Nintendo Switch 2版発売ホラーゲーム『The Midnight Walk』は「人生」のようなゲームである。プレイの中で見た、恐怖と隣合わせ「火」を介した“自分”
『The Midnight Walk』はその表題のごとく深夜に行う散歩のように、恐怖を意識しつつも、じっくりと物思いに耽るゲームである。

ホラーゲームを通じて、人生を考える。筆者にとっては初めての経験だった。『The Midnight Walk』はその表題のごとく深夜に行う散歩のように、恐怖を意識しつつも、じっくりと物思いに耽るゲームである。まもなく門出の季節を迎える今の時節にピッタリの本作を紹介したい。なお、今回紹介するゲーム内容は2026年3月26日に発売予定のNintendo Switch 2版に準拠している。
『The Midnight Walk』は開発スタジオMoonHoodが贈るアドベンチャーゲーム。プレイヤーは「焼かれ人」として「Potboy」という相棒と共に、太陽が消失した粘土細工の世界を旅していく。本作はPC(Steam)とPlayStation 5向けにも発売済み、このたび2026年3月26日にNintendo Switch2版が発売されることになった。価格は3400円。
ホラーゲームから人生を考える

本稿を読んでいるあなたは、ホラーゲームに対してどのような印象をもっているだろうか。なかには苦手な人もいるだろう。少なくとも筆者は苦手である。これまでにさまざまなホラー要素が含まれるゲームをプレイし、記事を書いてきたが、今も苦手だ。それは何故か。恐怖体験は疲れるのだ。演出に驚いたり、悲惨な映像を直視するのは精神的に疲れる。おかげさまでプレイ用のまとまった時間を確保しても休憩が増え、進行が牛歩になってしまうことが多々あった。筆者としては仕事用の締め切りがあるというのに困ったものである……。
しかし、今回は違った。『The Midnight Walk』は夢中になってクリアできたのだ。エンディングまで6時間ほどぶっ続けで夢中になった。もちろん、本作には様々な恐怖演出が用意されている。いわゆる「不気味の谷」を意識したキャラクターデザインをはじめ、ジャンプスケア、ネガティブスペース、スローバーンな展開にカットを割らないカメラ回し……。本作は恐怖が詰まったゲームである。だが、最後まで夢中になれた。その理由としては、本作には恐怖だけではない、「血の通った感覚」が詰まっていたからだ。

本作最大の特徴は、本物の粘土によって作られたキャラクターをストップモーションで動かすことで作られた映像描写である。粘土が持つ質感に由来する、重力感とも言うべき肉体の重たさが、キャラクターのモーション1つ1つに細かく備わっており、「造り物」でありながら生き生きとした躍動感を感じさせる。たとえば、プレイヤーの相棒となる「PotBoy」はまるで小さい子供のように跳ね回り、腹が減ったら夢中で石炭を食べる。健気にプレイヤーの指示に従うかと思いきや、先に行ってしまう姿はなんとも愛おしい。彼がつける炎のゆらめきは優しさと元気な激しさを両立している。プレイヤーの拠点となる動く家「ハウジー」はわっせわっせとプレイヤーについてくる。家だが、ほぼ犬である (開発者いわく、「ハウルの動く城」から着想を得たそうだ)。
一方、プレイヤーと相対する怪物たちは、造形の気持ち悪さ以上に悲壮感が勝る。興味深い背景設定はもちろんのこと、粘土細工を通じて表現される、重力のある皺の入った絶妙な表情。上手く身体が動かせていなそうな、歪んだモーションを通じて、「実際にこういう状態になった人がいるよなぁ」と共感を伴った「血の通った悲壮さ」を感じさせる。旅の道中には、目的達成に失敗したのであろう相棒キャラと同族の死体も散見され、普段のイキイキしたモーションがなくなると、こういった「燃えないゴミ」になってしまうというイメージが、粘土細工を通じて上手く表現されている。
こういった「血の通った」クレイアニメーションによって演出される主人公たちと化け物たちの対称性は、プレイヤーを世界に引き込み、物語に夢中にさせる。子供のような「PotBoy」を死なせたくない。なぜ化け物たちは化け物になってしまったのだろう。少なくとも筆者はゲームプレイに必死になり、覚える恐怖以上の興味関心をもって、作品の世界にのめり込んでしまった。

そうした没入を経て語られる物語はシニカルかつコミカル。「火」や「熱」に関する物語が展開される。古今東西、「火」は命を動かすためのエネルギーであると同時に、モノを焼き尽くす暴力ともされてきた。人間は火を発明したことで、文明を作り上げていったとも言われている。『The Midnight Walk』で展開されるのは、そうした力を持つ火=太陽が失われ、闇に満ちた世界を旅する火種の物語だ。熱を持った人間は闇に満ちた夜でも焚き火のように他者に暖かく接し、冷ややかな人間は他者に対しても加害を行いがちである。何かに熱中している人間は端から見ると「狂っている」ようにも見えると同時に、羨望や嫉妬の対象となる。人々に熱をもたらすということはどういうことなのか、というテーマが、火が持つ2面性を通じて表現される。
『The Midnight Walk』をプレイしながら考える、熱のこと
筆者としてはこのゲームの「火」を通して、最近で言う熱狂的な推し活や、暴力性を通じて繋がりを求める人たちに関して、少し考えさせられた。人は熱がなければ生きていけないが、それは自他を焼き尽くす危険性を秘めている。何か事を成し遂げるには、自分の命を燃やし尽くさなければならないのだろうか。それって本当に自分の人生において良いことなのだろうか……。
確かに本作はホラーゲームではあるのだが、プレイ内容を振り返れば、恐怖以上に自分の生き方に関して考えていた時間の方が多かったように思う。開発者としては本作について、前作の開発を通じて燃え尽き症候群になってしまったところからの復活、というイメージを込めているそうだ。

物語を彩るインタラクションはかなりシンプルで、非常に遊びやすい。相棒と共にロウソクに火を付けながら、闇に蠢く怪物たちの視界から逃れるスニーキングアクションがメインとなる。複雑な操作は必要ないため、ゲーム初心者だけではなく、Nintendo Switch 2を外に持ち運んでプレイする人にもオススメしたい。
それでいて、「目を瞑る」というユニークなアクションが備わっている。目つぶって視界を遮断することで、ワープをしたり、謎解きの際に現実を書き換えたりすることが可能だ。作品の表題どおり、夜に夢の中を彷徨うというイメージなのだろう。筆者としては、目をつぶって耳を澄ませ、音源を探り当てるというギミックも面白かった。このギミックの存在を通じて、本作はヘッドホンをつけてのプレイを推奨している。ぜひ星空が煌めく静かな夜に、あたたかくしてプレイしてみてほしい。筆者のように、どっぷりと本作の世界に浸れるはずだ。

総じて、『The Midnight Walk』はクレイアニメによる「血の通った」ホラー演出を通じて、「血の通った」自分の人生に思いを馳せることになるゲームである。まるで深夜に行う散歩のように。そんな本作は、まもなく門出の季節を迎える、今の時節にふさわしい。
『The Midnight Walk』はPC(Steam)、PlayStation 5、Nintendo Switch 2向けに発売中だ。
この記事にはアフィリエイトリンクが含まれる場合があります。


