国土交通省がなんと『マインクラフト』で「首都圏外郭放水路」を再現。実際に行ってみた
国土交通省は5月16日、治水施設「首都圏外郭放水路」を『マインクラフト』で再現したワールドの動画を公開。ワールドは配布されており、自由に見学することも可能だ。

国土交通省は5月16日、治水施設「首都圏外郭放水路」を『マインクラフト』にて再現したワールドの紹介動画をYouTubeチャンネルに投稿。このワールドデータは現在無料で公開されており、ユーザーは『マインクラフト』上で同施設を訪れ、防災について学ぶことができる。国内メディアGame*Sparkなどが報じている。
首都圏外郭放水路は、埼玉県春日部市に位置する治水施設。川の水位をコントロールすることで、周辺地域で洪水や土砂災害が発生するのを防いでいる。同施設では特に、広大な地下空間に巨大な柱が立ち並んでいる「調圧水槽」が有名。その神秘的な見た目から“防災地下神殿”などとも呼ばれている。そんな首都圏外郭放水路では現在「8つのパワーアップ計画」と題して、観光資源としての魅力をアピールする取り組みが進められており、その一環として『マインクラフト』上に首都圏外郭放水路を再現したワールドが制作されたそうだ。
本ワールドは6月から首都圏外郭放水路見学会で開催予定の「マインクラフト防災学習コース」にて活用されるほか、同施設を管理する江戸川河川事務所のホームページにてワールドデータが配布中。そこで、筆者も『マインクラフト』で実際に首都圏外郭放水路を見学しに行ってみた。

施設に到着すると、エントランスではスタッフがお出迎え。ワールド内にはNPCとして複数のスタッフや来客がおり、皆話しかけることができる。2階の展示室にいるガイドからは首都圏外郭放水路にまつわる解説を聞くことができた。同施設はこれまで100回以上使用され、約1500億円相当の被害を防いでいるのだとか。そして、施設内を自由にワープできるコンパスをもらった。こんな便利グッズもゲームならではである。

ではコンパスを使い、さっそく“防災地下神殿”と称される調圧水槽に移動しよう。巨大な柱の存在感は『マインクラフト』でも健在で、映像で見た通りの幻想的な空間となっていた。ガイドの説明によると、柱は天井を支えるだけでなく、水槽が地下水で浮いてしまわないようにするための重りとしての役割もあるのだとか。1本で500トンもの重さがあるというから驚きだ。


ところで、先ほどの展示室の奥には中央操作室があった。ここでは施設全体を監視カメラでモニタリングしながら、水門や排水ポンプの制御をおこなっているという。ボタンを押して立坑水門を開いてみると、立坑に水が流入し水位が上昇。最終的に、調圧水槽にもっとも近い第1立坑から流れ込んだ水により広大な空間が埋めつくされていった。なお現地での見学においては、水が溜まる様子を見届けられる日は限られているそうだ。施設が稼働する洪水発生時には、コースが一部変更されたり、見学会が中止されたりする場合もあるという。立坑に水が流れ込む場面をいつでも自由に観察できるのは、『マインクラフト』で再現されているからこその特色といえる。

本ワールドにはポンプ室や第3立坑など、他にも訪れることのできるスポットがまだまだある。それぞれ細かな装飾まで精巧に作りこまれているため見どころ満載だ。また個人的には、治水施設が守っている街並みまでもが作られているというところに、本ワールドを制作した方々の愛を感じた。こうした施設のおかげで、水害の脅威が低減されているのだろう。安心して暮らしを送ることができるインフラの存在に改めて感謝の念を抱いた。

今回訪れたワールドは、江戸川河川事務所のホームページから誰でも無料でダウンロードすることができる。『マインクラフト』Bedrock版(統合版)1.21.1、およびEducation版(教育版)1.21.03以降のバージョンで動作検証されているとのこと。PC/iOS/Androidではワールドデータを開くことで、それ以外の機種ではワールドを一度PCなどに導入したうえで、マルチサーバーにアップロードすることでプレイ可能だ。読者のみなさんも『マインクラフト』で首都圏外郭放水路を見学し、治水について学んでみてはいかがだろうか。
『マインクラフト』はJava版がPC向けに配信中。Bedrock版(統合版)はPC/iOS/Android/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switchなどに向けて配信中だ。
【UPDATE 2025/5/23 9:45】
本稿内冒頭の表現を一部調整