ、ということが言いたかっただけなんです。

――(笑)

齊藤氏:
たとえば昔時田さんが作った『ナナシ ノ ゲエム』なども比較的小規模のチームで作っているし、私でいえば『アストロノーカ』、最近だと『Voice of Cards ドラゴンの島』もヨコオタロウと少人数チームで作りました。うちで作ったものを挙げるときにはそういうものを挙げるんですけど、それでも今のインディー業界からすると「いやいや、それだって大手のプロが考えたゲームじゃないですか」と言われると思っていて。それは社内発なので仕方ありません。

ただ、BitSummitではみなさんに馴染み深い「ザ・インディー」というタイトルはさすがに言えなかったのですが、取材を改めて受けた今ならばイメージとしては『8番出口』だったり『めっちゃカメレオン』だったり『スイカゲーム』だったり、と言えますね。

『8番出口』

時田氏:
第一声でそれを言うと「欲しがるねぇ」という印象になってしまうので言わなかったんですよね(笑)『パラノマサイト』に関しては、僕も開発中から注目していたんですけど、とにかくミニマムな人数、バンドサイズで1年くらいの期間で作っていて、システム的には普通のアドベンチャーゲームなんですよ。キャラクターと構成だけで面白さを工夫しているんですよね。ある種、ベテランでないとできない発想です。引き算の中でどう攻めるかを突き詰めている。

齊藤氏:
『パラノマサイト』は石山くん(石山貴也氏)というひとりの優秀なクリエイターから生まれるアイデアが形になったものなので、そういう意味では個人の発想から生まれるインディーゲームは魅力的ですし、『パラノマサイト』はうちで少人数で作ったものの中ではヒットしていますし、賞もいただいています。一個人が考える新しいゲームには期待したいな、と思っています。

――『パラノマサイト』はあくまでスクウェア・エニックスの少人数クリエイティビティの例で出された、と。

時田氏:
そうです。そういう文脈で話すと、「あ、自分たちの戦い方でも挑戦できるかもしれない」と思ってもらえるかも、と。


Q12. 審査員はどんな目線で審査する?

――今回のコンテストには、さまざまな審査員のかたがいて、あまりゲームをやらない人も審査される認識です。となると、応募作品は、新しい人でもすんなり受け入れられるようなものか、マニアを唸らせるようなアプローチか、どちらが受け入れられそうか、直感はありますか。

齊藤氏:
私たちも今回審査員に入りますが、一般のゲームをよく遊んでいるかたと同じ目線で審査をする前提です。私たちもそこに含まれる同じ重みの1票ずつを持った審査員のひとりなんです。そう考えると、どちらもアリではないかと思います。

個々人が面白いと思ったものを集合知とすべく、今の時代に合っているよね、面白いよねというところを審査基準として1次、2次、最終審査というかたちで開けていこうと思っているので。結果として今のトレンドに合ったものが上がってきてほしいと思っています。私個人の好みでは、ワンコンセプトが突き抜けていて「そんな発想でゲーム作ったんだ!?」というようなものが欲しいですね。

時田氏:
おそらくバラエティに富んだ結果になると思いますよ。『Hollow Knight』みたいなハードなソロのゲームもあれば、『8番出口』『めっちゃカメレオン』みたいにカジュアルだけどみんなでワイワイ楽しめるようなものもあり、これらはまったくベクトルが違いますよね。それでも「楽しい」「今の時代的な面白さ」という共通点はあるので、そのなかでどれだけ幅が出てくるのか楽しみですね。


Q13. 4つの審査基準で最も重要なのは?

――審査基準として、「新規性」「独創性」「娯楽性」「完成度」が重要だとあげられていました。すべて重要だと思いますが、強いて挙げるならどの部分がもっとも重要でしょうか。

SQUARE ENIX GAME CONTEST公式サイトより

齊藤氏:
私は「娯楽性」を重視しています。なぜなら、面白いことが一番大事だと思っているからです。見て面白いもの、遊んで面白いもの。それは人によって違うものを選ぶと思いますが、そこに娯楽性があると思っています。今までの反省点も踏まえてのことですが、ゲームがいざ世に出て「面白かったけど売れなかった」と評されることがありますよね。プロデューサーの私からすると「面白くなかったから売れなかった」というのが一番腹落ちするんですよ。

