今年一番やりこんだゲームはどれ?AUTOMATONライター陣が、2019年に長く遊んだ作品を振り返る
今年2019年を振り返る、AUTOMATONの年末企画第1弾。客観的なプレイ時間の長さと、主観的な面白さは必ずしも比例しない。だが貴重な時間を費やすだけの理由が何かしらあるはず。そこで本稿では、各ライターが今年一番やりこんだゲームを振り返っていく。単純に今年一番長く遊んだゲームを基準に選出しているため、2019年に発売されたゲームという制約は設けていない。
『Dead Cells』
――もはや触っているだけで心が落ち着く
開発元:Motion Twin 販売元:Motion Twin
対応機種: PC/Nintendo Switch/PlayStation 4
プレイ時間:500時間以上
本作をメインでプレイしているNintendo Switchのプロフィールを確認したところ、総プレイ時間は730時間だった。ちょうど1年前の時点で200時間ほどプレイしていたため、今年は500時間以上プレイしていたようだ。サッと手に取りすぐに起動できるNintendo Switchだからという点も大きいが、それ以前にずっと楽しく飽きないのだからプレイし続けてしまう。
これだけプレイしているとマップを構成する部屋はほぼ知り尽くしており、自動生成されるとはいっても目新しさはもうない。一方で、入手できる装備やその補正効果のランダム性の高さは未だ新鮮。言い換えると、武器やスキルを完全に使いこなし、安定してラスボスを倒せるようになるまでに時間がかかる。武器だけで60種類ほどあり、装備が変わればプレイスタイルもガラッと変えなければならないし、そもそも本作は難易度が高いためだ。
ただ、この1年はそうした挑戦に明け暮れてばかりいたわけではなく、カスタムモードにてお気に入りの装備に固定して気楽に楽しむことも多かった。本作は、このジャンルとしてはゲームプレイが非常にクイックで、それに応えるレスポンシブな操作性が触っていて気持ち良いのだ。また大型アップデートの配信が続いており、新たなコンテンツを試す楽しさもある。現在は2020年第1四半期に配信予定の、本作として初めてとなる有料DLCのテストが実施中。筆者も参加しており、詳しい内容についてはNDAにより言えないが、これまでとはまったく異なる環境や敵が登場するためリリースが待ち遠しい。
by. Taijiro Yamanaka
『Dead by Daylight』
――非対称型対戦ゲームというジャンルの立役者
開発元:Behavior Interactive 販売元:Behavior Interactive
対応機種:PC/PlayStation 4/Xbox One /Nintendo Switch
プレイ時間:1535時間
『Dead by Daylight』はプレイヤーが殺人鬼1人と生存者4人のチームに分かれ対戦する、非対称型対戦ゲーム。本作の一番の特徴は、ゲームルールが非常に理解しやすい点にある。その理由は、本作とほぼ同じルールである遊び「鬼ごっこ」「かくれんぼ」を私たちは幼少期から体験しているからだ。その遊びにアクセントを加え、これまでに経験したことのなかったような遊びを本作は提供することが出来ていると感じる。
私がこのゲームをやり込んだ理由は上記の通りだが、対戦ゲームとして楽しめた点もある。扱えるキャラクター・パーク(スキル、能力のこと)を組み合わせることで、毎回違った発見を得ることが出来たのもモチベーションの1つになっていた。しかし、このゲームが長年抱えている課題がゲームバランスの調整方針だ。ディレクターであるマシュー・コート氏への取材を通じてこのゲームに対する思いを伺ったが、お互いの腕を競い合うゲームというよりかは、1つのショウとして楽しめるものを目指していると答えていた。この方針が間違っているとは思わないが、よりショウライクな調整が続いた結果、ゲームバランスに関するコミュニティからの不満は後を絶たず、昨今では熱心なプレイヤーほどゲームから離れてしまっているように感じるのが残念だ。また、新たなキャラクターをDLCとして販売した直後に弱体化を発表するなど、ユーザーの不信感が高まるような動きも目立つようになってきた。この悪い流れが断ち切られることを願ってやまない。
とは言え、本作は非対称対戦という新たなゲームジャンルを確立した立役者と言える革新的なゲームであることは間違いない。購入価格も通常1980円、セール時には1000円を切るので1度は遊んでみて欲しいゲームの1つだ。
by. Tadashi Harao
『Dota Auto Chess』
――乱数による中毒性と、戦略性の高いゲームプレイ
開発元:Drodo Studio
対応機種:PC
