田中ロミオ氏に、サバイバルTPS『アノマリス』にシナリオライターとして参加経緯を聞いた。好きなのは「取り返しのつかない話」で今作は「一線を越える話」になるらしい

本稿では田中ロミオ氏に本作のシナリオを手がけることになった経緯や世界観の構築、登場人物の描き方、TPSというジャンルで物語を描くうえで意識したことについて話を訊いた。

フリューが手がける完全新作『アノマリス / ANOMALITH(以下、アノマリス)』は、2026年10月29日に発売予定のサバイバルTPSゲーム。昭和の日本を思わせる世界を舞台に、異常現象によって生まれた「異界」を探索し、異形の存在と戦いながら生還を目指していく。シナリオを担当するのは、『CROSS†CHANNEL』や『最果てのイマ』、『終のステラ』などを手がけてきた田中ロミオ氏だ。

発売に先駆け、10月8日にはPS5およびNintendo Switch 2向け体験版の配信も開始。今回は体験版の配信に合わせ、『アノマリス』に携わるクリエイター3名へのメールインタビューの様子を公開したい。本稿では田中ロミオ氏に本作のシナリオを手がけることになった経緯や世界観の構築、登場人物の描き方、TPSというジャンルで物語を描くうえで意識したことについて話を訊いた。

「コロコロコミック経由」で始まった『アノマリス』への参加

――『アノマリス / ANOMALITH』への参加経緯を教えてください。サバイバルTPSという、これまで多く手がけられてきたビジュアルノベルとは異なるジャンルの作品でシナリオを担当することになったきっかけは何でしたか?

田中ロミオ(以下、田中)氏:
なぜかコロコロコミック経由で、編集者さんから問い合わせが来ました。おそらく私の連絡先が何もわからなかったため、そのようなルートになってしまったのだと思われます。連絡先が未公開なせいでお手数をお掛けしてしまいスミマセンと思いつつ、依頼をお受けしました。SNSをやっていない理由は、三日坊主になる率100%だと理解しているからですね……。

――2014年の他誌インタビューでは、「ノベルではない純然たるゲーム作品にかかわってみたい。ゲームシステムの構築にとても興味があります」とお話されていました。それから約12年を経て、TPSというゲームシステムを軸とした作品に携わることになったことについて、どのように感じていますか?

田中氏:
言ってましたね、これ。ただただ感慨深いです。引き寄せの法則というのはあるようで、このあたりからシステムの凝ったゲームの仕事をちょくちょくいただくようにはなりました。スマホアプリ界隈なので、ほとんどは名前も出ていない仕事なんですが。今回もアクションゲームということで、様々なシステム的な制限に直面しつつの執筆となりましたが、そういう部分で悩むのも楽しかったです。

――本作では「昭和レトロ×リミナルスペース×異常現象」という独特の世界観が描かれます。世界観を構築するうえで、シナリオ面から特に意識されたことはありますか? またこれまでの作品で描いてきた人間関係の歪みや孤独、生きづらさといったテーマは、本作では取り入れられているのでしょうか?

田中氏:
初期の企画書では「平成レトロ」とありましたね。気が付いたら「昭和レトロ」になっていましたが。今回は現実とは異なる歴史をたどった日本が舞台ということで、社会問題的なシナリオテーマというものはあまり感じられないかもしれません。状況的にそんなことを言っていられる場合ではないからですが。ただ主人公が過酷な環境に置かれていることは確かで、そのような厳しい状況の中でどう考え、何を決断していくのかをなぞる物語となっています。

――主人公・水無月玲緒奈をはじめとするキャラクターたちは、どのような人物像をイメージして描かれましたか? 特に異常現象による「異形化」と向き合う玲緒奈の内面を描くうえで、意識されたことがあれば教えてください。

田中氏:
最初は主人公をプロにするか、アマチュアにするかを検討しました。これで物語がだいぶ変わってしまうので。私は『バイオハザード』シリーズが好きなので、最新作の『バイオハザード レクイエム』でたとえると、「レオン編」と「グレース編」のような違いかなと思います。いろいろと話し合ったんですが、最終的に「フリューらしさを考慮して、やっぱりカッコイイ主人公がいいのではないか」ということになり、主人公はヒロイックな方向で考えることになりました。

アマチュアに寄せると丁寧に異界の恐怖や脅威を描くことになりますが、これは明確に純ホラー向きの表現ですし、本作には初期から「怪異アクション」の構想もあったため、主人公は怪物に肉薄して戦える人物像でないといけない……そういった要請事項も影響して、とてもメンタルの強い主人公になっています。今回の企画書には参考作品のひとつとしてSCPなども記載されていましたから、Dクラス職員に並外れて高い怪異への適性があったら……といった切り口からキャラクターを整えていきました。

――本作はサバイバルTPSでありながら、テキストによる物語描写も豊富だと伺っています。アクションや探索を中心とするゲームプレイの中にシナリオを組み込むうえで、物語の提示方法やテンポについて工夫されたことはありますか?

田中氏:
正直な話、試行錯誤しましたし、現状でベストの形とも思っていません。ある程度作業を進めてから「あそこはこうすべきだった」と気づいたことも多々あります。私の理想を言えば、プレイヤーが主人公を操作している時間やインタラクトした瞬間だけ台詞を置き、カットシーンには極力頼らない……いわゆるムービーゲーを避けたいという気持ちはあったんですが、やってみるととても無理!となりました。この面ではだいぶ妥協してしまったな、という思いがあります。結果、なんだかんだテキストの多めなアクションゲームになっているかと思うんですが……うまくプレイヤーを引き込めるテンポ感となっていることを祈ってます。

プレイヤーに「こう感じてくれ」という指定はしない

――『CROSS†CHANNEL』『最果てのイマ』『終のステラ』など、これまで手がけられてきた作品と比較して、本作だからこそ挑戦できた表現や新たな試みはありますか? 一方で、ゲームジャンルや媒体が変わっても、一貫して大切にされていることがあれば教えてください。

田中氏:
今作は「一線を越える話」となったな、という印象です。さてこれを過去作と比較すると……どうですかね。相通ずるところはありそうですが、自分ではわかりません。私は現場によって大きな方針は毎回変えますので、何を大事にしているかはその時々かなと思います。ただ自分が本や映画やゲームに触れる時も、取り返しのつかない話というのが好きなんです。だから自分で書くものにもそういう要素は滲み出ている可能性はありそうです。これは月並みな言い方になりますが、実際にプレイしてもらい確かめていただきたいと思います。

――最後にプレイヤーには本作のシナリオを通じてどのような体験や感情を味わってほしいと考えていますか? 発売を楽しみにしている読者へのメッセージとあわせてお願いします。

田中氏:
そうですね……あえてシナリオライターから、「こう感じてくれ」という指定は出さないでおこうと思います。受け手が自由に感じていただくのが一番ですから。ですがプレイしていただいて、雰囲気やキャラクターを好きになってくれたら嬉しく思います。感想やフィードバックはフリューさんともども、ひととおり見て回ると思いますので、ぜひご意見があればネットに放り込んでいただけますと幸いです。ご縁があれば、次につながるかもしれませんので。

『アノマリス / ANOMALITH』は、PS5/Nintendo Switch 2/PC(Steam)向けに10月29日発売予定だ。

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Yuuki Inoue
Yuuki Inoue

RPGとADVが好きなフリーのゲームライター。同人ノベルゲームは昔から追っているのでそこそこ詳しい。面白ければジャンル問わずなんでもプレイするのが信条。

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