『マーベル・ライバルズ』開発者、「ドクター・ストレンジのポータル実装が超大変だった」と苦労を解説。リソースドカ食いポータルが普通になるまで

『マーベル・ライバルズ(Marvel Rivals)』について2月4日、Epic Gamesがインタビューを公開。本作開発にあたっての苦労話が開発者より明かされた。

NetEase Gamesが運営する基本プレイ無料TPS『マーベル・ライバルズ(Marvel Rivals)』でテックリードデザイナーを務めているRuan Weikang氏が、Epic Gamesのインタビューに回答。本作において登場キャラである「ドクター・ストレンジ」のポータル機能実装に特に苦戦したことなど、制作における裏話が明かされている。

『マーベル・ライバルズ』は、NetEase GamesとMARVEL Gamesが協力して制作しているチーム対戦TPSだ。本作ではマーベルのスーパーヒーローやヴィランたちが、決められたロールによって特色の異なるプレイアブルキャラクターとして登場。6対6のバトルを繰り広げる。2025年1月10日にはシーズン1が開幕し、ミスター・ファンタスティックとインビジブル・ウーマンといった新キャラが実装。シーズン後半にはヒューマン・トーチとザ・シングが実装される予定だ。

今回Epic Gamesは、Unreal Engineを用いたゲームタイトルとして『マーベル・ライバルズ』を取り上げ、同作テックリードデザイナーのRuan Weikang氏に向け、インタビューを実施。Weikang氏は、本作制作の課題として、強力で個性的なIPを多く抱える「マーベル」というブランドを取り扱うにあたって、ゲームとして成立させつつ、キャラに独自の個性をつける点に腐心したと振り返っている。

そして技術的ハードルに突き当たった代表例のひとつとして、Weikang氏はドクター・ストレンジのポータルを挙げた。ドクター・ストレンジは、コミックスや映画などでは魔術を使い、超常現象を起こすことができる。飛行やバリア展開、ワープゲートを設置してのワープなども可能であり、『マーベル・ライバルズ』でもそうした能力が再現されている。中でも「ファララーの五芒星」は、ポータルを展開してポータル間を瞬間移動できるスキルだ。

当初『マーベル・ライバルズ』にポータル機能を実装した際には、Unreal Engine 5の「シーンキャプチャ(Scene Capture)」機能を用いたという。しかし同機能ではCPUでシリアル処理がおこなわれるため、複数ポータルが開いた際に待機状態のCPUスレッドが大幅に増加して処理が冗長化し、レンダリングに影響を及ぼしてしまっていたという。さらにアクティブなポータルごとに風景全体を再レンダリングする必要が生じ、GPUのリソースも大きく消費していたとのこと。インタビューのページに記載されている開発中風景のアニメーションでも、ポータルを移動する前後で処理の時間が増加し、画面が乱れているのが見て取れる。

そうした課題を解決するため、ビューポート分割画面の修正をおこなったそうだ。具体的にはポータルによる風景のレンダリングをメインとなるパイプラインに直接統合。仕様変更に伴う調整こそ必要だったもののCPUの並列化が大きく改善され、冗長な処理が軽減されたという。またポータルを通過するアビリティなどについては、「複製」を用意してポータルを通過したように見せる対応を取ることによって、ゲーム的にも自然になり、適切なリソースの範囲内でポータル機能を実現できたという。

Image Credit: NetEase on Web

ただこのようなポータル機能を実装したゲームは『マーベル・ライバルズ』が初出ではない。2007年にリリースされた『Portal』は、ポータルガンを使うなどして、壁や床にポータルを設置し、移動することができた。向こう側の景色が見える点も、ドクター・ストレンジのスキル「ファララーの五芒星」に通じるところがある。また近年では『Splitgate』もポータルを用いたシューター作品としてよく知られている。同作では銃弾などがポータルを通じて移動することも特徴だ。

そうしたポータルが特徴の先発作品もあるものの、作品によってゲームエンジンも違えば、システムも異なる。特に本作は合計12人のプレイヤーが争うオンライン対戦シューターとなっており、さまざまなスキルも飛び交う点も特徴。ファララーの五芒星と、ほかのキャラのスキルを組み合わせた戦法も可能となっており、シューターとしてのパフォーマンスや実際のゲームプレイでの安定性を確保するために試行錯誤があったようだ。

また壁や床ではなく、空間にポータルを設置できる都合上、“快適な実装”を実現するには特に工夫が必要だった可能性もありそうだ。今回のインタビューではライティング制御やステージのオブジェクト破壊システムの実装などについても語られている。興味のある方は、インタビュー全文を読んでみるのもいいだろう。

マーベル・ライバルズ』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)およびPS5/Xbox Series X|S向けに基本プレイ無料にて配信中。

ちなみに先述の『Splitgate』は後継作となる『Splitgate 2』が、ゲームエンジンをUnreal Engine 5に変えて開発中(関連記事)。同作リリース後には、同じくUnreal Engine 5製のポータルの表現や使い心地の違いに注目してプレイするのも面白いかもしれない。

Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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