基本的に対戦ゲームは危険なものだ。節目のあるシングルプレイヤーに対してPvPに終わりはなく、深淵に踏み込めば踏み込むほどあらぬ可能性が見えてくる。ランダム性が付随している場合はさらに酷いもので、運による勝ち筋も、負けを運のせいにすることもできてしまい、プレイに拍車をかける。また筆者の場合は負けている時ほど再戦してしまう悪癖があり、今日も原稿のためにプレイし始めたはずが、連敗した結果すでに締め切りを4時間過ぎている始末だ。というわけで、今年もっともプレイしたゲームこと、数百時間単位で時間をドブに捨ててきた沼は、『Dota 2』のModとして登場し、世界中のプレイヤーを熱中させた『Dota Auto Chess』と、そのフォロワーたちである。
オートチェス系作品のルールは概ね同じで、ユニットを集めてシナジーを発動させ、各ラウンドごと自動的に行われる戦闘に勝利し、最後の1人を目指していく。ラウンド開始時にいくつかの条件により手に入るリソースを使い、ランダムに提示される購入対象の中からユニットを購入し、盤面に配置。各ユニットにはクラス/種族などが設定されており、盤上に置かれたコマの持つこれらの数が揃うと、攻撃力が上がったり防御力が上がったりなどの有利な効果が発動。ユニットごとに設定されたスキルやステータス、同ユニットを3体揃えれば上がるランク、駒の配置、プレイヤーのレベルによるユニットの配置数、そして運によって対戦相手との勝敗が決まり、盤上の状況によってダメージが上下し、HPが0になればそこで敗北となる。
乱数による要素が多く、豪運で安易な勝利を得たり、何の成果も得られないことはままある。しかし運が悪くとも、与えられた駒を使い編成を練り上げ、リソースの使い所を考えていくと意外と悪くない順位に収まったり、運以上に実力がものを言う。乱数による中毒性と、戦略性の高いゲームプレイが、多くのプレイヤーを沼の底へ引きずり込んでいるのだろう。
by. Keiichi Yokoyama
『ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ』
――神は細部に宿る
開発元:スクウェア・エニックス 販売元:スクウェア・エニックス
対応機種:PC/PlayStation 4
長期運営に至ったゲームサービスを次の段階へすすめる事は非常に難しい。程度を誤ればバランスが崩れあわや大惨事に、一方で保守的になれば「代わり映えが無い」と人が去ってしまう。しかし『FF14』はそれをほぼ最高の形でやってのけた。今年発売された最新拡張「漆黒のヴィランズ」はゲームが積み上げてきた歴史を今一度天高く昇らせ、花開かせたのだ。
『FF14』それ自体の魅力は、プレイヤー達によって活気づく社会と、熱量を保った文化、雑多に散らかっているのではなく、まるで百貨店のように美しくディスプレイされた膨大な量のコンテンツにある。では本拡張の魅力はなんだと問われれば、――もちろん新ジョブやレイドコンテンツ、BGMもそうなのだが――あらゆる要素の背後に存在する魅力的な「物語」だろう。生存限界における人間の様相というインディヴィジュアルな課題から、宿敵のバックボーンの解明という規模に発展していく壮大な本筋をはじめ、コンパクトにまとめられたドラマという印象を受ける膨大なサブクエスト群、フィールドそのものやオブジェクトに刻まれた世界の歴史。たとえば妖精郷イル=メグという地域はかつて人間の街だったという設定があり、各地にはその名残として、妖精により草の塊に変えられてしまった「人間だったもの」が点在している。なかには特徴がある塊もあり、大きさ、数、付近にあるオブジェクトから背景事情が類推できるのだ。
そういった細やかな物語が本拡張には特に盛り込まれており、ただ世界を周遊し読み解くだけでも充分に楽しい。ログインするだけで楽しみが生まれるようデザインされているというのが、MMOのあり方として素晴らしい。大黒柱である本編と、その周囲にあり支える役割を持つ小さな物語群。追加され続けるエンドコンテンツだけではなく、こうした語り部の存在がいるからこそ、私は光の戦士の職を今も辞せずにいられるのである。
『ボーダーランズ3』
――家族でボダラン
開発元: Gearbox Software 販売元: 2K Games
対応機種: PC/PlayStation 4/Xbox One
我が家では「家族でボダラン」が不定期の恒例行事になっている。いうまでもなく「ボダラン」こと『ボーダーランズ』シリーズは、ハクスラ要素と協力プレイが最高に楽しいFPSだ。今年は待望の新作『ボーダーランズ3』が発売された。我が家でも3本を予約し、初日から「家族でボダラン」を満喫した。私がモズを使い「タイタンフォールごっこ」と称してアイアン・ベアでグレネードをばらまいたり、捨てる銃に迷って一人遅れたりと、足手まといなプレーをしても、力尽きたら優しく蘇生してくれるのが家族のありがたみだ。散りばめられた小ネタも笑えた。