遊んで面白くなかったというのはもちろん、見ていて面白くなかったというのも今の時代だと結構重要だと思っていて、たとえば価格設定が良くなかったとかプロモーションがうまくいかなかったとかは関係ない、と。めちゃくちゃ面白かったなら売れているはずだと。

やはり売れなかった以上は面白くなかったんだと思うんですよ。10年前なら面白いと評価されたかもしれない、でも今の時代の面白さじゃなかったんだなと反省をするとき一番腑に落ちるので、だったら最低限の面白さは評価したいなと思っています。

時田氏:
僕は「独創性」だと思っています。いつもラーメンやカレーにたとえているんですが、ラーメン・カレーが好きだと一口に言ってもみんな思っているものが違いますよね。大盛りだとか、具がないものとか。とにかく一回食べてみたい!と思うのが大事だと思っていて、食べてみて美味しかったらそこが娯楽性だと思うんですよね。

でも、まず「お、これなんだろう!」と思うのは独創性かなと。僕自身、サプライズ・飛び道具で勝負してきた人間なので(笑)やっぱり注目されるというのがインディーの世界では一番重要だと思うので、そこで自分の世界観を持っていて「おっ」と言わせる人を楽しみにしています。ただ、僕も反省としては独創性にこだわりすぎて娯楽性に意地を張って失敗してしまったことが何度もあります(笑)

齊藤氏:
ただ、繰り返しになっちゃいますが、僕たちも審査に入るとはいえ、同じ重みの一票をもった審査員の中のひとりでしかありませんので!


Q14. なぜ「ある程度の完成品」を求めるのか?

――コンテストでは「伴走して一緒に完成させよう」を謳っているものが多いなかで、今回のスクエニコンテストは「ある程度の完成品を提示せよ」という方針で、巨人のやり方という印象です。このスタンスは、賞金の大きさも関係しているのでしょうか。

齊藤氏:
ゲームを自分で作られている方には、身内で遊べればいいやという人と、できればプロになってマネタイズに繋げたいという人の2種類がいて、しかも2極化もしていると思うのですが、このコンテストはどちらかというと後者の方と一緒になって本気で世界のゲームマーケットに対して勝負をかけにいくという気持ちがあるので、ゲームを買い取るというよりは、プロの次世代ゲームクリエイターとして羽ばたきたいという覚悟を持った人とやりたいという意思の表れだと思ってもらいたいですね。

時田氏:
作家性があるというか、「俺の世界を喰らえ!」みたいな人が欲しい。ゲーム開発って、大人数になればなるほど“総合力”になっていきますよね。社のIPだったりAAA規模になると巨大な産業になって「ザ・インダストリー」の作品になるんですけど、やっぱりインディー作品は「俺の好きを喰らえ!」というものを作って、それが別の同じものを好きな人に届くから広がるという、非常に純粋な世界なんですよね。そんな「俺の世界」を持っている人がどれだけ出てくるのかすごく楽しみにしています。


Q15. 作り手の裁量はどこまである?

――今回のコンテストでは、どの程度作り手の裁量が与えられるのでしょうか。

齊藤氏:
クリエイターのかたが納得行くところまで作り込むというのが第一義だと思っています。ただし、一応私たちからアドバイスはします。たとえば……大きな話になりますが、現状でも100万本は売れるという出来だとして、そこにテコ入れすることであとどのくらい伸びるか。110万本は行くかもしれないけど200万本は行かないとすれば、どこで妥協するか考えた方が良いという話はすると思います。

これは普段からしている話なのですが、やっぱりアイデアや遊びには、“旬”というものがあると思っていて、それを外してしまうのはクリエイターの方にとっても良くないと思うし、インディーの良さはある程度妥協できるところだと思っているのでタイミングも見定めてほしい。ゲーム内容の最終決定権はクリエイターの方が握っていて良いと思っています。


Q16. 制作スケジュールはどうなる?