ゲームは素晴らしかったが、気になったのはEpic Gamesストアだ。時限独占はしかたがないとしても、ゲームをギフト購入できないのはいただけない。本作の性質上、フレンドにギフトとしてゲームを贈りたいという需要は高かったはず。しかしEpic Gamesストアにはその機能がないばかりか、同じゲームを複数購入することもできない。ギフトを送るためには、ユーザーはギフト購入に対応したHumble Bundleのような別ストアで本作を買い、フレンドにゲームコードを送らざるを得ないのだ。事実、私もそうしたし、つい先日もフレンドに贈る『Control』をEpic Gamesストアで買うことができなかった。販売するストアにはユーザーの利便性を第一に考え、せっかくのゲーム体験を台無しにすることがないよう望みたい。
時限独占や武器弱体化などで批判にさらされた『ボーダーランズ3』だが、武器集めの楽しさはやはり癖になる。11月には個人的にうれしい金庫の拡張が行われ、ハンサム・ジャックをフィーチャーしたDLCも発売されたばかり。パンドラでの冒険は、まだまだこれからだ。家族団らんでヴォルト・ハンターとなり、バンディットを撃ちまくったり銃を集めるのは、年末年始にもお勧めの過ごし方だ。
『ディビジョン2』
――ルートシューターファン 一喜一憂の年
開発元:Ubisoft(Massive Entertainment) 販売元:Ubisoft
対応機種:PC/PlayStation 4/Xbox One
今年はルートシューター系の大作が複数リリースされたため、1作あたりに割けられる時間が例年よりも限られていた。同ジャンルのファンとしては、『Anthem』の酷評ぶりに涙したり、『Destiny 2』の無料化に歓喜したり、『ボーダーランズ3』の武器弱体化に肩を落としたり、「購入特典の“保管庫追加スペース”は、保管庫の最大容量増を意味しない」という『ディビジョン2』衝撃の事実に刮目したりと、感情の起伏が激しい年であった。そんな中、今年一番時間を費やしたのは「保管庫の乱」を起こした『ディビジョン2』である(約250時間。歴戦のエージェントと比べると短い)。
ライブサービス型の大作は、いくらロードマップが立派でも、ローンチ時点では未完成品を遊んでいるような感覚に陥ることが多い。本作においては、エンドゲームに至るまでの「ロケーション、ファクション、アクティビティ」の設計と多様性によって、ローンチ時点で完成品を遊んでいるという満足感が得られた。と同時に、ジャンルとしての堅実な進化を感じた。完成していることが新鮮というのも皮肉な話ではあるが、何にせよ上記3点に関しては、後続作品が参考にするベンチマークのひとつになるのではないだろうか。一方、エンドゲーム到達後のプレイ意欲維持、有効ビルド/報酬の多様性、PvPコンテンツの活性化という3点においては、長らく苦戦を強いられたように感じる。
愛憎入り交じる感情を抱いてはいるものの、ビルドを効率化する快感、退廃的な世界観、土台となる銃撃。これらに一定の満足感を覚えており、「あと1ミッションだけ」と唱えながら遊んでいるうちに、時間が溶けていった。保管庫の容量も無事に増えたということで、来年も定期的にDCを訪れることになるだろう。なお1作目と2作目をつなぐ公式小説「ディビジョン ブロークンドーン」も、ファンの方にはオススメである。
by. Ryuki Ishii
『BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE』
――ハメられたくなければ、ハメるしかない
開発元:ARC SYSTEM WORKS 販売元:ARC SYSTEM WORKS
対応機種:PC/PlayStation 4/Nintendo Switch
アップデート前の1、2か月こそほぼ触らなかったものの、今年の前半はほぼ『BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE』(以下、BBTAG)を遊んで過ごした。最初こそ「パーティーゲーム」扱いを受けていた本作だが、プレイヤーによる研究が進むにつれてそのシステムがもたらす独特の味が明らかとなっていった。個人的には「よしもとゲーミングプロ選抜大会」がターニングポイントではなかったかと思っている。この大会で披露されて以降、このゲーム特有のアクティブチェンジとクロスコンボを利用した連携・コンボ・立ち回りの研究が一気に進み、環境が激変した。
『BBTAG』のゲーム性は一言で表すなら「激しい」の一言に尽きる。画面上で4キャラが同時に動いていることも珍しくなく、攻守は目まぐるしく入れ替わる。キャラクターの体力に対してコンボ火力は非常に高く設定されており、1ゲームの終わる速さはおそらく現存する格闘ゲームの中でも随一だろう。そして、攻めが強い。リジェクトガードとリバーサルアクションという強力な防御手段が全キャラに用意されていて、バーストも10秒に1回近いペースで撃てるにも関わらず、とにかく攻めが強いのだ。全体的なコンボ火力の高さと相まって、1回ペースを取ってしまえば格上相手でも攻め切れてしまうことが多い。まさに人類平等である。