――実際の制作スケジュールはどのようになりそうですか。個人でゲームづくりをする人は期間(あるいは時間)の方を重視する人が多い印象です。

齊藤氏:
最終面談では、まさに時間の話をしようかなと思っていました。これが完成するのはいつ頃?という話ですね。今回は開発費ではなくて“賞金”なので、契約で縛るつもりはまったくないです。でも、ご本人がどこまで作り込むつもりなのかをよく訊きたいのです。「完成度」というのは、「これで完成しています」というものを提示しなければダメということではなくて、「これをやれば面白さが伝わるはずです」という形のものを提示してもらって、そこにあと何%くらい作業が残っているか言語化できていてほしいんです。

たとえば「ビジュアルで面白さが伝わるゲームです」というなら、そのビジュアルの面をちゃんと作り込んでいないと伝わらない。ゲームデザインで評価してほしいなら、ゲームデザインが遊べるものとして成立していないとダメで。この数値化は難しいですけど、完成までの度合いが30%だとしても「これで面白さは伝わるところまでできている」というなら、それで出してもらって構わないんです。

時田氏:
ボリュームにもよると思うんですよね。RPGだったらどこまで作ってあればいいのかという話になるし。齊藤さんが言っていたのは、カレーライスに喩えられます。一口食べたら何カレーなのかがわかるし、「このゴロゴロ具材が売りなんだな」みたいなことが一通り味わえる必要がある。ライスだけ出てきて「カレーになる予定」と言われてもカレーの味がわからない(笑)ストーリーがあるなら、少なくともシナリオができていなかったら厳しいとは思うんですけどね。「ここから先はこれから考えます」だと、「何年かかるんだ?」になってしまうので。

齊藤氏:
『倉庫番』みたいなゲームで3面できていて、その時点でシステムも面白さも伝わる。だけど、100面ないとボリューム不足。じゃあ、これからステージをあと97面増やせば商品として売れるものになるねということが確信できれば可能性はあります。


Q17. Square Enix Collectiveとは何が違う?

――ちなみに現在のスクエニの展開としては、欧米スクエニ主導の開発者支援プログラムのSquare Enix Collectiveがあります。どう違うのでしょうか?Square Enix Collectiveは最近では日本展開を思わせる動きもあります。

齊藤氏:
プログラムとしては完全に別物です。一方で連携するために話もしています。Square Enix Collective出身のゲームとしては『PowerWash Simulator』がひとつの成功例としてあります。アーリーアクセスを経てから正式リリースとなりヒットタイトルになりました。

Square Enix Collectiveの担当者とは過去にも関わりがあり、今も色んな話ができます。Square Enix Collectiveというひとつの塊として送り出した方がユーザーさんに届きやすいというのであれば、そちらを選択する可能性があります。特にグローバルでリリースするということを考えると、これから密な連携を取っていければ良いなと。

時田氏:
継続して何本か出てくるとブランドになっていくものですからね。

齊藤氏:
もしかしたらスクエニコンテスト受賞作品で、Square Enix Collective側から連携したいという相談が来る可能性もゼロではありません。


Q18. 惜しくも受賞を逃した作品はどうなる?

――選考中に「めっちゃ面白いけど、受賞作にするには少し足りないな」という作品も出てくると思います。そういった作品にはどうアプローチしますか?

齊藤氏:
よく議論しているんですけど、今回入賞作品数は15タイトルとしているものの16位以下の人もヒットの可能性がありそうと思ったら「もっとこうしたら良いのではないか」といったフォロー・サポートをしたいと思ってます。全体の応募数がどのくらいになるかわかりませんし、全部は無理だと思いますけど最終選考まで残るような作品であれば、仮に入賞はできなかったとしてもいろいろ相談に乗ることもありえると思うんです。

私たちも受賞させられなかった作品が他から出てきて売れたら悔しいです。それくらいの熱量を持って応募してきてくれる方にはなんとか手厚くフォローをしてあげたいという気持ちはあります。

時田氏:
実際そういう方がたくさん出てくるとも思うんですよね。

――つまり、受賞を問わず、長期的なスクエニとの関係に発展する可能性もあると。プロジェクト投資のイメージだったんですが人投資も考えていますか。

齊藤氏:
はい、面白い作品や作り手と長期的にやりたいと思っています。うちはインハウス、アウトソースそれぞれ作っているものがいろいろありますので、そのなかのいちクリエイターとして長くお付き合いできそうだというかたがいれば、プロデューサー単位でお付き合いしていくこともあるかと。

時田氏:
彼と彼をマッチングさせたら面白いものができるかも、ということもありますよね。編集者が漫画原作さんと絵描きさんを組み合わせて1本の漫画を作るようなイメージ。ほかのさまざまなコンテストを見ていても、受賞を逃した人たちでチームを作って、次の機会で受賞したりというのも見かけるので、無限の組み合わせの可能性が出てくるかと思います。

齊藤氏:
そこはまさに人への投資だと思います。ご本人が望むかどうかは別にして、今君が作ろうとしているゲームデザインはこれに近いから参画してみないかみたいな話をするかもしれないですね。ただインディー開発者は「自分で作りたいからそんなことをやっている場合じゃない」というケースが多いかもしれませんけど(笑)


Q19. 受賞作にはおふたりがメンターとしてつく?

――実際プロジェクトを一緒にやるとして、おふたりがメンターにつくのでしょうか。

時田氏:
どんな作品にどのプロデューサーがつくかは、作品次第な気がしますね。

齊藤氏:
殴り合いで「俺にやらせろ!」みたいなことになるかも。

時田氏:
それはハッピーなことですね。


Q20. 受かるためのアドバイスは?

――すでにいろいろと情報が公開されており齊藤さんは「本気でやってほしい」「完成度が大事」とも発言されています。それ以外で、本コンテストに受かるために、ヒントやアドバイスをいただけますか。

齊藤氏:
たくさんありますよ。悩んで応募しなかったら、受かるものも受からないので「応募する」。よく「宝くじが当たらない」という人がいますが買っていないからだろう、と。よって、アドバイスは「応募すること」だと思います。私たちもそうなんですけど、作っていると途中で自分が作っているものが面白いのか面白くないのかわからなくなるんですよ。それを客観的に判断してもらう良い機会だと思ってもらえば。1次2次含めて全部だと難しいですけど、良いところまで進むものにはなんらかのリアクションをすべきだと思っていますし、なんなら面談で面と向かってお話できることもあるはずなので、挑戦してもらいたいです。

――腕試しでもいいと。

齊藤氏:
腕試しくらいのつもりで参加する人こそが意外と残ったりするんですよ、この業界。

時田氏:
僕は、賛否両論を恐れずにトライしてほしいと思っています。今、絶対的な”賛”ってないと思うんですよ。ミリオンヒットとかザ・ベストテンみたいなのはなくて、小規模でも面白いものがたくさんある時代。誰かの好きは誰かの嫌いでもあるんですよ。さっきのラーメンのたとえと同じで、どうせ誰にでも好かれるのは無理。だけど、だからこそ思いっきり自分の好きを好きな人に向けて「楽しいでしょ!」というパワーをぜひ見せてほしいなと思いますね。

美味しいものなんてたくさんあるし、ちょっと良いなんてものは山ほどありますよね。そんななかで「なんか微妙なんだけど、俺にはたまらない」というものがある。基本的に好き嫌いってそういうものですよね。自由度が高いからこそ、賛否両論を恐れず自分の好きを最上級で好きな人にぶつけてほしいなと思います。


Q21. なぜ審査基準に「大衆性」がないのか?

――そういえば今回の審査基準に「大衆性」が含まれていませんね。

齊藤氏:
大衆ってもう……いないと思う。

時田氏:
強いて言えばこの中だと「娯楽性」がそれにあたるのかもしれないですけど。

齊藤氏:
大衆性は、ある意味自分の作家性を抑えて、中央値に靡き、すり寄った結果みたいな気がしてしまうので、そこは求めていないという方が強いかもしれませんね。『ニーア オートマタ』を作ったとき、ニッチを世界中からかき集めたらそれなりの母数になるはずというのをやったんですよ。

王道のストーリーでもないし、白と黒の世界だし、女の子は目が隠されていて見えないし。とはいえニッチをかき集めれば、同じニッチを共有できる人たちは口コミを広げあってひとつの輪を作るはずだと思ってやっていた側面もあるので。だから、実はニッチだと思っているものって、世界中でそれをかき集めれば結構な人数になるんじゃないかと。

時田氏:
レジスタンス活動みたいな。

――(笑)

齊藤氏:
ニッチは実はニッチじゃないかもしれないですよ。

時田氏:
BABYMETALが聖飢魔IIとか、ももクロがKISSとコラボするような時代ですし。大衆性を持った王道とは言えないものが、突如ひっくり返って王道となるというのが今の時代なので、本気でさえあればそれが大衆になるんじゃないかなという気がします。


Q22. 作品に「スクエニらしさ」は必要?