しかし、ハチャメチャでありながらも『BBTAG』には2D格ゲーのエッセンスはきちんと残っている。お互いにハチャメチャを押し付け合ったあとの最後の一押しに、「格ゲーの上手さ」がピリッと効いてくるのである。このバランスが非常によくできている。1戦のカロリーが低く、操作が簡単でキャラ変えも比較的容易、キャラプールも豊富で、飽きずに遊んでいけるゲームだ。「格ゲー星人」たちに一泡吹かせることもできる。格ゲーに興味がありながらも最初のタイトルに悩んでいる人にこそ、手を出してみてほしいゲームだ。
by. Mizuki Kashiwagi
『Tower Unite』
――仮想世界はすぐそこに
開発元:PixelTail Games 販売元:PixelTail Games
対応機種:PC
ゲームとプレイヤー間の繋がりは、時代の変遷とともに大きな進化を遂げてきた。1人で黙々とプレイするものから、複数人で楽しむものへ。今やインターネット技術の発達により、世界中の人々と一緒にゲームが遊べる。情報も交換できる。さらには、SNSを通じて日々新たなコミュニティが生まれている。そんな感覚を『Tower Unite』で再認識させられた。本作は、ミニゲームなど多様なアクティビティが用意された世界でアバターとなり、他のプレイヤーとの交流を図るゲームだ。いわゆるメタバースというジャンルに分類される。そして私は、この世界に多くの時間を捧げることとなった。
アクティビティはかなり豊富に用意されており、ゴルフゲームやFPS、カジノ、クイズ、映画館、釣りなど、上げればキリがないほど。できることが多いなか、私がもっとも時間を費やしたのは、マイホームの建築・装飾。そして、そこでの見知らぬプレイヤーとの交流だ。自分だけの空間を作っていると、まるで小さな夢や理想を実現しているかのような感覚を覚える。作り終えた後は、見知らぬプレイヤーを招待。すると、部屋に設置したバスケで遊んでくれたり、動画を観賞したりと、私の部屋を楽しんでくれる。その光景に大きな喜びを感じた。こうして創作欲求と承認欲求が同時に刺激され、結果的に数十時間が経過していたのだ。
前述した経験は、コミュニティの重要性を示しているように思える。冒頭にも述べたとおり、ゲームの進化とコミュニティの発展は切っても切れない。いずれ私たちプレイヤーが、仮想世界で生活する時代が到来するかもしれない。今は馬鹿馬鹿しい未来像にも思えるが、本作ではそんなことを考えさせてくれた。ちなみに本作は現時点で早期アクセスであり、これからの追加コンテンツにも期待がかかる。
by. Nobuya Sato
『ファイアーエムブレム 風花雪月』
――圧倒的物量と繊細さで描かれる人間ドラマ
開発元:INTELLIGENT SYSTEMS/KOEI TECMO GAMES CO., LTD.
販売元:任天堂
対応機種:Nintendo Switch
プレイ時間: 100時間以上
『ファイアーエムブレム 風花雪月』は、筆者が今年とにかく長くプレイしたゲームである。「本編が長い」「3つ以上のルートがある」と表現するだけでもその理由を察することができるだろうが、ただ長いというだけでは遊び続けることはできない。「膨大な数のキャラの内面を描ききっている」ことが、筆者に少なくない時間を費やさせた主な理由である。
本作には3つの学級が存在し、学級ごとに級長含めて9人の生徒が在籍している。そこに教員や関係者が入ってき、主人公を含めると「味方だけで」単純計算で40人近くのキャラが存在する。その数の内面を描ききっていると表現すれば、本稿の旨が見えてくるだろう。本作では本編や外伝など戦いを介しても内面が掘り下げられるが、支援会話においてキャラ間の関係性が描かれる。1キャラにつき13人程度の支援会話相手が用意されており、それぞれの関係性が3話以上に分かれて展開されていく。それらに加えて、学園生活におけるテキストもキャラ分存在する。それでいて、すべてのテキストがフルボイスなのだ。いずれのシーンにおいても、キャラモデルが動く演出が存在していることも付け加えたい。
世界設定も丁寧に構築されており、テキストにおけるキャラ描写にブレがなく、ユーモアとシリアスのバランスも優れている。キャラの出自はそれぞれ複雑で、画面越しの生き様に共感しえる人間たちがそこにはいるのだ。圧倒的な量のテキストと丁寧なキャラ描写。そしてそれらを押し上げる演出とボイス。それぞれのキャラの魅力や、彼らの関係性。そして彼らの苦しむ姿や幸せをつかむ姿。そうしたものを見続けたいと思ったからこそ、プレイを続けていた。『ファイアーエムブレム 風花雪月』は、長く遊びたくなるほど、特濃の人間ドラマが詰められた作品なのである。
by. Minoru Umise