――ということは、自分の作品に「スクエニらしさ」があるかどうかを考えて応募しなくていいと。

齊藤氏:
いらないですね。そもそも……「スクエニらしさ」というのものわからないですしね。エニックスはずっと昔から変なものを結構作ってきましたし、時田さんはスクウェアという王道RPGがある社内でニッチな作品を作る……いわばレジスタンス活動をしてきましたしね。だからこれまでの何か「らしさ」は気にしないでください。「スクウェア・エニックスっぽくないね」という理由で減点するようなことはないです。

――一緒にやる中でスクエニらしさというものが結果的に足される可能性があっても、最初からスクエニに寄せる必要はまったくないと。

齊藤氏:
そのとおりです。ゲームデザインがすごく面白いけど、ビジュアルをスライムやチョコボにすることでもっと世界の人に知ってもらえるかもねと提案する可能性はゼロじゃない。でも、それに従う義務もありません。逆にスクエニファンに加点というのもありません。

時田氏:
合併してからみんなずっと言っているんです。「スクエニらしさなんてわかんないね」って(笑)ライバルプロデューサーとかディレクターがいて、そこで相手に「やりやがった!」と思わせるものを先に出せるかどうかの競争みたいなところがあるんですよね。今回のコンテストもみなさんそうだと思うので、「やりやがった!」っていう痛快なものを求めていると思います。勇者・魔王・クリスタルが出れば良いってものでもないと思うので(笑)スクエニのゲームを遊んだことがないくらいのほうが、新しいものが出てきそうです。同じ土俵で戦っても、「FFにあるじゃん」「ドラクエであるじゃん」となってしまって難易度が上がりますよね。

――スクエニを全然知らない、ファンでもない、スクエニのゲームを遊んだこともない。コンテスト目当て、という応募があっていいと。

齊藤氏:
はい、むしろその方が面白いかもしれません。


Q23. FAQにない補足はある?

――問い合わせ窓口でよく来るが、FAQに載せていない質問など、この場において伝えたい補足などがあれば教えてください。

齊藤氏:
基本的になんでもオープンにやっているので、あまり改めて伝える補足情報はないのですが、ひとつ言っておきたいのは、齊藤が審査に加わるから『ニーア オートマタ』みたいなゲームである必要があるんじゃないか?とか思わないでほしいです。そういう風に色がついてしまうのが嫌で今まで出ていなかったのですが、今回インタビューにこういう形で出ました。でも本当に気にしないでください。

出たことによって、業界の人は齊藤に直接「どういうゲームを求めてるんですか」って訊きにいけるのではないかと思うかもしれませんが、絶対にそんな質問には答えませんから(笑)答えたところで、それが正解になるわけでもありませんし。

Q24. 最後に応募者へのメッセージを

――最後にメッセージをお願いします。

齊藤氏:
今日このやり取りをしていて、もしかしたらこういうケースがあるかもしれないと思い当たったのは、インディーゲーム開発者同士のコミュニティの中で「スクエニコンテストどうする?」という話になったときに、隣の人が「俺ちょっとまだ応募できそうな作品はないんだよね」と言っていたら、信じない方が良いと思います。それでもたもたして応募期間が過ぎてしまい、実は隣の人は応募していて受賞されてしまったら悔しいですよね。粛々とやりましょう。周りの意見を聞かずに。隣の人は準備してますよ!

時田氏:
募集期間がいよいよ12月から始まりますが、コンテストが発表されてからそれに向けて作り始めた人と、あらかじめ作っていたものをどう仕上げようという人の2者がいると思いますが、どちらにもそれぞれの良さがあると思います。今から作ってもアイデア次第で面白いことはできると思うので、たくさんのご応募お待ちしております。

――ありがとうございました。

SQUARE ENIX GAME CONTEST 2026は、2026年の12月15日より応募受付を開始予定。2027年3月15日23時59分が締め切りとなる。結果発表は2027年6月30日予定。

© SQUARE ENIX

この記事にはアフィリエイトリンクが含まれる場合があります。

AUTOMATON JP
AUTOMATON JP
記事本文: 1346